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サンライト  作者: 鬼京雅
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マキメラ

「た、助かった……にしても蘭子の機械の知識はスゲーな」

「ギリギリだったわね。ここまで来たかいがあったわよ」

 冷や汗を流しながら竜史は呟く。

 左右の壁がキメラの操作によって動かされ通路を閉ざそうとしていた瞬間、蘭子はキメラの触ったパネルを見ていた。コンピューターに対する知識がある蘭子は更にシステムを書き換えてやればどうにかなると判断し、行動した。ギリギリで二人分のスペースが出来るよう壁のブロックをプログラムし、今は初めのように一本の道に戻っている。

「システムを書き換えたの。これからはパソコンの時代らしくて学園の授業でやってて得意だったのよ」

「システムを書き換えるか……やるな蘭子。スゲーよ」

「褒めて、褒めて。何も出ないけど」

「出ないんかい! 褒めてればお尻を触らせてくれると思ったのに……」

 顔を赤らめながらモジモジとする蘭子は、

「ちょ、ちょっとだけならいいわよ」

 ドキマギする二人は互いの距離を縮める。竜史の震える手がゆっくりと蘭子とプリッとしたお尻にてが伸びる。ひや~という顔をする蘭子は目を閉じお尻に意識を集中する。竜史は天に召されたような幸福な顔をしながら瞳を閉じて蘭子の尻を堪能した。

(いい感触だ。なんてたまらない……生で触りたい――)

 欲望が抑え切れず生で触りたいと懇願しようとした瞬間、目の前には黒いメイド服の女がいた。その女の尻を揉んでいた竜史は全ての思考と動作が停止し、死を直感する。何と目の前にはメイサがいた。

「何をしてるの? パン子を助けるんでしょう?」

「あ、あぁ……そうだ。そうだよソースだよ……なんちて……」

「……」

 ゴゴゴゴ……! と沸きあがる火山のようなオーラが展開し、その悪鬼のような瞳に竜史はビビリ走り出す。

(この女、なんてタイミングで現れるの? 私の変わりに揉まれるなんて最悪だわ! 私で良かったのに。有難迷惑よ!)

 そんなこんなでギクシャクする三人は進んで行く。先へ進むと、左右への分かれ道がある。無くした見取り図からすればこの辺が最深部に近いだろう。時間もパン子がさらわれてから三時間以上経過している為、無駄な時間はかけられない。

「私が左に一人で行く。二人は右へ行きなさい」

「待て!」

「待たない。私はコンピューターの知識もあるから機械攻撃も対処出来る。未来も見据えて、二人の仲を深めておきなさい」

「おっ、おいメイサ!」

 高速でメイサは左側の通路を駆けて行く。

 そして、竜史と蘭子は最深部の研究室にたどり着いた。




 最深部についた竜史と蘭子は目の前の光景に愕然としていた。パン子は全裸のままゴポゴポッ……と多少の泡が立つグリーンの溶液に浸されたカプセルにキメラのように収容されていた。そのカプセル前まで駆け出し、ガンガンッ! とカプセルを叩き言う。

「パン子……生きてるのか?」

 そのカプセルにはパン子が収容されていた。瞳を閉じ、生きてるかどうかは反応がないからわからない。刀を抜いた竜史はサンライトを全開にし、構えた。

「蘭子、どいてろ。このカプセルをぶっ壊す!」

「え? ちょ! ちょ! ちょ!」

「――うおおおっ!」

 サンライトスラッシュ二発で何とか強化ガラスを破壊し、パン子を助け出す。グリーンの溶液はただの栄養剤のようで特に肌に影響は無かった。溶液の洪水になるカプセルから離れた場所に移動し、びしょ濡れになり微かにしか息をしていないパン子の顔をハンカチで拭いてやり、

「おい、蘭子。裸のままじゃ可哀想だ。パンツ貸してやれ。俺のじゃデカ過ぎるだろ」

「パンツはあんたの腕に……」

「腕?」

「いや、今日はノーパンなのよ。ノーパン! ノーパン! ノーパンパーン!」

「お前、大胆な女だな」

 その瞬間、壊れたカプセルの残骸に金髪の女がいた。それは月下学園のイエロージャケットの制服を着た月の加護を受けるルナティックの能力者――。

「……ヒカル――いや、違うな。お前は白蓮真希。キメラの白蓮真希だ」

「そうよ。見ればわかるじゃない。ヒカルさんの方が美しいでしょう?」

「何故、パン子を狙った? こんな小さい子を狙うなんて卑怯だぞ」

「キメラ細胞が身体になじむにつれて、若い成長細胞が必要なのがわかったの。ちょうど大会の審判をしているパン子ならいい成長細胞があると思った。別に審判なんていくらでも代わりがいるからいいでしょう?」

 アハハッ! と笑う真希は二人を恫喝するように話す。震える蘭子はジャケットをパン子に着せてやり、後ずさり小声でつぶやく。

「真希がキメラに……マキメラ?」

「マキメラ? いいわね、それ。私は人間とキメラの長所を使いこなせるマキメラ。人類を超える神の存在」

 やけに耳がいいなと思った竜史はガラスの細い棒を見た。グリーンの溶液が入る一本の試験管を取り出したマキメラは言う。

「……?」

「これでパン子の成長細胞はもらった。これが私の身体に馴染めば、更に多くの生物の細胞を取り込める。……んっ、ご馳走さま」

 性的快感を得たような顔をしたマキメラは赤い瞳を嗤わせる。すると床に爪を立て微かな火花を生み出し足元を燃やす。その炎は室内全体に広がっていき出入口の扉を覆う。二人は退路を断たれ息を飲む。赤く発光する身体の火照りに興奮するようにマキメラは猛然と迫る。

『!』

 ガガガガガッ! と竜史は見るも無残に殴り飛ばされ、蹴り飛ばされる。反撃の手だては後一撃のサンライトスラッシュにあるが、マキメラのスピードに体力が追いつかない。

「体力が減った貴方達で勝てるかしらぁ? この地下では誰も応援に来ないわ。いや、貴方には仲間なんていなかったわね……大会会場を月下の生徒達に建設させている時に相当刷り込んでおいたからね。太陽竜史のサンライトは貴女達を苦しめる死の光だって……」

 その言葉に竜史は口元を抑え立ち上がろうとするが肋骨が折れている為に動けない。ニイッ……と口裂け女のように口元を開かせるマキメラは蘭子に迫る。

「私達を仕組んだのはあんただったの……あんたにこき使われて妹は……私は竜史を殺そうとした……」

「そう、そして貴女は私のエサとして永遠になるの」

「うわあああっ!」

 あんぐりと大きく口を開けたマキメラは蘭子を吸い込むように体内に取り込もうとする。その勢いに呑まれる蘭子は竜史を見る。

「蘭子ーーっ!」

 肋骨が折れている激痛など気にせずに駆けた。だがすでにこの距離では間に合わない。ズボッ! と蘭子は一気に呑まれた。

「メイサ?」

 そのマキメラの真下にいるメイサは全力の拳を腹部に叩き込んでいた。

「ぐううっ……うげええつっ!」

 胃酸にまみれた蘭子がマキメラの体内から吐き出され、ケツの穴に蹴りを入れられる。ハッ! と蘭子は目を覚まし目の前のメイド服の女を見た。

「いつか、貴女は竜史にとって必要な存在になる。死ぬんじゃないわよ」

「死んでないわよ。いつか必要って今必要でしょ!」

「今必要なのは私よ」

 ムッ! とした蘭子はメイサを睨み返す。安堵した竜史は刀を構え直し間合いを詰める。

「……やってくれるわねぇ月下の不良品如きが。女の腹をこんな力で殴れるのは女じゃない貴女だけよ」

「黙れキメラが。貴女は竜史の炎で焼かれ死ぬ」

「え? メイサ戦わないの?」

「キメラ細胞を投与されたスーパーノラドッグが何匹いたと思ってるの? こっちももうガス切れよ」

「わーったよ。じゃあ、何か作戦考えてくれ。周りは炎で埋め尽くされてるし、俺もサンライトスラッシュは後一発しか打てないんでな!」

「二人共! マキメラが炎の中に消えたわよ!」

『――!』

 その蘭子の言葉で二人はマキメラが消えた事に気がつく。炎の中で蠢く悪魔は大きく口を開けて何かを飲み込んでいた。その場の全員は顔を合わせる。

 ――パン子がいない。

 ズズズッ……と炎の中から出てきたマキメラは満面の笑みで戦慄する一同に言う。

「まだ大人にならない幼女のエキスはキメラの成長を更に促進されるのがわかったわ。生かしてはおこうと思ったけど、成長細胞がないなら死んでるのと同じよね。エサとしていただいてやったわ」

「お前はもう許さないぞ……絶対に」

 ブフォ! と竜史のオレンジのサンライトの炎が一瞬黒く染まる。その瞳は闇にそまりかけるが、メイサの声で我を取り戻す。ガッ! と竜史とマキメラが激突する。

「このままだとこの施設だけじゃなく、この真上の学園ごと消えるぞ」

「この学園を燃やしつくせば全て貴方のサンライトのせいになるのよ太陽竜史。素晴らしい……」

 舌を上下の唇に這わせ言う。すでに全員に余力は無い。パン子を助ける為に力を使い過ぎたのである。それでも攻めなければ死ぬ為、竜史は動く。それは竜史の本質にある闘争本能がそうさせた。ピンチになればなるほど、血が沸騰するような激情を感じれば感じるほど竜史は力が増す。しかし、その光景を蘭子は悲しげな表情で見つめていた。

(どんどん……どんどん戦いに引きずられて行く感じがする。楽しんでいる感じがする。前は仕方なく戦っていたのに、今は楽しんでる。竜史をこうさせたのは竜史にこの件を依頼した私の責任……)

「確かこの上は大浴場だったわね?」

 天井を見上げるメイサに嵐子は答える。

「おそらくそうね。でも、この戦いが終わらなきゃ風呂なんてはいれないわよ」

「今入りましょう。みんなで」

 驚く蘭子をよそ目に、竜史は炎に包まれる空間で転がる。段々酸素は薄くなり、この炎がやがて学園まで上昇していく事を恐れた――刹那。

『ああああっ!』

 メイサと蘭子の合体攻撃が天井を貫いた。その爆発を見てマキメラは言う。

「穴を開けて逃げ道を? そんな穴はただ上に炎が早く登るだけのものよ」

 その合体攻撃を天井にかました二人はマキメラなど一切気にせず叫ぶ。

『竜史!』

「まさかお前達とアイコンタクトが出来るとはな――かますぜ!」

 最後の一発のサンライトスラッシュがその穴を伝い更に上の階層の天井を破壊した。ガガガガガッ! という落盤と共に大浴場のお湯を供給するパイプが破壊され熱いお湯がその場の全員にかぶる。真っ白な湯気が視界を殺し、マキメラはもがきながら左目で竜史を捉えた。

「お先に失礼」

「貴様っ!」

 穴の空いた天井から逃げる竜史をマキメラは追跡した。激しく流れるお湯は地下研究所をお湯で水没させる。激怒するマキメラはびしょ濡れになる全身に不快感を感じながら叫んだ。

「私は全てを超えるのよ! 全てをね!」




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