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サンライト  作者: 鬼京雅
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進入

「いないか。一体どこへ行った?」

 突如、消えたパン子を捜索するが見当たらない。竜史と蘭子は三十分近くかけて集めた情報を互いに話し合う。学園内では誰も見かけた証言が無く、もしかすると単純に外に出ただけなのかもしれないが、蘭子の情報がそれを否定した。

「パソコン通信の学内掲示板の書き込みを見た限りじゃ、やっぱパン子はさらわれたようよ。飼育小屋にちくわがプリントされたパンツが落ちてたわ」

「とっさに脱いで自分の身に何かあったか知らせたか。さっき一人にしちまったのも、強く来るなと叫んだのも俺だ。俺のせいだ……」

 苦い表情をし、うつむく。すると蘭子がパン子の家系の話をし始めた。パン子の真一族はロストサンライト以前では大富豪だったという。しかしロストサンライト以降は地球環境の変化に利権がらみで停滞する真一族の組織は崩壊し、いち早く新世界に対応した月下グループの創始者・月下元史朗が真一族を支配した。そして、この百年は細々と月下の参加の一会社として存続を許されている状態にある。

「大富豪の大不幸……か」

 その話を聞いて竜史は何故あんな小等部の少女が血生臭い武道大会の審判をしていたかがわかった。二人はもう一度聞き込みをして探すしかないという結論を出し、動こうとする――刹那。

「何をチンタラやってるのかしら? このままじゃ日が暮れても見つからないし殺されてしまうわよ」

 颯爽とメイサが現れメイド服のスカートを揺らす。唖然とする竜史は今までのいきさつを全て話しどうすればいいかを聞く。

「まだここに死体が無い以上、死んだと決まったわけじゃない。探すわよ」

「闇雲に探してもさっきと同じって言ったのはお前だろ? どうすればいいんだ?」

「貴方の特技は何? それを生かしなさい」

「俺の特技? ――!」

 ハッ! と閃いた竜史は鼻を大きく膨らませる。そして、三人は図書館に辿り着いた。

「パン子のパンツはやや酸味があるイチゴのような匂いだからたどりやすい。これが無臭の蘭子だったらえらいことになってたぜ」

「ちょ! 誰が無臭ですって!」

「無臭ならいいじゃない。ここに隠し通路があるはず。手分けして探すわよ」

「いや、探す手間もないさ。キメラの匂いは鼻につく」

 鼻を動かす竜史は奥へ進んで行く。そして、一番奥の辞書の棚の前で止まり本棚の間の隙間を見た。

「ここに獣の爪の跡がある。おそらくあの女豹キメラのつけた跡だろ。そしてここにスイッチがあるはず」

 ゴソゴソと手をまさぐると、カチッという音がした。すると、ゴゴゴゴ……と本棚が沈んで行き地下道が現れた。

「ここか……」

 図書館の本棚をズラすと地下に通じている。同時に、ノラドッグの群れが百を超えて現れる。目は血走りいつも以上に調教されていて、一匹のパワーが異常に増している。これはもう動物としての本能すら消されてるマシーンであった。スーパーノラドッグともいえるだろう。

「これは朧の眼力じゃない? こいつらを相手にするにはこの二人ぎゃキツイわね」

 すると、どこからかサーベルを出したメイサが二人の前に立ち、

「ここは私が持ちこたえる。先に行きなさい。必ずパン子を助けるのよ」

「たりめーだ! パン子は俺の仲間……妹みたいな存在だ。絶対に助ける! 早く来いよメイサ!」

 瞳でよろしくと言った蘭子も隠し通路に入る。メイサを残し、竜史と蘭子は行く。





 月下武道大会三回戦会場。

 会場の控室でヒカルはチュッパチャップスを口にくわえながらファイルを眺めている。キメラ細胞を投与され強化されたカッパライダーを一回戦で倒した仮面騎士について調べていたが、どの調査報告書にも素性は描かれておらず苛立ちながら口を動かすスピードが早くなる。

「一体、この仮面騎士は誰なんだ? 諜報部に調べさせてもわかんとは」

 資料を見ながらヒカルはつぶやく。同時に開始五分前の鐘が鳴りファイルを閉じる。

(……時間か。ゲスト達の賭け金も案外硬く賭けてるからもっと大会の利益もイベントを開催して上げないとならないな。軽く盛り上げてやるか)

 そして、武舞台に上がるヒカルは二尺一寸の愛刀・白夜を引き抜き目の前の対戦相手の力上豚子を見る。外見はボーイッシュなショートカットで男勝りの風貌。一部の女子を虜にする月下学園の喧嘩番長であった。その噂を聞いた事があるヒカルはフッと軽く笑い、

「ここまで来て相手の力量を測れない事はあるまい? それでも来るか喧嘩番長」

「……相手が強かろうが私達は戦わないとならない。月下学園での安定を手に入れる為に」

「安定……か。そうか。なら、一つ私から提案しよう」

 そう言うと、会場全体を見回し審判にマイクを請求する。一度コケながらもパン子はマイクを渡す。

「この月下武道大会も二回戦を迎え、参加者のレベルはまだ絞られておらず安定した組み合わせが行われていない。それに伴い私、月下ヒカルから提案がある。この試合を私一人対希望参加者の全てと同時に戦う敗者復活戦にしたい」

『――!?』

 驚く会場は動揺が広がり、ガッツポーズを取る者もいる。そのままヒカルは志望者を十万円の参加費を条件に出場を許す事にした。会場の生徒達は続々と武舞台に集まり始める。

(これで一千万の利益が出た。ゲストの連中も私の敗北に賭ける奴が増えただろう。搾り取るぞ俗物共よ)

 そして、二回戦はゲストも観客も盛り上がる百対一の戦いとなった。この戦いの本質に気づかない観客達は多いに盛り上がりヒカルは気を引き締めた。先に控える仮面騎士戦へ向けて気分も力も増しておかなければならない。審判の試合開始の合図により無謀な条件となる試合は開催された。

『おおおおおっ!』

 統率など何もない無頼のような連中となる大会の予選を含めた敗者達は一気にヒカルに襲いかかる。一瞬で三人を倒し、左手の怯んだ少女を見据え――。

「朧――!? くっ!」

 流石に一人、一人に対して朧の幻影を脳に叩き込むのは厳しく防戦気味になる。

 ゲスト席の人間達と数が減った観客達もヒカルの苦戦具合に興奮する。流石に百人相手をするには厳しく、十人倒す間にも朧の眼力を使えていない。その光景をゲスト達と同じ場所で眺める光史朗は自分の娘に不甲斐なさも、苛立ちも感じてはいなかった。根本的に道具としてしか人間の価値を見れないこの男にはそんな感情は始めからないのである。

(ルナティック……消滅と幻影の月の力。朧の幻影は使っても消滅の方は使わないな。使いたくないのか、使えないのか……)

「? 娘さんの試合を観戦されないのですか月下さん?」

「かわいい子は谷底に落とすといのが私の教育法でしてね」

 ゲストの一人にそう言い会場を出る。その間、何度が身体を切られながらも朧が成功し数人の奴隷を従えて戦う。ふと、VIPとゲストルームがある会場上部を見るが光史朗はすでにいない。

(……お父様がいない。竜史の時は最後までいて、何で私の時だけいつも……血は繋がっていなくても私は月下の娘!)

 瞳の色が変わるヒカルは憎悪が増した眼力で朧を更に三人にかけ、同士討ちをさせる。自身はその絆無き大将となり奮戦する。その慟哭が増せば増すほど力は増していき、敵を粉砕する。やがて敵の群れは竜史、メイサ、蘭子という三人に見えてくる――瞬間。

「我が剣は真夜の月光! 覇翔月覇はしょうげつは!」

 満月が煌き、ヒカルの白夜がイエローに輝き朧の眼力により一つに集められた敵は我に返り戦慄する。

『うわあああっ!』

 放たれた覇翔月破でその百人は全て場外に吹き飛んだ。ルナティックを解いたヒカルは白夜を鞘に納め大きく息をつく。

(これで各企業の資金や生徒達の所持金も減った……これで奴等は月下に頼らざるを得なくなる。お父様、私は貴方に貢献していますよ)

 グッ……と手を握りしめる。その脳裏には、未だ試合後に笑い合う竜史達の姿が浮かび上がり苛立ちが増す。そして、ヒカルは一人会場を恐れられながら後にする。




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