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「楽しいから、暴力に溺れていく。自分が負ける可能性だって完全には否定できないのに、それでも暴れることでしか自分を発散できない。そんなところじゃない?」
それが暴力主義者である、ノアという少女の前世だったのだろう。
*
一行はクール・レイノルズの用意した隠れ家へ着き、マンションへ入っていく。
「すげえ! お金持ちしか住んでなさそう!!」
パーラの感想通り、金持ちの住処としか思えない場所だった。部屋は無駄に5部屋あり、マンションなのに二階建てで、リビングには100インチのテレビと鷲の銅像が置かれている始末。
転生して2日目で手にして良い家なのかは疑問だが、ひとまずノアはメントを本革ソファーに寝かせる。
「さて、やることがなくなってしまった」
ノアは手を広げ、すこしばかり反省する。余計な喧嘩は買うものでないと。
「ゲームでもしようよ! ほら、ゲーム機ついてるよ?」
「ソフトはあるのか?」
「FPSがたくさんある! 協力型と対戦型、どっちが良い?」
「あまりゲームしたことないからな。協力型で行こうか」
ノアとパーラはソファーに座り、コントローラーを手に持つ。パラドックスというバトルロワイヤル型FPSをやるつもりらしい。
「あ、これ3人でできるよ! メリットちゃんもどう?」
「アンタらに足引っ張られそうで、嫌なんだけど」
「なんだ? やったことあるみたいな口振りだな」
「ランク1800になるくらいまではやった」
「えーっ! 総プレイ時間どれくらい?」
「さあ」
「無愛想なヤツだなぁ……。まあ良いや。なら、私たちを勝たせてくれよ」
「他にやることないし、キャリーするよ」
*
「飽きた」
「それな! 2時間もやっていれば飽きるよね!」
「アンタら、飽き性過ぎ……」
メリットは呆れ気味に言い放つ。ノアに関しては元々ゲームが好きではないから、という理由で納得できるが、オタサーの姫ことパーラが2時間で飽きてどうする。
「……、ん? 彼くんは?」
そして、寝ぼけたメントが目を覚ます。よほど甘美な夢を見ていたのか、顔が放蕩としている。ずいぶん間抜け面だ。
「おお、目覚めたか」
「だから、あたしにも優しくしてくれる彼くんは?」
「こちらの話を聞けよ。多分それは夢だ」
「嘘だ! ついにあたしにも彼氏ができた! それ以外認めねぇ!」
「なあ、パーラ。コイツの脳内はピンク色なのか?」
「んー、まあ……彼くんがほしいとは良く言ってるね」
「しゃーない」
昔の家電を直すかのように、ノアはチョップをメントの頭にくらわせる。ピヨピヨしていたメントも、ようやくこれが現実だと気がついたらしい。
「なんだよ、パーラ。ヒトを憐れむような目で見やがって……」
「いや、メントちゃん。男の子の前だといつもチキるじゃん。それなのに彼氏作ろうなんて……無理だよ」
「ち、チキってなんかないぞ! ただ、どういう会話をすれば良いのか分かんないだけで──」
「メント、彼氏がほしいのか?」
寝惚けから目覚めたメントは、ノアの顔を見た途端猫みたいに跳ねた。それは猫の獣娘であるパーラの専売特許では? と思いつつ、その幼女は半笑いを浮かべる。
「だったら、簡単に口説ける方法を教えてやるよ」
「な、なんだ?」
「まずは相手の目を見ること。次に猫をかぶる。最後にヒップサイズが強調されるパンツしか履かない。まあ、これでひとりかふたりくらいは好みの男子がヒットするさ」
「それができたら苦労しないぞ!?」
「最後のはできるだろ? スタイル良いんだから、それを活かさない手はないよ」
それを訊いていたメリットは、鼻でフッと笑い、
「絶壁だけどね」
と煽るような言葉を口走る。
「それはオマエもいっしょだろ、根暗!」
「アンタは気にしてる。私は気にしてない。それだけで勝ってると思うけど?」
「ンだと!?」
「落ち着けよ。先ほどのリプレイになるぞ? 今度はメリットも」




