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サンライト  作者: 鬼京雅
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勝利の宴

月下学園の多目的ホールでパーティが行われている。

マキメラとの戦いでの竜史達への感謝として月下学園の生徒達が主催してくれたパーティだった。女子で埋め尽くされる空間は試合会場で慣れているが、殺伐としていない空間での生徒達の表情はどの生徒達も活き活きとしていて明るく輝いている。様々な食材が並べられるテーブルには色とりどりに飾られた肉や野菜にデザートが並ぶ。太陽が無い為に四季もないので野菜の種類も少なく、海は荒れている為に漁船が出せず魚も無いけども生徒達は女子という感性をいかして主賓を飽きさせない食事と空間を作り上げていた。色々な女子と雑談をし、竜史は皿にこんもりと盛られたサーロインステーキを食う。つかず離れず蘭子は竜史の近くに居場所を確保し、メイサは一人黙々と食事を楽しむ。

(いいな……みんなに笑顔がある。俺もこんな日が来たぜ親父。二が月前はこんな風景は考えられなかったぜ)

 ふと、竜史はパーティ会場を限りなく遠くから見ているように観察した。亡くなった父親の事を思い浮かべながら周囲を見ていると、

「うおっ!」

 黒い猫が足元を駆け抜けていき驚く。するとパン子がその猫を追って走って行く。両手にはオレオのビスケット部分のみが残っていた。

「おいパン子! オレオの白い所だけ前歯で食べるのやめろ。そりゃ邪道だぞ」

「黒いのは硬いからキライ」

 そのビスケットを投げられ竜史はキャッチし口に入れる。マキメラに食われ、成長細胞まで搾り取られたわりには少し食事をしただけでいつも通りに回復した事に驚かざるを得ない。元気が有り余るパン子を抑え、自分の皿にあるサーロインステーキを細かく切り食わせる。モグモグ食べるパン子は笑顔で竜史は安心した。

「しかし、よくマキメラの腹におさまって生きてたな。信じられんぞ」

「あの腹の中に入ると身体が小さくなるんだよ。触手みたいのが襲ってきたからウンコを投げつけて吸収されないようにしたの。あんな奴には負けないわよ」

「そんな状況でもウンコが出るか……お前は大物だな」

「草メッチャ食べたから! 竜坊のおかげだよ☆」

 その純真無垢な笑みに思わず竜史はドキリとする。動揺が伝わるわけはないが蘭子はロリコン疑惑を一瞬抱く。

「身体は問題ないようだけどちゃんとした物を食えよ。成長細胞? とかいうの取られたわけだからな」

「わかってるわよ。あ、ちくわ発見!」

 スタタッ! とパン子は走り去る。

 そして、何故か話の流れで竜史の胴上げになり全員は外に出る。空に飛ばされる竜史はサンライトを上空で爆発させ大きな花火を生み出す。空に舞い上がりたいとパン子に言われたメイサは片手で成層圏あたりまで飛ばした。それを見て唖然とする蘭子はつかまれていた服を振りほどき、

「あんた、私も飛ばそうとしたでしょ?」

「知らないわよ」

 そう言い、メイサは消える。そして蘭子の頭にパン子が落下してきた。

 わけあいあいと騒ぐ月下学園でパーティが招かれた竜史は女子生徒に囲まれハーレム状態を満喫した。これにて学園内部の闘争は集結し、竜史は月下学園の生徒との絆が出来た。蘭子は竜史に言い寄る女に一喜一憂し、パン子は拉致された疲れからか野菜を食いながら寝ている。ベランダに出て空を眺めるメイサは世界を呑み込むように丸い満月を眺めていた。




 その頃、月下ヒカルは冷や汗を流しながら最近起きたこの月下山脈における重要な変化を義父である光史朗に報告している。その報告に緊張が増し、多少声が上ずる。

「白蓮真希暴走事件で太陽竜史に感化された月下学園の生徒達はノラドッグに対して三人一組で倒しています。このままいけば、この山脈から脱走出来る人間も出てくる恐れがあります。それに対しては……」

「脱走? 脱走などしても食い扶持を減らし、金を得る為に親に売られた女など売女になるしか生きる道が無い。それを私が人道的見地で保護してやったというのに、脱走などする訳が無いのだよ」

「ですが、ノラドッグの抑止力がないとキメラを常に徘徊させるしかないです」

「脱走は出来ん。脱走してももうすぐ日本は月下の支配下に置かれるわけだからな。生きている限り月下と、私と離れる事などは出来んのだ。何をしても変わらぬ事は決勝で知る。だれが頂点に立つのかを改めて教えねばならん……その審判の日は近い」

 一礼し、ヒカルは社長室を出て行く。残る光史朗は月下山脈を一望できるガラス張りの窓ガラスの前に立ち満月を見上げた。

「もうすぐ……もうすぐでサンライトは私のものだ。太陽と月があれば私は人類の神になる」

 白い手袋を外しまるでライオンのように鋭い爪でガラスをひっかいた。

 その瞳は、獣のように縦に伸びて輝いていた。





 ガリガリガリッ……とオレオのビスケットをかじっている黒い猫がパーティ会場の床にいる。パーティ会場は明日に片付けられる予定で、照明も消されていて人は存在しない。その猫はネズミのような黒い物体を食べた。すると猫の目は赤くなり顔が憎悪に満ちる。それはとても普通の猫のものではなく数多の動物を掛け合わせた悪魔のようでもあった。

「グウウッ……コレガ、キメラノシンズイ。ヒビキサンモトリコンデヤルワ……」

 人間の言葉を発し、蠢く猫はオレオの黒いビスケットをひたすら食べる。

 その小さな身体は少しずつ大きくなっていった。





 数日後の夕刻――。

 月光学園の生徒達が行ったノラドッグ狩で夜間も当たり前のように光を使っている。光の使用で魔を吸い寄せるという噂を駆逐した為にもう夜も当たり前のように出歩いていた。

「もうノラドッグもいないし、いても私達を恐れて近寄ってもこない。今まで夜に外に出なくて損したわ」

「そうよね。一日中、暗いんだから昼も明かりを使うんだから光を使えればもっと時間を使える。この時間を利用してこの山脈から出る通路を探しておきましょう」

「えぇ……早く強くなってここから出て、月下に囚われない生活を……?」

 ドスン! という振動がし、二人は立ち止まる。周囲の森から一気に雀やカラスが飛び立ち、静まり返る。動揺する二人は自分達の持つライトが付近を照らしておらず、ライトの電池が切れかかっている事に気が付く。

(電池切れ? でも、手に当てると普通に明るいわね。何かが光を遮って――)

 ライトの電池切れでない事を確認した少女は、自分が何か大きな影の下にいる事に気が付いた。ふと、横をみると連れの仲間はおらず視線を上に上げる。

「――!」

 目の前の巨大なドラゴンに声も出ない少女は歪な手につままれ捕食される仲間の絶叫を聞いた。そして、その少女は必死に逃げるがなす術なく捕まりむしゃり、むしゃりと喰われた。

「……サアアアアッ!」

 闇に吠えるヘルズドラゴンは新たな月下山脈の番人として夜の闇を蹂躙していった。




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