第五回スコップ
はい、第五回スコップ、スコップ~。
本日は200ページ目から掘り下げてきた。
何作か読んでいて、気になったというか、切った基準のひとつを書いておこう。
設定の矛盾だ。
例えば、それまで離れ離れに住んでいた家族と暮らすことになった、それはいい。でも、対象者がとっくに成人済ませたいい大人の場合、それも男性の場合はそのまま独立して、時々は遊びに来るよ、と誤魔化す場面だろ?
それがリアリティというもので、そこをご都合で一緒に暮らしてしまう設定の作品は悪いが切らせてもらったよ、今回。
都度の場面、一般的にはどうなるか?を常に頭に入れて書くことが出来てない作者さんに、今回はけっこう当たったような気がする。(て、今までがスムーズに掘削出来てただけかなー)
少し考えれば分かるようなご都合矛盾ってのは、さすがに紹介作にするわけにいかない。前に紹介した電話とは違うんだよ、展開上、電話が必要になったが電話を回避すると相当の技量が要求される、それがムリだったんだろうと分かるからね。たかが小道具一つのコトだから目を瞑ってくれ、とお願いした。
(改定追記:技量的に「矛盾」が仕方ない場合は問わないけど、単なるズボラなら厳しく見る、ということだよ。それも、多少なら目を瞑るし、他にプラスがあるなら問わない。)
ちょっとズレた思考を持った人が主人公の場合は、その行動がズレてるが故に周囲は普通通りの展開にはならないはずなんだよ、で、周囲もズレてるならさらに普通とは違う、それ相応の展開にならないと。それが構成というか、計算。
主人公の一挙手一投足、一つの台詞で、次にどう返ってくるか、その計算をする。池に石を投げたら、波紋が広がり、どこで跳ね返って波紋同士がどこで重なり合うのか……それが『小説を書く』ということ。投げる石が多かったり、特殊ならば、その分だけ計算は複雑になる。
それが、本来のSFは難しいということだったり、歴史や戦記は大変だったりすること。特殊な波の形状という要素を計算式に入れなくちゃいけないから。
んで、3回、3回番外でも云ったけども、「なろう」では受けない種類を掘り出してるわけですが、わりと掘ればゴロゴロ出てくる状態なわけだ。ゼロポイント地層には沢山埋まっている。
たぶん、なろう作品を読みに来る時点で、読者の方でも小学生向け漫画とか、そんなんを読む心積もりしか持ってないんだろう。
ゲームをお薦めした時に、知人が言ってた言葉だが、「娯楽でまで、頭使いたくない。」と、そういう意味なんだと思う。で、なろうはチーレムトリップの本棚だ、と。
良い話を書けば、口コミで上に上がるのかとか考えたけど、なろうの読者が押し上げたわけではないようだ。アルカディアとか、そっち方面で噂になって、普段離れてる層とか、評価もお気に入りも付けない層が目に止めて、ポイント入って上がるんだろう。
で、上がってきたら、初めて、普段テンプレしか読まない層が読んで、さらに底上げ……は、しないな、連中は層がまるで違うから、読んでも理解出来ない。面白いと感じないだろう。半数以上は読むことが出来なくてバック、半数は気に入って評価、というところかな。
以前、会社の先輩が、小説を読み始めようと思うから、面白いの貸して、と言ってきた事があった。
「新井素子」を貸してあげた。簡単だろ? 初心者にはうってつけの分かり易さだろ? 自信満々で、小説好きが一人増えたな、とか、次は何を貸してあげようかな、とか思っておった。マヌケにも。
……「ごめ~ん、難しくて、わかんなかった。」だってよ。
それ以来、わたしは全員が全員、小説読めるもんだなんて幻想は抱いていない。
人の読解力には差異があるわけでさ、文章の難解さでギブする人だけでなく、内容の複雑さでもギブしちまうってことさ。「まどか☆マギカ」は傑作と思うが、なろう読者に受けは悪かろ? 理解出来んということだ。「シュタインズ・ゲート」もな。
理解は出来るんだろうが、はなからそれを求めてなろうには来ていない、という事かな?
よく解からないねー。
(改定追記:小説、というインプット媒体と他の媒体の差、ということも影響あるかな。慣れもある。テレビが一日中付いてる時代だから、文字を読むことそのものが少ないというのもあるだろう。同じ内容でも、東野圭吾の麒麟の翼を原作では読めん人は多いだろうが、映画が理解出来ん人は居ないだろう、ということだ。)
だから、逆にいうなら、中途半端に点数入っている作品よりも、いっそゼロポイントが宝の山だったりする。だから、作者さんたちも、お気に入り数がどーのこーのでは、悩む必要まるでなしっ!(笑
てなわけで、本日のスコップ成果。
『八百万のクチ』(Nコード:N2113W)風見香耀氏
面白い! あ、いや、まずは文章の方を。
現代文学やりたい作家さんはぜひ参考までに読んでください、て感じのクオリティ。
テンポもいいし、誤字もほとんど見当たらない(一箇所しか見つけてない)、引っかかるよーな言い回しの妙な部分だとか、文章のちぐはぐもない。
そして内容、まだ2ページしか書かれてないけど、そうとう面白い。
2ページ、相当量で文字がぎっちり詰まってるけど、主人公がどんなけダメ男かっていう説明と、「カウンセラーになってください、」と言われるまでで費やしているので、進行は少々遅めか。(いや、一般的な小説ってこんなテンポだから、ライトノベルとして読むなよ、という感じ)
で、このダメダメ男がどう変化してくのか、という期待をすごく抱かせてくれる。人によっては、そのダメっぷりが我が身のことでブラウザバックするかも知れんけど。そんくらいダメさがリアル。
「つづき、まだー?」ワクテカ。
(追加情報:ちょーっと、エタってんのかな疑惑…覚悟した上で閲覧ください。)
『マジメかっ!――笑道わらいのみち――』(Nコード:N2087W)桶乃弥氏
文章は文句無く、読ませる。背景描写のうち、どういう建物がありどういう概観で、とかいう部分があまり書かれていないけど、この話の場合は不要なので、わざとなのかうっかりなのかの判別は付かない。
けど、巧いなー。背景はしょりつつ読ませる文章、という事で一見の価値あり。
そして内容、話の進め方もテンポも引きもいい。今のところはオーディションを受けてきたよ、という部分で終わってるけど、割と長いはずなのにするすると読めてしまった。
ただ、内容は人を選ぶ。かなり資料を当たっているか、業界に繋がりのある人かも知れないので、ソッチ系統に興味のある人は面白いだろうと思う。
専門知識あれば武器になる、の良い見本なので作家希望の方は勉強になる。
(追加情報:この方、外部サイト持ってらっさるんで、そっちが主な活動の場かも。)
わたしは理想主義者ではないのでね。人間を良いものとも思わないし、全ての人が平等に同じ程度に頭が良いとも思ってはいない。小説を書こうと思うことが、才能の発露だとも、もちろん、思ってなどいない。