番外・書き方講座その2「穴の埋め方」
旧題『来訪者』は、もともとは『ゴブリンに追われる』という短編を引き延ばしたところから始まったストーリーで、プロットもへったくれもない作品だった。(笑
現題は『創神記~俺は異世界で神になる~』だ。間違っちゃないんだが、誤解を受けそうなんで副題はなんとかしたいと思ってる。
さて、『創神記』には明らかな欠陥が発見された。地図がまず一つ。そして、距離。
物語の舞台が異世界の三つの国にまたがってんで、途中から勘違いしてそのエリアにある国は三つ、と認識してしまい、そのような表現を重ねてしまったんだ。初期では明らかに幾つも国があるヨーロッパ周辺を意識してたのに。
で、距離ってのは、戦争が何度か出てくるんだが、その日程で「やっちまった」。戦場へ到着までに1週間を見てたが、ハイキングじゃねぇんだよ、という目算の誤りが発覚。
片道半月がデフォだ、徒歩で東京~京都の距離がそのくらいだ。首都から隣の中堅都市までがそんくらい、という事だ。国ってのは思う以上にデカい。
だから、行軍中のエピソードか、時間短縮の方法が必要になる。
で、今回はその時短でいこうかと思ってる。なんせ魔法の世界だし。
転移魔法がある、という設定は気をつけねばいけない。
それは、解かりやすく言えば『どこでもドア』がある、という意味だからだ。さて、拙作には乗り合い馬車が出てくるし、馬やロバも交通手段として登場する。徒歩何分という概念も、最初に出している。
転移魔法に制限が掛かっていないならば、すべて、存在しない事になりかねない。必要がないからだ。これは扱いによっては、迷宮など「脱出に関わるロジック」は全てボツることになる。
転移魔法が使えない理由を、考えていかねばならない。どこでもドアを思い浮かべ、例えばダンジョンで危機に陥っても「転移魔法でキャンセルすれば済むんじゃないの?」となる事を予測して、あらかじめ塞いでおくという事だ。
ゲームでいうなら、デバグという。バグ取り。ルーチンが無限ループ起こしてて終わりが来ないよ、だとかリンクが途切れてて次のストーリー始まらないよ、だとか。
小説の場合、読者が興ざめしないように、あらかじめ矛盾した設定は潰しておくわけだ。
街から街へ移動する事になった。だが、主要舞台はこっちの街だから、すぐ戻らないと拙い。
そういう問題が起きたとする。
便利なのが『転移魔法』だ。好きな場所へ移動出来る能力。
『次の街へ移動する事になった!⇒転移魔法を使った!⇒無事に到着した!』
ということになって、その問題は楽に解決出来たかも知れない。(笑
だが、同時に新たな問題が発生する。
『強敵に遭遇した!⇒転移魔法を使った!⇒無事に逃げおおせた!』
『迷宮に迷い込んだ!⇒転移魔法を使った!⇒無事に脱出した!』
こんなに簡単に解決されたら、面白い話なんぞ書けない。で、都合よくそういう場面だけ魔法を無視する。そしたら、矛盾を指摘されてグゥの音も出なくなる、と。よく、間違うのは、ここで修正すべきは敵に遭遇した場合に逃げられない理由を考えるんじゃなく、転移魔法そのものに制限を考えて、最初に書いた部分、「楽に次の街へ到着した!」を書き換えた方が早い、と気付くことだ。
で、魔法に縛りを付けるつもりで、都市と都市を結ぶ『ゲート』の概念を使う。
だが、設定をきちんとしなければいけない。
「なぜ、限定された魔法なの?⇒ブーストしないと使えないからだ⇒よって装置が必要」
「どこでも使えないのはなぜ?⇒強力な魔法で影響が大きいからだ⇒よって大都市に一つ」
どういう仕組みで動くだの、動力が何かだの、そんな理屈より必要なのは、どう制限されるのか、それはなぜなのか、だ。
そうして自分で敷いた制限を念頭に置いてストーリーを進めれば、嫌でも、計算しながらでなくては物語が破たんすることになるのが解かるだろう。
ということで、書き換えてくる。
ついでに言うと、『ゲート』の概念を導入したことで、舞台の異世界には「魔法科学」が存在する、という設定が増えることになる。「装置」が使われているからだ。色々と変更点が出てくる。バグ取りしたら、別のバグが生まれるのは、ゲーム制作にはよくある話なんだ・・・。orz