27 国盗りゲーム開幕
「なるほど。つまりおれは、愛と平和の使者になるわけだ。最高にロックじゃねェか」
クールが口角を上げ、ノアとポールモールに説得された頃、邸宅のインターホンが鳴った。
「アイツらだな」
ノアはインターホン越しにふたりがいるのを視認し、玄関までわざわざ向かっていく。
なんとも良いタイミングで戻ってくる、とノアは思う。クールを説き伏せたのであれば、次はアークにロイヤル・ファミリーの支持を取り付けさせ、鉄を熱いうちに叩いてしまおう。
「よォ。調子は?」
「……、」
ノアは、顔色が明らかに悪いアークの背中を軽く叩いてさすった。
「良いわけねェか。3人とも、今頃アンゲルスの港付近に運ばれているし」
「…………!!」アークの顔が引きつる。
「そんな面するな。やってしまったのなら仕方ない。大事なのは、やった後にどんなフォローを入れるか、だ」
メリットが露骨にこちらをチラチラ見てくるものの、ノアは気にする素振りも見せない。そして、アークはあからさまに身体を震わせながら、まるでノアに引っ張られるかのように邸宅のリビングにたどり着いた。
「よう、アーク」
「……クールくん──クールくん!? なんでここに!? キャメルに教えてあげないと──」
「そりゃ結構だけど、オマエ3人殺っちまったらしいな」
「……はい」
「処理はこちらに任せろ。事故とはいえ、3人も殺ったのが露呈したら面倒だろ?」
ノアがアークの背中をさすりながら言う。「ただし、無償の愛というわけにもいかない。オマエとしても取引した、と思えるほうが楽だろう。条件がある。私の父・クールとロイヤル家の当主の電話会談のセッティングを行え」
「うん……」
生気のないアークがそのまま飛び降りないように、ノアはポールモールにアークの介護をするようにジェスチャーした。
「アークくん、口頭とメモならどっちのほうが呑み込める? とりあえず、あっちで君のお父様とクールさんをつなげる会話を考えよう」
ポールモールがアークを別の部屋に誘導し、場にはノア・メリット・クールが残される。バタン、とドアがしまった頃、ノアは奇妙な笑い声を上げる。
「ヒヒ……あのガキ、完全に私らを信じてやがる。港近くに病院がある、って転生者の私でも知っているのにな?」
「アンタ、性悪過ぎ。アイツ完全に信じて、タクシーの中が気まずくって仕方なかった。励ませば良いのか迷って、結局それっぽい慰めを言ったけど」
「しかしおかげで、ロイヤル家とのパイプを持てる。名女優になったようだな? メリー」
「そりゃあ……、アイツ変なのよ。なんか、言葉にできないけど」
ノアは未だ笑い声を抑えられていない。「あァン? 変? オマエに変って言われたら、もうおしまいだろ」
「……アンタもね」
子どもの会話に参加するつもりがないクールだが、メリットのメガネ越しの目がどこか浮ついているのを悟る。彼は腕と足を組みながら、ノアとメリットが喋っているのを眺めていた。
(似たもの同士への自覚のない恋愛感情……。良いねェ、子どもって)
そういった若い感受性も、いつの間にかなくしていたのかもしれない。ことし35歳という良い大人のクールは、しかしそれを悟れることすら大人の特権だと、ただ傍観者でいてみる。
そんな最中、
ポールモールからなにかを言われたのか、凛と引き締まった表情になったアーク・ロイヤルが、スマホを持ってクールのもとへ向かってきた。
「父と繋がってます。クールくん」
「あぁ」クールは軽く咳払いした。「お久しぶりです。クールです。アークから説明があったと思いますが──」
こうして、ノアの転生2日目が終わったのだった。前代未聞の国盗りゲームが、大きく産声をあげて。
シーズン2、おしまいです。チャプターごとにサブタイトルでもつけようと思っています。
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