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7.5:思想境域[/想刻]
霄。
吸い込まれてしまうのではないかと思う程に奇麗で、手を伸ばせば届きそうなのに、果てしなく遠い。
目蓋を閉じ、己の右眼に触れる。
この眼は視るモノの心を捉えるのに、鏡に映して己を視ようと己の心は捉われない。
頭上に広がる∞(無限)のセカイに向かい、消え入りそうな声で音を奏でた。
この声は聴くモノの心を操るのに、自らの声を聴こうとも己は決して操れない。
ただ
穴の空いた心に残るのは
虚無の痕跡
己自身を捉える事が叶わないのなら
己自身を操る事が叶わないのなら
己以外のモノを―――。