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お淑やかさの〝お〟の字もない乙女たちは、ノアのやや脅すような口調を聴き、口先を尖らせながらも黙り込む。
「それで良いんだ。しかしモテる方法か。黙っていても、女なんて絶えなかったしなあ」
「え、ノイちゃんって同性愛者なの?」
(ああ、この見た目だと、女が幼女になっちまったと思われているのか)
「まあ、両性愛に近いな。多文化な時代に生まれたもので」
「そ、そうなんだ」
パーラの表情が曇り、同時にメントが咳払いする。
「ごほん。つか、ノアはメイド・イン・ヘブン学園へ入るつもりなの?」
「そうだな。この見た目じゃ、仕事なんてさせてくれないだろうし」
「もしかして、飛び級で?」
「ああ」
「だったら、もう入学手続きしないと間に合わないぞ? 後期入学の手続き、確かきょうまでだから」
「マジか。どこになに出せば良い?」
「早いのは、MIH学園行って願書出すことだろな」
「よし、君らは全員MIH学園の生徒なんだよな? だったら私に着いてきてくれないか?」
三者三様の反応を見せてくれた。
「良いよ~」
「やることねえし、行くか」
「面倒くさっ」
パーラは快諾、メントは妥協、メリットは面倒臭がる。まあ読めていた話だ。
「反対意見はないな。んじゃ、行きますか」
先ほどカツアゲしたカネがまだ残っている。ノアは家の前にタクシーを呼ぶのだった。
*
どこか清々しい暑さの中、ノアたちは宮殿みたいな学校、通称『MIH学園』へたどり着く。面積は巨大そのもので、歩いて移動するのが愚かしく感じるほどだ。
「こりゃ、生徒からカネむしり取っているな」
「そりゃそうだ。入学金だけで5万メニーだぞ?」
「なあ、メニーとアメリカ合衆国ドルとのレートは?」
「1メニーがそのまんま1ドルだったはず」
そんな会話をしつつ、ノアとメントは広大な敷地を歩いていく。
メリットは学校側に口止めを頼みに行った。自我と人格を奪われる聖女化計画は、まだ打破できていないからだ。
パーラはオタク友だちとゲームする予定があったらしい。ならばなぜ、きょうノアと遊ぼうと思ったのか。まあ思いつきで行動するタイプの人間なのだろう、と気にすることもない。
「なあ、メント」
「なんだよ」
「パーラは同性愛者なのか?」
「…………さあ、あたしも知らんよ」
「嘘が下手だな。こういうときは適当に返事するんだよ。目ェ合わせることもない」ノアは途端に目をそらしたメントへ忠告する。「まあ、友だち思いなのは良いことだな。ここであっさりアイツのプライバシーを口走るヤツだったら、またビリビリ棒でお仕置きしてやろうって思っていたよ」
ノアは人差し指と中指をクロスさせ、ビリビリ、と電流を流す。
「……どこでそう思ったんだよ?」
「先ほどの会話で確信した。両性愛者は、知らず知らずのうちに同性愛者を裏切るからな。人生倍楽しいのか、二分の一しか楽しめていないのか。まあ、どちらでも良い。とにかく、アイツは私のことが好きらしい」
「はあ?」
「ああ、オマエには言っていなかったか。私は超能力者なんだ。簡単な人間の心理状態が分かるんだよ」
「超能力?」
「前世で私が背負ったカルマだよ。さて、話を詰めようか」
そんな中、メントが立ち止まる。ノアとの会話に疑念を抱いたのか。
「どうした?」
「いや、保護者必要じゃね? 入学金とか授業料払ってくれるヒトが」
そういうわけではないらしい。
「ああ、それか」
ノアはクール・レイノルズとのメッセージ履歴を見せる。
『──というわけでMIH学園に入ることにした。きょうから私たちは親子だ』
『ついにおれもヒトの親か。カネのことは任せておけ』
『恩に着る』
『ああ、しっかり学べ』
という文面だった。メントは口をあんぐり開ける。




