22 レクス・マギア
「元王族? それって、レイノルズ家じゃないのか?」
「レイノルズ一族はロイヤル家の分家。位はそこのオタク野郎のほうが高い」
「所詮、肩書きだけだよ。メリットさんが言うように、僕はナードのイジメられっ子に過ぎない」アークは自嘲気味に言う。「僕は魔術も使えないし、殴り合いで勝てるわけでもない。無様な高校生だよ──」ノアが言葉を被せた。「なぁ、オマエの自嘲なんて全く興味ない。もうこの話終わらせて良いかい?」
アークの苦しみに関心のないノアは、ざっくばらんかつ無理やり会話を終わらせてしまう。これにはメリットも、少し苦笑いを浮かべるほかない。
「アンタ、ひどいね」
「ヘタレに思いやりは必要ねェ。弱者は、強者のおこぼれで生かされているに過ぎないからな」
アークの顔が引きつるが、ノアは知らん顔だった。
そんな夕暮れ時の裏庭に、ジャラジャラとアクセサリーの音が響いた。
「アークちゃーん、ライターを改造したんだけどよォ、その邪魔そうな前髪焼いて良い?」
現れたのは三人の男子生徒。着崩した制服、ジャラジャラとしたアクセサリー、そして人を小馬鹿にしたような目つき。絵に描いたような三流の悪役だ。
「コイツで髪の毛焼いたら、ちったぁ男らしくなれるんじゃね? ヒヒヒ……」
端からノアとメリットは眼中にないようだ。女子生徒と幼女を痛めつけようとは、考えていないらしい。それを見越したノアは、
「発火もテメェで使えねェのか。弱いものたちが夕暮れ、更に弱いものを叩くってヤツ? いやー、みんな格好悪いね」
「……あ?」ピキピキと、眉間にシワが寄る。
「まぁ良いや。私とメリーは関係ないし」
「関係ねェで済むと思ってンの!? クソガキが!!」
「いきなり怒鳴るなよ。耳が痛てェ。セラピーでも受けたほうが良いな」ノアは右耳に指を突っ込む。「アーク。オマエ、こんなしょっぺェのにイジメられていたの? 情けねェな。それでも王家の血が入っているのかい。根性無しが」
アークは、イジメっ子ではなくノアを睨んだ、
彼にとって、元王族という血筋は最大のコンプレックスだ。この血の所為で、散々な目に遭ってきた。勝手に期待され、勝手に裏切られたと文句を言われる。それでもいつか、報われると耐え忍んできたが、今や10歳くらいの子どもに煽られる始末。もう、こんな人生は嫌だ。どうせ誰も助けてくれないのなら、自分で自分を救ってやる。そう決心つき、アークは拳を握る。
(……魔力の膨張。怒りで目覚めるタイプね)
メリットは蚊帳の外だが、その分全員の動きを見られる。彼女は知った。アーク・ロイヤルの魔力が凄まじい勢いで膨らんでいる、と。
それが一定のラインを超えたとき、メリットは即座に〝悪魔の片鱗〟で身体を魔力でコーディングした。もはや危険水準を超えていると察したのだ。
そして、
バリバリバリッ!! と、魔力が唸り声を上げながら、さながら意思を持ったレーザービームのように、裏庭中を駆け巡る。暴風が巻き起こり、ベンチ・自販機・木・花壇・その他オブジェクトが無惨に壊され、しかしアークはそれをムチのように操り、イジメっ子とノアにぶつけた。
「な、なにが……ッ!? うぐッ!!」
三下らしくイジメっ子が気絶する頃、ノアはレーザービームみたいな現象を、アークを起点に起こるハリケーンをものともせず、彼に近づいてその薄い胸板を叩く。
「なんだ、やりゃできるじゃねェか」
その言葉とともに、アークはその場にぐったり倒れ込む。ノアは彼を支え、愉しそうに笑った。




