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「お兄様! 久しいです!! まさか娘さんと会えるとは!」
話が長くなりそうだ。クールがヘマしないことを願いつつ、ノアは近くのベンチにもたれる。メントもそれに追従し、ふたりはすこし離れた場所で話す。
「どういう家庭なんだ? 父は入学予定の学校の首席が、自身の妹だって言ってこなかったぞ?」
「……、クールさんは暗い噂だらけだからな。キャメルを巻き込みたくないんだろう。それで、訳ありのオマエへも伏せていたんじゃねえの?」
「一理あるが、どのみちバレることでもあるだろ。私がレイノルズって名字で入ってきて、名前あげていけば、お姉ちゃんだっていつか私へ接触してくるはずだ」
「それは、ほら、クールさんって忘れっぽいらしいから」
「妹のことも忘れちまったのか。そりゃ駄目だな」
「なあ、ノア」
「なんだよ?」
「キャメルは勘が鋭い。嘘は遅かれ早かれバレるからな?」
ノアは鼻で笑い、
「だったら、なにか問題でも?」
不遜な態度で返すだけだった。
やがて、キャメルが通話を終えた。
「ねえ、ノアちゃん」
「なんですか?」
「連絡先、交換しておきましょうよ。私たちは一応家族なんだから」
「良いですよ」
スマートフォンをかざし合い、ノアとキャメルは連絡先を交換した。
「ところで、ノアちゃん」
「なんです──」
言葉を被せる。「貴方、お兄様と血がつながってないわよね?」
殺気がドロドロと溶けていく感覚に襲われた。こんな小娘相手に怖気づくことはありえないはずだが、ノアの身体が一瞬凍えるように鳥肌だらけになったのも事実だった。
が、それを悟らせないように、
「そうですが、なにか問題でも?」
「いえ? 一応聞いておきたかっただけよ」
(なにが言いてェんだ? コイツ)
「なら、私は入学手続きを済ませないとならないので、また入学したら会いましょう」
「ええ……」
ノアはその場から離れることに成功する。そして疑念を抱いたままで終われないので、クールへメッセージを送る。
『なんでキャメルと連絡しなかったんだ? 良い子に感じるが』
『小学生の妹が、マジの目つきでネグリジェ着てベッドに潜ってきたことあるか?』
『ないな』
『そういうことだ。禁断の恋と向き合うのは大変なんだよ』
ノアは、隣のメントへぼそりとつぶやく。
「なんで金持ちは、性的倒錯者ばかりなんだろうな」
「……どういう意味だよ、それ」
メントは、頭に疑問符を浮かべることしかできなかった。
「そのままの意味だよ。おっ、メリーがこちらへ来たぞ」
そんな折、メリットがこちらに向かってきた。
「メリーってなに?」メリットは怪訝な面持ちになる。
「あだ名だよ。私とオマエは親友だろ? 爪弾き者と傾奇者。これで親友じゃない、ってのはウソだ」
「意味分かんない」
「で? 学校側に口止めはできたのかい?」
「済んだ。実績を積んでおくのは大事」
「実績? なんの実績だい」
「そこの緑髪がいるうちは言わない。どこからチクられるか分かんないから。それに、絶壁さんは口軽そうだし」
メントは、メリットの厭味ったらしい言葉に、思わず声を裏返しながら怒鳴る。
「だ、だ、だ、誰が絶壁だよ!! オマエだって絶壁なくせに!!」
「……問題の本質はそこじゃないだろ、メント」
ルーシは冷静にメントをたしなめる? のだった。




