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メリットは当然勘づいている。不良たちは虫の息だが、まだ生きていると。しかしノアは一瞬、目をメリットによこし、彼女に黙っているように伝えた。
「……これからどうすれば」
「私なら死体を隠蔽できる。ただ、この場から離れたほうが良いな。大丈夫、堂々と裏門から立ち去ろう。邪魔な防犯カメラは、私がぶっ壊してやる」
ノアはアークとメリットの背中を押す。アークは未だ震えているが、ノアはニヤニヤ笑っている。その不気味さは、メリットの背筋をも凍らせた。
(確かに、ナード野郎の実力は侮れない。使いこなせてないとはいえ、レクス・マギアを自在に操れるのなら、戦力としては申し分ない。同時に、殺人を庇った、という恩は一生ものになるけど……それが一体なにを意味するのよ?)
そんなこと、ノアの脳内を割ってみないと分からない話だ。案外意味がないかもしれないし、重大な意義を持っているかもしれない。
ただ、先ほどのノアの目つきに圧され、メリットは口を噤むしかなかった。
「なぁ、アーク」
「……なに」
「辛気臭せェ面するな。こういうときは世間話でもしよう」ノアは裏門の防犯カメラを目視し、指振りでそれを壊す。「仮定の話だが、半年後に行われるアンゲルスの大統領選挙へ私の父が出るとしたら、ロイヤル・ファミリーは支持してくれると思うか?」
「……僕が父に頼めば、多分支持してくれる。父はクールくんに悪感情を抱いてないし」
「そりゃ良い。父に伝えておくよ」
メリットはここで真意に気が付いた。
(このガキ、国内最大の名家を味方につけるために……!?)
アンゲルス連邦共和国屈指の名門一族・ロイヤル家が、仮にクールの大統領出馬を支持すれば、それだけで大量の票が動く。支持率15パーセントの現大統領など、もはや敵ですらなくなるほどに。
そして現大統領・サラトガが敗れれば、メリットやその他の聖女候補は、即座にその立ち位置から解放される。
「どうした? メリー。立ち止まって」
「……なんでもない」
国盗りゲームが、いよいよ現実味を帯びてきた。それは果たして、友情からの施しか、はたまた暇潰しのためか。
*
ノアは、死体処理班を呼んでくる、とか言って、メリットとアークを一旦クールが提供してくれた邸宅へと行かせる。アークは元王族だけあって、限度額無制限のクレジットカードを親から渡されているらしいので、タクシー代くらい負担してもらおう。
彼女は不良どものために匿名通報しておき、そのままクールへ電話をかけた。
『よォ、MIHはどうだった?』
「楽しかったよ。なぁ、クール。大統領になるつもりは?」
『あァン? おれはロックン・ローラーだぞ。権威は嫌いだ』
「あえて権威に立って、権力の卑怯者をぶっ倒すのもロックだぞ」
『なんだ? オマエ、おれに大統領へなってほしいんか?』
「そうだが」
『いやいや、裏社会の人間がなれるもんじゃないだろ。まずスポンサーはいるんかよ?』
「いるよ。ロイヤル家だ」
『あァ? おれらの本家じゃねェか。確かMIHにアークがいたよな。アイツとキャメルは仲良かったから、実家暮らしだった頃いっしょに遊んでやったんだ』
「それを思い出にしておくのは、もったいなくないか?」
『どういう意味だよ?』
「サツが盗聴しているといけねェ。オマエの提供してくれた隠れ家まで来てくれないか? そこで話す」
『良いよ。おれもオマエに会わせたいヤツがいる』
「誰だい?」
『おれの弟分で、国家最強の魔術師たち〝セブン・スターズ〟所属のイカした野郎だ。少し前、対テロ戦争から帰ってきた』
「へェ……。ぜひとも会いたいね。じゃ、早く来いよ」
ノアは、自宅に配置してあった〝羽〟を頼りに、自宅へテレポートした。




