25 即興セッション
「さて、どちらが先に着くか」
メリット・アークが先着でも、クールたちとの密談は真夜中に行えば良い。クールたちが先に着くのなら、先に商談を進めれば良い。どちらが先についても問題ない。
ノアはタバコを吸えない代わりに、冷たいココアを作る。どうもこの身体になってから、甘いものを無性に食べたり飲んだりしたくなった。なので、冷凍室に入っていたマフィンを頬張りながら、ノアは一旦頭をすっきりさせる。
(元・王族を票田にできるのなら、クールは大統領になれる。ロイヤル家は複数の国内企業を経営する資本家でもあるからな。ただし、問題はふたつ、か……)
結局、人間の行うことなので問題は生まれる。
まず、クールが出馬を受け入れるか。これが大前提だ。彼が首を縦に振り、その上で巨大政党から大統領候補になってもらう必要がある。現在下野している〝自由労働党〟辺りが適任か。
次点で、現大統領・サラトガが2期目を目指すか否か。権力欲に取り憑かれた男だというので、確実にその意思はあるだろうが、彼の属す〝行動保守党〟が、消費税並みの支持率しか持っていないサラトガを出馬させるのか。普通の神経をしていれば、ほぼ確実に別の候補を立てる。となれば、こちら側も戦略を考えなければならない。
そうして思慮を巡らせていると、
インターホンが鳴った。ノアは画面越しに、どちらが来たか確認する。
『よう、ノア』
クール・レイノルズだ。傍らには、長めの髪の毛をオールバックにした男前がいる。彼が、クールの紹介したい者だろう。鍵を開け、クールたちは家の中へ入ってくる。
「どうだ? この家」
「気に入っているよ。ただ、オマエどうやってこの家を買ったんだ?」
「ポーちゃんが説明してくれるよ。おれも詳しいことは分からねェ」
ポーちゃんという、クールに負けず劣らず巨漢な男を見上げていると、首が痛くなりそうだ。こちらが150センチくらいで、あちらが190センチ超え。当然といえば当然か。
「オマエが、アニキと引き分けたっていう怪物幼女か」
「そうだ」
「魔力を感じ取れんが、その分恐ろしい目をしているな。ポールモール・レデンだ」
「ノア・コーバ……いや、レイノルズか。よろしく」
ノアとポールモールは、硬い握手を交わした。
「さて、クール。早速だが、国盗りゲームに向けて建設的な会議をしよう」
「だからおれは権力が嫌いなんだよ。力に屈したら、ロックン・ローラー名乗れねェだろう?」
「力に屈する? オマエほどの男が?」ノアはニヤッと笑う。「どこでなにをしていようが、クール・レイノルズはクール・レイノルズだ。闇の実業家だろうと、国家の最高指導者だろうと。なぁ、ポール」
「アニキ、ノアの言うことにも一理あります。現大統領はアンゲルスを崩壊させようとする売国奴です。あんなのが2期目に突入したら、アニキの大好きなロックも規制されますよ?」
「規制の中で闘うのがロックン・ローラーだろ。だいたいオマエら、選挙ってのは途方もないカネがかかるんだぞ? スポンサーはいるんかよ」
「ロイヤル家がスポンサーになってくれるだろうよ」
「あァ? そういや、アークがどうたらこうたら言ってたけど、なんかあったの?」
「あぁ。私はアイツの弱みを握った。アイツ、レクス・マギアでイジメっ子どもを一網打尽にして、ソイツらを殺してしまったと思い込んでいる。実際は退院まで半年ってところだろうが……そのときになれば、私がソイツらを消しても良い。汚れ仕事は私が全部担う。だからクール、オマエは国を獲りに行くんだ」
クールはしばし考え込むように、唸る。あともう一押し、と感じたノアは続けた。
「それに、これは私の友だちのためでもある」




