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第1話 隼の三型

 ”沖縄戦(知覧上空)編”は”ポートダーウィン空襲編”の後の時系列となりますが、編集の都合上で先に掲載となります。


編集「本田さんは陸軍の単座戦闘機は全部乗ってらっしゃるんですよね?」

本田「はい。九五戦から後ですけどね」

編集「え、九五戦、あの複葉の、ですか!?」

本田「そうですそうです。比島に行く前の、台湾にいた時です。格納庫の隅に置いてあったのを勝手に乗り回してました」

編集「実戦ではないですよね?」

本田「もちろんです(笑い)、流石に昭和一九年の段階であの飛行機で戦うのは無理です」

編集「それでその中で本田さんが一番良かったと思う戦闘機は何でしょうか」

本田「強い弱いじゃなくて?」

編集「はい、好みで」

本田「そうですねえ。そういうことであれば空戦では一度も使ってないのですが、隼の三型でしょうか」

編集「疾風よりも?」

本田「はい。キ八四(四式戦闘機、疾風)もパワーのあるいい飛行機でしたが、まあ機体も舵も重いですしね」

編集「駄目だったんですか?」

本田「いえ、そういうわけじゃなくって、結局慣れの問題なんだと思うんですけど。比島では乗っていったら(現地部隊に)そのまま取られちゃったもんですから、台湾で受け取ってから慣れる時間があまりなくて」

編集「そうなんですね。一度も空戦に使っていないというのは、どういうことでしょうか?」

本田「そもそもあれを飛ばしたのが指宿北で振武隊(特攻隊)の同期(本田氏は陸軍少年飛行兵十期)が乗ってきたのをちょっとだけ貸してもらいまして、自分のキ一〇〇(五式戦闘機)と交換で、一度きりなんです」

編集「交換というのは、よくされたんですか?」

本田「いやその時だけです。同期の頼みで断れずにね。本来は未修終わってないと許されないですしね」

編集「なるほど。それで隼の三型」

本田「はい。ニューギニアからビルマまではずっと同じ隼の二型に乗ってましたので。三型はもともと自由自在に飛べる隼がさらにパワーアップしてますでしょう。本当にちょっと乗っただけなんですが、これは良いなと。ただあの頃はもう格闘戦はあんまり無かったですから。速度重視で。結局私は沖縄の頃から終戦までキ一〇〇で戦えたのは幸運だったのかなと思いますね」


 本田史郎氏は陸軍少年飛行兵十期、元陸軍准尉。航空マニア1981年7月号より転載

(注:フィクションです)

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