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戦友



「潰れろ”黒の一本角”!!」



場所は夜の砂漠、吹き荒れる砂塵は自然の風によって起きているモノではなくその場に居る俺と目の前の人物から巻き起こっている事だった。

夜の闇に幾度と無く火花が散り一瞬にして消える。

そして一際大きな火花が散り、腕を弾き飛ばした俺は一気に距離を詰めた。


「ぐぉッ!?」


仰け反る様に一歩後退する敵、そのがら空きの腹部に右フックを突き立てた。

ズドンと音が鳴り響き足元の砂が吹き飛んだ。

振動が体を突き抜け、突き出した拳の向こう側に道が出来る。


「こ・・・かっ・は」


悶絶し、意識を暗転させた敵方

そのまま頭を鷲掴みにすると大きく弧を張り、そのまま全力でブン投げた。

幾度も回転し宙を飛ぶ体、そして200m程先に砂が舞い上がった。


「終了」


手に付いた砂を払い、周囲に敵が居ない事を確認する。

ふと背後に気配を感じた。



「お前の方も片付いたか」



話しかけてきたのは大型の狼、200cmはある身長にかなり筋肉の付いた身体。

狼でありながら俺の”一本角”と違い、彼の頭の左右には”二本の角”が付いてる。

目は澄んだ青色、一度辺りを見渡すと東を注視した。


「3番の方も終わったらしい」


「・・・見てきたのか?」


「俺の方にはあんまり敵さんが来なかったんでね」


「まだ戦闘が終了していない地域は?」


「戦闘終了の報告が有ったのは俺達を除いて3、4、6番」


「5番がまだだな」


「担当は確かC地区だったぞ、ココから3kmの地点だ」


「5秒で着く」



2番から戦闘状況の報告を受けると、俺は瞬時に走りだした。

脳内の

地図と現場を照らし合わせながら最短で走り出す、砂漠なので障害物など無いに等しい。

盛り上がった地形は跳んでスルーする。

俺が走り出して数秒して砂塵が吹き荒れる、現象が俺について来ない。



「見えた」



目視したのは火花、見れば5番の周囲には10人以上の武装した集団が取り囲んでいた。

中には銃器を持った敵も見受けられる。

なんとまた懐かしい玩具おもちゃを持ち出してきたものだ。

久々に脚へと全力を注いだ。


ー ドンッ と言う音が後方で鳴った。


目の前に人間の顔、玩具を持った兵隊。


「っ!?」


顔を驚愕に変え、目が見開かれる

そのまま銃の狙いを変えようと腕を動かすが、それは余りにも”スロー”

腕を後ろに構え、引き絞っていた拳。そして急停止して行き場を失った”力”を拳に乗せた。

そのまま速度を落とさぬまま全力で拳を突き出す。


轟音が鳴り響いた。



風が割れ、地面が割れ、そして目の前の兵が”爆ぜる”


嵐のように貫通した拳の振動は、そのまま後方へと行き届いた。

拳を突き出した先に居た3人の亜人。其々が腹に、胸に、頭に巨大な風穴を開ける。

そして後に振動する拳の余波によって完全に切り刻まれた。

ボトボトと、肉片が地面に落下する。




「ぁ・・・」




息をするのも忘れ、その衝撃の場面を見ていた亜人の一人が急に座り込んだ。

周囲の亜人が座り込んだ者に顔を向ける。



 頭がもぎ取られていた。



「う・・・うぁぁぁぁぁああああああッ!?!?」



急激に騒ぎ出す亜人。瞬間目の前に現れる風が巻き起こる。

その顔面に軽く小突いた様な裏拳が当たった。それだけで亜人は首に引っ張れられる様に吹き飛ぶ。

地面を何度も転がり、5回地面に体が接した瞬間に首が捻じ切れた。

頭部が回転しながら宙を舞う。

そして訪れるのは静寂。




俺は静かに拳を収めた。




「何だ・・・雑魚か」












              ✖✖✖






「1番、何故来たのですか?」



10人全員を血祭りにあげたあと、血の付着した尻尾を布で拭き取りながら5番が聞いてきた。

周囲には半身の無くなった死体や、全身の骨が砕けたような死体もある。

5番は下半身が蛇の亜人、俗にラミアと呼ばれる種族だった。


「戦闘終了報告がお前だけ来てなかった」


腕を組んだまま答える。

すると5番は溜息を吐きながら俺を見つめた。


「私が倒れるとでも?」


「・・・・・」


無言で背を向ける。

後方から僅かに輸送ヘリの音が近づいてきたのだ。恐らく回収用だろう。


「乗っていかないのですか?」


背後から声が掛かる。

俺は目線だけそちらに送り、小さく答えた。



「乗り物は嫌いだ」












「しっかし、お前この組織は嫌いな癖に仲間には凄い甘いよな」



戦闘報告を終えて帰還する5番を遠目に見ながら、2番と砂漠の中言葉を交わす

2人とも横になって空一面に広がった星を見ていた。


「組織は嫌いだ、俺達をこんな体にしたから」


静かに腕を空にかざす。

漆黒に染まるような黒、それだけが俺の腕を覆って離さない。俺は”1番”になってからずっとこの姿だ。

全身が”黒”で覆われた”黒の一本角”それが俺の呼び名。


「確かになぁ・・・俺達の容姿は醜い」


狼の口元をニィと釣り上げる2番、獲物を見つけた時の様な笑いだ。不気味極まりない。

彼も又この組織に組み込まれた犠牲者の一人だった。


「故の仲間意識・・・ってか」


「駄目か?」


「いいや、分かりやすいし嬉しいね」


そう言って飛び起きる2番。

砂埃を叩き落すと、俺へと手を差し出した。俺は何の躊躇いも無くその手を取った。


「これからも宜しく頼むよ、戦友?」


俺を起こし、その不気味な笑顔を向ける2番・・・いや”戦友”


俺は同じような不気味な笑みを浮かべ答えた。





「 まかせろ、戦友 」














  そして3日後、俺達の組織が潰される事となる。









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