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「じゃあ、魔術教えなくて良い?」
「教えてほしいけどな」
「面倒臭い……」
メリットは溜め息混じりだった。とはいえ、ここに住ませてやるのなら、それくらい教えてもらわないと困る。
「まあ、居候させてくれるんだったら、ちょっとばかし教える」メリットはスマホを取り出す。「最近は魔導書もオンラインで閲覧できる。アンタのスマホに送っておく」
デジタル過ぎないか、魔術世界。
というツッコミを入れたくなるが、魔導書とやらを使って魔術が使えるのなら、これくらいとっつきやすいほうが良い。
ノアとメリットは携帯電話をかざし合い、同時に電子書籍の魔導書が送られてきた。
「これ読めば魔法が使えるのか?」
「さあ。魔力次第じゃない?」
「魔力なんてあるか分からないぞ」
「魔力はその人間の悪意や善意で決まる。アンタは悪意に満ちあふれてそうだから、まあ攻撃型の魔術は使えるんじゃない?」
「なら、善意があれば回復型でも使えるってわけか?」
「そうかもね。んじゃ、私はもう寝るから」
メリットはシングルベッドに寝転がりやがった。ヒトひとり用のサイズなので、ふたりで寝たら寝苦しすぎる。
と思ったが、いまのノアは小柄だ。体重も40キロ程度だと思われる。ならまあ、ふたりでも使えるか、と渋々納得するしかなかった。
(この世界に来てから、魔力とやらが開発されているかどうかだな……)
ノアは電子書籍をスクロールしていく。何語だよ、という文字が文章になっているだけの奇妙な本だ。
(んん? 身体が火照って来たぞ?)
「なぁ、メリット」
もう寝てやがる。スースー、と寝息を立てながら。
「コイツ、面の皮厚いな……」
このまま生娘を放ったらかしにするのも良くないので、ノアはメリットにタオルケットをかける。
が、当然ながらメリットに質問はできない。
困ったものだ、とノアは一旦スマホを机に置く。そして身体を伸ばす。すこし読書で疲れたからだ。
そして、
天井に銃弾が当たったかのような、穴が空いた。
「はぁ?」
ノアは怪訝な顔になりながら、手を見つめる。当然、拳銃は持っていない。隠してもいない。
となれば、これが魔術? 随分、殺傷能力が高いようだ。壁に穴が空くほどの波動? を自在に放てれば、証拠もなくヒトを殺せてしまう。
と、ぼんやり考えていたら、
「──ぐほッ!? な、なんで血が……い、意識が」
ノアはその場にへたり込み、意識を失った。
*
「──きて、起きて。クソガキ」
めまいを振りほどき、ノアは仰向けに転がり直す。
「アンタ、誰とデートするのか知らないけど、鬼電来てる。さっさと出て」
「おいおい……、血ィ吐いたことを心配してくれよ」
「それだけ会話できれば大丈夫。アンタ、強いんでしょ?」
「まぁな……」
ノアは机を握って立ち上がり、携帯電話を手に持つ。
電話越しの相手はパーラ。ノアはいまだ体調が優れない中、電話へ出る。
『もしもし!! ノアちゃん!』
「ああ……、悪いな。寝過ごした」
『謝ってくれるなら良いよ!』にこやかな態度だ。
「だけど、体調が優れないんだ。魔術ってヤツを使ってみたんだが、それの所為だと思う」
『魔術使って体調不良? むしろあれ、気分が良くなるって言うけど』
「あぁ……。多分、超能力がブロックしているんだ。悪いけど、あしたにしてくれないか?」
『んー、良いよ! あしたね!』
「あぁ、ありがとう」
ノアは電話を切り、即座にメリットへ詰め寄る。銀髪の幼女の顔から血の気が引けていて、蒼くなっているが、ノアはそれでもメリットに向かっていく。
「オマエ、なんの魔術書を渡しやがった?」
「普通の中の入門書ってところ」
「それがなんで、吐血する羽目になるんだよ?」




