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サンライト  作者: 鬼京雅
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四回戦の決着

 そして白蓮三騎衆はこの試合を終わらせる為の切り札を出す。

「この男はサンライトをいつ使うかはわからない。アレを使って一気にかかるわよ」

『了解』

 三人はズボンの股間部分に手を突っ込み、一つの金の玉を取り出す。

「き……金玉? お、俺のじゃないよな?」

 焦る竜史は自分の股間をさわるが二つある玉を確認し安心する。

『月の金玉!』

 嫌な空気がじわぁ……と流れていき白い蒸気が発生し三人の身体に変化が現れ出す。

 少女達の髪は金色に染まり、皮膚は浅黒く変化しイエローのオーラが弾ける。

 どこかで感じた事があるような黄色い閃光に会場は驚きに包まれる。

 それを見据える竜史の頭は一つの答えを生み出した。

 ドーピング――と。

 同時に、ビシビシと自分を打ちつけるオーラの正体を肌で感じた。

「……そのオーラはルナティックのオーラ。ドーピングをしてまで使う力なのか? どうなんだ白蓮のジジイ!」

 激昂する竜史の叫びはゲストルームにいる白蓮を笑わせるだけであった。白蓮にとっては自分の最強の駒である三騎衆とてただの捨て駒でしかなく、とにもかくにも太陽竜史を始末できればいいとしか考えていなかった。

(……ドーピングの完成か)

 月の金玉の力が三騎衆の身体に馴染み月下ヒカルと同じようなルナティックが展開する。

「廃人になるぞ。ルナティックの力が普通の人間に馴染むとでも思うのか?」

『すでに我々の身体は死んでいる』

「のおおおおおおっ!」

 シュパッ! とサンライトスラッシュが炸裂するがアイの肩口で刃が止まる。ニッと笑いアイは言う。

「サンライトスラッシュはすでにこの身体に記憶してある。この月の金玉が効いている以上、もう通じない。新しいサンライトの技は無いだろう?」

「くそっ!」

 身体能力も異常に向上した三人は一気に竜史をいたぶる。竜史の持つ父親の遺品である日本晴は折れて場外に転がる。同時にその褐色になる肌が裂けるように切れて血が噴出した。金髪だった髪は白くなり、一瞬顔に白髪が増える。

「やっぱ、副作用がきてんな。もう解除しろ。死ぬぞ?」

『風王・雷神・覇軍轟天陣!』

 その言葉を無視するようにミキは竜巻を生み出し武舞台を隔離し、ネネはそれを更に稲妻でコーティングし結界を生み出した。その風でパン子はどこかに飛ばされ、それを場外で見守る蘭子は地面を掘って穴に隠れるがメイサだけは腕を組んだまま自慢のツインテールをマフラーのように顔に巻きつけながら静観する。

「虚無隼人からもらいしこの切り札。お前が死ぬまでは解除などできるわけがないだろう……本当は月下ヒカルを始末する為に使うものだったがお前で試してからヒカルを始末させてもらうよ! サンライトの小僧っ!」

「俺は太陽竜史だ!」

 叫ぶ竜史を嘲笑うように三人は上空に飛んで結界と同化する。

『これが最後の審判だ太陽竜史!』

「さっ、最後の審判? クビ!? ひえ~!」

 と、場外で転がるパン子が勘違いする中、竜史に白蓮三騎衆の合体技が繰り出される。

『金玉・月の玉!』

「決め技の癖に地味だな――」

 ズウオオオオッ! と稲妻を纏うドリル状の渦が迫る。

(さっきはあの回転を逆にして反撃を試みるが無理だった。ならどうする――どうすれば――!)

 考えてもどうにもならず竜史は巨体な渦に巻き込まれた。全身に電気が浴びせられ、疾風で刻まれる。 折れた日本晴を持つ蘭子は竜史を助けようと動く。その肩をメイサが力強く抑えた。

「人が生きる上での信念をかけた戦いに手出しは無用。たとえ死ぬ事になろうとね」

 その言葉こそは冷静だが、蘭子の肩を掴む手は震えていた。それでメイサの気持ちを知る蘭子は巨体な渦をかき消し、勝利する竜史を信じた。

(世界が暗いから、光を求める。俺は救わなければならない……救う義務がある。光を求めてもキメラが現れどうにもならない。だから麻薬に走る……光さえあれば。光を生み出すのは……サンライトはこの俺だ。俺は世界の光。サンライト)

 新調した試合用の衣服である赤い特攻服はボロボロになり、それ以上に竜史自身もボロボロである。全身は血まみれで片目のまぶたが切れて視界を失っている。次の一撃に耐えられる体力は無い。

「ハハハハッ! 最後の仕上げだ。電気で心臓を焼き、疾風の全てで心臓を串刺しにする!」

『了解!』

 白蓮三騎衆は最後の仕上げにかかる。すでに渦を逆に回し止める勢いもない竜史は流れに身を任せるしかない。その最中、これだけの渦でも自分達がダメージを受けていない三騎衆の事を思った。

(この感覚の流れだからこそダメージは受けない……逆にすれば止まるには止まるが、止まる以上の事は無い。逆にすれば止まる、逆にすれば……!)

 突如、その大渦は更に回転を増し会場内の女子生徒達のスカートが全てめくれ上がる。

「まだパンツ買えてないから死守!」

 ガッ! と蘭子はノーパンのスカートがめくれ上がらないように死守し、メイサはオムツが見えている事など気にせずに消えゆく大渦を見た。フラフラになる竜史は倒れ、三騎衆はゆっくりと竜史に近寄る。折れた刀を握りしめる蘭子の力が強くなると同時にメイサの目が笑う。

「準決勝に行くのは俺だっ!」

 シュン! と手刀が三騎衆に直撃し、竜史は勝利した。どこかに飛ばされた審判は会場の屋根あたりから竜史の勝利宣言をした後、降りられないことで半べそをかく。呆気に取られる蘭子はどうして敵の必殺技を攻略出来たのかが疑問に思いメイサに聞いた。竜史は逆回転を与えて駄目ならそのまま回転を倍加させればいいと考えた。その作戦は的中し、バランスを崩された三騎衆は超回転に巻き込まれ三半規管にダメージを負い平行感覚を失い敗北した。逆の更に逆をついた戦いで勝利したのである。

 戦いに勝利した竜史は各々に身体を支えあう三騎衆と話していた。

「生きろよ……生きてれば希望は生まれる。太陽を見れば希望はある。少しだけ待ってけれよ」

「この子を産めない身体に希望など!」

 アキはうつむく二人を代弁するように叫ぶ。それを受け止める竜史はゆっくりと三人に向けて歩いていく。場外の蘭子は動こうとするがメイサが抑える。無言のまま竜史は残るサンライトを微かに手の平に集めアキの下腹部に手を当てる。ゆっくりと暖かくなる身体は全身の神経を刺激し、やがて様々なドラッグで死んでいたアキの子宮に浄化されるような感覚を与えた。

「……子宮が暖かい。こんな感覚は何年ぶりだ……」

「意味はあるかはわからない。でも信じろ。信じるんだよ。生きていれば、この身体があれば可能性はどっかにあるはずだ。俺は親父にそう教わったぜ」

 サンライトで下腹部を触り、ドラッグで死んでいる子宮に治療的な事を施した竜史は微笑む。しかし、これでアキの身体が本当にドラッグの影響から抜け出したかはわからない。この大会の日々で様々な体験をしたであろうサンライトの少年に感謝する三騎衆は始めて笑みを浮かべた。

「私達だけじゃない……お前だって人生が変わってしまうんだよな竜史。私は自分達のことばかり考えていたから過去から抜け出せなかったのか……情けないものだ」

「そんな簡単な問題じゃないから難しいが、先へ行くには前を向かなきゃならないけどたまには後ろを見たくもなる。昔の思い出は良くも悪くも自分の宝物だからな」

「お前の遺伝子をくれるか?」

『それは駄目よ』

 突如、二人プラス一人が来る。それはメイサに蘭子にパン子であった。

 目をギラつかせる三人を見た三騎衆は笑う。

「先客がいたか。ありがとう太陽竜史。期待しているぞ」

 チュ……と三人にキスをされ竜史は立ち尽くす。様々な嫉妬を浴びる三人は会場を出て行く。ついでにお尻を触らせて欲しかったと思う竜史は両手を伸ばすが仲間の三人に止められる。

 その武舞台を降りていく竜史をヒカルは人間の死体が無残に転がるゲストルームから見下ろし、

「苦難を乗り越えられないなら、アタシと戦う資格も、この世界のサンライトになる資格も無い。決勝が楽しみになって来たよ」

 瞬間、白蓮建設の社長がヒカルに襲いかかり首が飛んだ。

 フラフラになる竜史は口元を抑えながら武舞台を降りる。それを見るメイサは厳しい顔で言う。

「ギリギリの準決勝進出おめでとう。でも彼女達が一斉にかかってこなければ負けてたわよ。それを忘れないでね」

「……偶然だっていうのか? お、おいっ!」

 フッと笑いメイサは去る。そして蘭子が折れた刀を竜史に渡し、ドリンクも渡す。

「サンキュー蘭子。でもそれは捨てるよ」

「え! いいの! 大事な形見なんじゃないの?」

「親父との思い出はたくさんある。思い出にすがらなければいけないほど弱く育てられた覚えがない」

 瞬間、真面目な顔をして自分を見ている竜史にドキリとする。その目は血走り、次第に蘭子の顔に近づいていき蘭子も瞳を閉じた。

「……うえぇ……!」

「きゃあああっ!」

 あまりにもの超回転により酔ってしまった竜史はゲロを吐いてしまう。ゲロまみれになる蘭子は竜史に蹴りを入れ会場から去る。そんなこんなで準決勝に進出し、竜史は更なる進化を遂げた。そして三人は会場を後にする。

(……?)

 ふと、背後に気配を感じたメイサは二人に先に帰れと言い会場の外で立つ。

 会場外を歩く人並みが流れていき、流れる風がおびえるように止まる。

 すると、金髪のロングの髪を揺らす月下学園の制服を着ている少女が歩いて来る。

 一見するとただの美少女だが、その力は月の加護を受ける悪魔の少女――。

「何か用かしらヒカルさん?」

 明らかに敵意むき出しのメイサに髪をかきあげ笑うヒカルは、

「仕事は順調のようだが、そろそろ限界がきてるようだな」

「限界? 何をどうして竜史の限界を決めるのかはわからないけど、彼の限界を決めるのは彼自身よ」

「仕事で依頼したはずだったが、どうやら情が移ったらしいな。シャドウにいた時とは大違いだ」

 明らかにメイサの反応を伺い楽しんでいる事をわかってるが、内心の動揺は計り知れない。この二ヶ月の日々で人生で初めて人間を教育できた。過去に依頼された人間は一日目で逃げ出すか、それに耐えても精神が壊れ死亡するかの二択しかなかった。ずっと淀んでいたいた気持ちが暖かく感じられるのは竜史のサンライトの力ではなく、竜史の人柄のおかげであった。

「……それもあるわ。でもこの大会が終わるまでの話よ。私は月下の飼い犬だから」

「じゃあ、もしも誰かが月下を潰したらお前達の関係はどうなる?」

 ハッ! とするメイサはその質問に答えられない。二人の絆はすでに切っても切り離せない所まで来ていると確信したヒカルは、過去の冷徹で傍若無人のメイサでは有り得ない確実な変化に怒りを感じながらも平静を保ち話す。

「……血みどろの殺し合いの死闘をしない限り、ある一定の強さからは進歩しない。準決勝は今までの戦いのようにはいかないぞ」

「それは貴女の経験則からの意見かしら?」

「そうだ。竜史の成長はサンライトで太陽を出現させ太陽の熱い力を使う太陽計画にとって重要な要になる」

「太陽計画……それに貴女も賛同してるの?」

「当然だ。この世界はいずれ月下が支配するんだからな。お父様の力は偉大なんだ。お前達では私には勝てない」

 憤怒の嫉妬が宿る両眼で一瞥し、ヒカルは人ごみに紛れて消える。

 じっ……と空を見上げるメイサは空に浮かぶ満月を睨み、つぶやく。

「太陽計画は成らず、月下はこの大会で消滅する。これは自然の摂理と同じ当たり前のことなのよ」




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