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サンライト  作者: 鬼京雅
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マキメラとの戦い

「眼福、眼福だぜ」

 竜史は壮観なる光景を見ていた。大浴場の湯船の真下から現れた時は生徒達の入浴時間で裸の女生徒達が突然湯船から現れた人間を驚いた顔で見ている。全員は胸と股間を隠して半身でいるが、父親に女は尻だと叩き込まれて育った竜史にとっては大量の尻を真近で見れて大興奮している。

「……いい尻の群れだ。これで俺を大会で罵倒した事は全員チャラにしてやる。力が溢れていくぜ」

(思春期の男がおっぱいよりお尻なんて、完全に初期教育の失敗ね)

 おっぱいを見て興奮しない竜史ならいいかと見せるメイサに対抗し蘭子も見せる。そして体力が回復していく竜史の目に魔獣が写る。そして穴の空いた湯船からマキメラが現れた。顔は人間の顔立ちだが、両手がカマキリのように変化している真希に生徒達は困惑し、大浴場から逃げ出す。その混乱に竜史はメイサと蘭子に近づき耳打ちをする。

(……花火を使うのね。キメラと融合してる私の耳はロバの耳なのよ)

 その耳打ちが聞こえていたマキメラは笑いながら大浴場から消え去る裸の女子の群れとメイサ、蘭子を見た。そして、刀を構えるオレンジ色の髪の少年を見据える。

「炎はお湯と相性が悪いのは知ってるはず。貴方の墓場としてはどうなのかしら?」

「あれだけの生尻を見た俺の底力を舐めるなよ。地下の研究所を潰すのが目的だから墓場もクソもない。お前は打ち上げ花火のように消し去ってやる」

「やってみなさい。逃げるの?」

「鬼ごっこさ。お前が鬼な」

「いいわよ。のってあげる」

「あんがとよ!」

 投げつけられた石鹸の塊を握り潰し追いかける。学園内部の構造は詳しくない為、学園裏の花火倉庫がある場所へたどり着くようなルートを考え走る。この学園内部はマキメラの方が詳しい。この距離を保ったまま、学園裏の花火倉庫に向かう。

(流石に早いな。何だ? このウンコの匂い……)

 ふと、背後を振り向くと猛然とマキメラが迫って来ている。すると、窓ガラスの先に太陽花火屋が倉庫にしていた倉庫を見つける。

(見つけた! 目の前の窓ガラスを開けて……いや、開けてる暇は無いか――!)

 瞬間、一つのシャボン玉が右頬で弾けた。それは竜史の周囲を包み込んでいて逃げ場を消していた。

「うわあああっ!」

 そのシャボン玉に弾き飛ばされ窓ガラスを突き破り倉庫まで転がった。窓の外でサンライトのオレンジの光が発光するのを見てマキメラは獲物はもう動けないと察知した。全身にガラスの破片が刺さり、血塗れの竜史はゆっくりと近づいてくる人間とキメラの化物も見据える。その赤い瞳にはまともな感情など宿っておらず、人間の欲望が具現化された魔物でしかない。

(……)

 じりっ、じりっ……と地面の這うようにゆっくりと尻を擦らせ下がる。追い詰められた蛙を蛇が恫喝するような目つきで言う。

「父親との思い出がつもる花火倉庫で死なせてあげるわ」

「……残念だったな。俺にはもう仲間がいるんだぜ」

 大浴場で残る花火の在庫の場所を話していた竜史の作戦を遂行したメイサと蘭子は校内にいる生徒達と協力して、倉庫の花火を回収して反撃の狼煙を上げる体制を整えていた。グルリ……とマキメラと竜史を囲む生徒達全員は花火玉を手に持っている。

「……やってくれるわね。あれが貴方の切り札」

「太陽花火屋最後の大仕事。盛大な花火を咲かせてやるぜ」

「貴様っーーー!」

 ニッと笑った竜史は後ろを向いたまま頭を抱えダイビングジャンプをする。竜史を巻き添えにしようと駆け出すマキメラの足は制服のジャケットを踏んだ途端、仕込まれていた落とし穴に落ちる。同時に百以上の花火玉がマキメラに迫る。

「うへぇ!?」

「そこに落とし穴があるのは知ってたわよ! 長い腕は役に立つわ」

 ダイビングジャンプしたはずの竜史が落とし穴にいた。そしてマキメラは長い腕を伸ばし竜史と入れ替わるように頭を抱え地面に伏せている。

「――! 竜史!」

 蘭子の叫びも虚しく、火が点火された花火玉は竜史に降り注ぐ。大爆発が起こる為、その場の全員は背を向けて頭を抱えしゃがむ。

「あうっ!」

 ケツの穴を蹴られた蘭子はさも当たり前のように立ち尽くしているメイサを見た。

「ちょ! あんた、早く伏せて!」

「何で伏せるの? 爆発なんてしないわよ。次が本番なのよ太陽花火屋最後の大打ち上げを見逃さないようにね」

「……?」

 地面に落ちている花火玉は一つも爆発せず、付けた火はすでに鎮火している。その花火玉は全て不発弾だった。唖然とする蘭子や月下の生徒以上に顔を歪めるマキメラは――。

「ど、どういう事? そこに落とし穴があるのは知ってた……だから貴方を手を伸ばし落としたのに」

「この花火作戦は見破られていて良かったんだ。お前の地獄耳は地下ですでに知ってたからな」

 爆発に巻き込まれて死ねとマキメラは変わり身にするが全ては不発弾だった。そして、太陽花火屋の一人息子は最後の仕掛けに動いた。

「学園内部の倉庫に何個も花火を置けるわけねーだろ? 人間の感覚を無くすからこーなんだよ」

「あ、あんたは……うぐっ!?」

「キメラになって口がデカくなったか? この一個だけは俺が親父に内緒で作った特別性。ってもう食べちまったか。どうだ? 美味いだろ?」

「ぐおおおっ! 太陽竜史ーー!」

「みんな! 協力してくれ! こいつを胴上げしてやろうぜ! この勢いでパン子も腹の中から出させる!」

『おーっ!』

 その場の全員に胴上げをされるマキメラは校舎の空に飛んだ。すると、花火玉を吐き出そうともがく間にパン子も吐き出されるが、間違えられてパン子も上空に飛ぶ。そしてメイサはどさくさに紛れ蘭子も飛ばそうとするが阻まれシカトする。その光景を真下から見上げる竜史は鼻を親指でかき言う。

「全生徒を恐怖に陥れた罪と罰を受けろ。人の心を忘れた獣め」

 ドカーーーン! と特性花火が上がり、太陽の形の火花が散る。

 それを、月下ビルにいるヒカルは見ていた。

「あの花火……真希の奴……」

 すると、背後に光史朗が現れ言う。

「どうやら真希は失敗したようだな。好奇心の強さが彼女を殺したか」

「ですね。所詮は二番煎じしか出来ない女。自明の理です」

「人間がキメラの強欲な細胞を保つのは無理だろう。二兎追う者は一兎得ず」

 消えゆく花火の光を赤い瞳で光史朗は見つめて言う。

「人間とキメラを保つならば神になるしかない。神になるしかな」

「あの女は私のコピーばかりして不快だったからどこでもいいですね。どうせ白蓮建設も月下の軍門に堕ちた。私達の太陽計画は完璧に進行しています」

「頼もしい娘をもって私は嬉しいぞヒカル」

 そう言い光史朗の手はヒカルの肩に触れた。しかし、その手は決して肌には触れない。

 唇を噛み締めながらヒカルは闇の男にゆっくりと微笑んだ。




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