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「え、あ、え? オマエ、マジでクールさんと知り合い……ってか、親子になった? どういうこと?」
「そのままの意味さ。というか、よくメッセージアプリの履歴だけでクールだと分かったな──」
そのとき、ノアは何者かの殺気に似たものを感じた。それは背後にいて、ノアとメントを睨むかのような気配を漂わせている。
そして、ノアが振り返った途端、
低身長の女子がいた。殺気とは裏腹に、目は子どものようにキラキラしている。ここまで表と裏の感情が一致しない人間も珍しい。
髪色は茶髪で短め、整った顔立ち、しかしどこかで似たようなヤツを見た気がする。
「──貴方、お兄様の居場所を知ってるの?」
口調も軽快だ。ノアはやや訝りながらも、
「居場所は分かりませんが、連絡先なら持っています」
と、返事する。
「そう……」少し気落ちしたような表情になった。「でも、元気ならそれが一番だわ。私はキャメル・レイノルズ。貴方のお父様の妹よ」
ずいぶん年齢の離れた兄妹である。クールの年齢はおそらく30歳前後。対して、彼女は学生服を着ているので10代後半といったところだろう。
そんなキャメル・レイノルズに、ノアは向き直す。
「父の妹ということは……キャメルお姉ちゃん? それとも、キャメルさんですか」
「どちらでも良いわ。貴方のお名前は?」
「ノア……、レイノルズです」
隣にいたメントが、ノアとキャメルとの会話に参戦してくる。
「ノア、キャメルはMIH学園の現首席だぞ。20年くらい前のクールさんと同じでな」
「なんだ、知り合い?」
「ああ、まあ。派閥に勧誘されたことがある」
「派閥? 学生が政治家の真似事でもしているのか?」
「そうでもないわよ?」キャメルは淡泊な声で言う。「MIH学園は、力を持たざる者にとっては地獄そのもの。だから連合を組んで、互いに互いを助け合うのよ」
「メントに首輪つけて、誰かをいじめないように仕向けたいと?」
「おい! ヒトを猛獣みたいに呼ぶなよ!」
「間違っちゃいないだろ。メリットや私に噛みつくあたり、喧嘩大好きなのは確定だし」
「メリット? あの子、いま大丈夫なの? 最近学校来てなかったから」
「いま学校にいますよ。アイツはちょっと親御さんと揉めているから、学園側に口止めを頼みに行っています」
「そう。安心したわ」
されども、いまだキャメルの殺気めいたオーラは消えない。
ノアはますます怪訝な顔になりながら、
「なあ、キャメルお姉ちゃん。父となにか問題でも?」
それを訊いた瞬間、メントの顔色が変わった。
彼女は大慌てしながら、ノアに忠告するかのごとく声を張り上げる。
「クールさんとキャメルは、もう10年くらい会ってないんだよ! なにかあった、じゃ済まないだろうが!」
「良いのよ、メント。生きていれば、また会えるわ」
(ブラコンなのか? いや、10年も会っていないのなら、すこしくらい会いたいと思うものか)
他人の家庭事情に口出しするつもりはない。とはいえ、ノアとクールはいま、義理の親子だ。そうなると、キャメルとの関係性も無視できない。
なので、ノアはクールへ電話をかけ始めた。
が、全く出る気配がない。仕事中か、寝ているのか。
と、思っていたら、
『どォした? ねみィのに』
切りかけたところで、クールとの電話がつながった。
「妹がいるなんて聞いていなかったよ、お父さん」
『おまッ、なんでそれを?』
「いま、目の前にキャメルお姉ちゃんがいる。すこし話しなよ。どんな理由なのか、いや、あらかた予想はつくけど、こんなに兄を慕っているヒトを放置するのは可哀想だし」
『……分かったよ、キャメルに代われ』
「うん」
ノアはスマートフォンをキャメルへ手渡す。キャメルは、明らかに朗らかな表情に移り変わる。




