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サンライト  作者: 鬼京雅
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キメラの少女

 隠し通路に入り階段を下ると一本の通路に出た。竜史と蘭子は人気の無い空間を進んで行く。

「地下に来てから匂いが消えたな、、空気清浄機を使ってるみたいだ」

「匂いを辿れないか。なら地道にいくしかないわね」

「にしても、この月下山脈の地下はどうなってんだ? キメラ製造のラボラトリーはあるし、ここは麻薬の製造工場。月下山脈の全ての地下を調べたらえらい事になりそうだぜ……?」

 ふと、竜史は微かに開く扉の中から人間の気配を感じた。ゆっくりと近づいていき一気に扉を開き、武器を構え内部に侵入する。すると、数人の生徒が倒れていた。皆一様に目は白目を向き、口からはヨダレが垂れて痙攣している。

「これは薬ね。この机の上にある粉やカプセルはおそらく麻薬。合成麻薬の研究所らしわね」

「虚無ラボラトリーと関連はありそうだな。ここの見取り図がある。最深部に大きな施設がある。おそらく奴はそこだろ……」

 ここは隔離された日本の箱庭。故に人体実験、麻薬の栽培、製造。臓器売買の全てが許される場所でもある。この月下の箱庭がそういう場所というのを改めて認識した二人は気持ちが沈む。現場ではどうにもならない為に生徒達を置いて二人は通路に戻り駆けた。曲がり角を曲がろうとする二人の頭上から女豹キメラが奇襲をかけて来た。蘭子をかばい腕を噛まれた竜史は蹴りをかまそうとするが回避される。

「大丈夫竜史?」

「あぁ、問題ない。空気の流れが途絶える曲がり角に潜むなんて賢いじゃないか」

「私はキメラでもただのキメラじゃない。キメラの能力を持つ人間よ」

『――!』

 ズズズ……と女豹の顔が変化していき白蓮真希の顔が現れた。だが、真希はキメラの力が安定せずに顔が元に戻る。唖然とする二人は人間の道を踏み外した少女に恐怖した。

「その力……お前は自分で望んでそうなったのか?」

「そうよ。他者になりたければ、他者を取り込めばいい。それを虚無家は代々キメラとして成功例を出し、それはカッパライダーのように人間にまで移植された。だけど、カッパライダーも人間だけは取り込めなかった……私はキメラの長所を生かして人間を取り込み強くなる。月下ヒカルを私の中で永遠にするのも近いわ」

「心もすでに人間じゃないようだな。お前はこの地下から出すわけにはいかない」

「すでにもう人間は幾人も取り込んでいる。後はあの子供の成長遺伝子を解析すれば全て終わり。この研究所も不要になる」

「ここは虚無ラボラトリーとも関連があるのか? 施設の作りが似てる」

「虚無ラボラトリーとも、他の施設とも一応は繋がってるけどその壁は常時閉ざされ不可侵にある。緊急の場合のみに、管理者権限で解放されるから貴方達には関係ないわよ。バイバイ」

ピピピッと真希が壁のスイッチを押すと、コゴゴゴッ! と壁が動いた。それは段々と狭まり始める。

「壁が動く? 潰される! 蘭子、走るぞ!」

「え、えぇ……ってあんたなに寝てんの?」

「か、身体が……動かない」

「!?」

 それは真希の歯に仕込まれた神経毒だった。毒が全身に行き渡る竜史は身動きが取れない。メイサはまだスーパーノラドッグと交戦していて駆けつけられない。絶望が二人の頭をよぎり――弾けた。

「くっ――のおおおおおっ! !?」

 サンライトを手のひらに集めた竜史は壁に触れる手を爆発させた。爆風が通路を駆け抜ける。

「この壁は特殊な壁なの。サンライトスラッシュでもそう簡単には破壊できないわよ。そんな時間もないけど。あのオチビさんはもうすぐ全ての成長細胞を摘出出来る。月下さえ支配下に置ける進化した私を見せられなくて残念だわぁ。にしても役に立たない女を連れてきたわね」

 言うと同時に真希も自分も壁に押しつぶされてしまう為、一直線に通路を走り逃げながら振り返る。竜史を抱きしめながら涙する蘭子は、

(私は役に立たない……私が学園の話なんてしなければ――私にもっと力があれば――)

 そして、通路は完全に塞がれた。





「ん? 微細な振動……これは隣のドラッグファクトリーからね」

 振動を感じ、虚無はモニター上にあるシグナルを確認するがこのラボラトリーに侵入者はいなさそうだった。それに口元を笑わせ、

「侵入者はお隣のようね。なら無視ね」

 そして、立ち上がりヘルズドラゴンのいるカプセルの前に立つ。すでに平穏を取り戻し、前より更に強化されたヘルズドラゴンは瞳を閉じ静かにその闇の胎動を溜め込んでいた。その愛おしい実験材料のキメラに話しかける。

「貴方の娘は復讐にとりつかれてるわよ……フフフ」

 虚無は月下との不可侵協定を守り、隣で起こる出来事については無視する。ただひたすらに知的好奇心を優先するこの男は科学者の家系である虚無家の一族でも最高の逸材であり、日本を支配していく月下の屋台骨を支える存在でもあった。



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