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『ノイちゃん、着いたよ!』
時刻はまだ9時30分にもなっていない。よほどやることがないのか、それともそんなにノアと会いたかったのか。
まあどちらにせよ、待たせるのも申し訳ない。ノアは、
『分かった。数分待っていてくれ。すぐ行く』
と返事し、メリットに向き直す。
「愉快な獣娘がもう来た。もう腹いっぱい?」
「まあ」
「なら行くぞ。サプライズちゃん」
「面倒臭い……」
「遊ぶだけなのに、面倒なことあるか?」
「アンタといると、なんか面倒事に巻きこまれそうな気がする」
「でも、またクールみたいなヤツに襲われたら自衛できないだろ?」
「そうだけど」
「清々しいな……。ま、友だちは大切にしないとな」
*
そういえば、きのうクールが自身の所有するマンションを貸してくれるとか言っていた。ノアは道中、クールへ連絡をとる。
『私の隠れ家は決まったのか?』
が、既読になる気配がない。エレベーターで下に降りた頃、仕方なくノアはスマートフォンをしまう。
「ねえ、クソガキ」
「だから、クソガキとか言うなよ」
「嫌いなヤツがいた。帰って良い?」
「嫌いなヤツ? パーラのことか?」
「いや、そこの緑髪」
パーラの隣には、涼しげな緑色の短髪の少女がいた。身体は筋肉質で、目は三白眼気味。レギンスはヒップサイズの大きさを強調している。上はへそ出しタンクトップだけ。ただこちらは絶壁を強調しきっていた。まるでこれから運動するかのような格好である。
「なにか因縁でも?」
「いきなりタイマン張れって言われて、私が勝ったら泣き出して……、はっきり言って面倒臭い」
「そりゃ問題児だな。よし、行くか」
ノアはメリットの手を引っ張り、「ちょ、離してよ!」と喚く彼女を気にすることなく、パーラたちのもとへ歩み寄っていく。
「やあ」
白いパーカーにスキニーパンツのパーラと、最前の緑髪少女。ノアはきのうと服装が変わっておらず(備え付けの洗濯機で洗濯したが)、メリットは黒いTシャツに黒いジーンズという地味な格好だ。
「……、なんでオマエがここに」
「それはこっちのセリフ」
「あたしはパーラに誘われたから来ただけだ」
「私はこのクソガキの面倒見るために来ただけ」
すでに、睨み合っている。というか、緑髪がメリットに少しずつ近づいている。ノアは溜め息をつき、
「喧嘩するなよ。パーラが可哀想だ」
と、気まずそうな表情を醸し出すパーラを気遣う。
「チッ、良いか? この前のタイマンは、たまたまオマエが勝っただけなんだからな!」
「ならもう一度リプレイする? いや、馬鹿は死ななきゃ分かんないか」
ノアは首を横に振る。ここまで喧嘩腰の少女たちも珍しい。不良でもここまで露骨ではない。
「落ち着けっての。パーラ、この子の名前は?」
「あ、えっとね、メントちゃんだよ!」
ノアは割と高身長なメントを見上げる。「メント、なんでメリットに挑んだんだ? 私はコイツの実力なんて知らんが、喧嘩したらなにか得られるのか?」
「あぁ? ガキは黙ってろよ。これはあたしとコイツの話なんだよ」
「ああ、そう……」
仲が悪いのはどうでも良いが、舐めた口を利かれるのはやはり良い気分にはなれない。ノアは近くの裏路地を指差し、
「そんなに白黒つけたいなら、私が見届けてやるからそこで殴り合え」
「あぁ? オマエ、何様だよ?」
「クール・レイノルズと引き分けたノイちゃん様だよ」
今度はノアとメントが睨み合う形になる。といっても、身長150センチ程度の幼女と170センチは越えているだろう少女が睨み合っているのは、傍から見れば奇妙かもしれない。
「クールさんと引き分けた? どういう意味だよ」
「そのままの意味だよ。ちょいと野暮用でアイツと闘ったんだ。なんなら、電話して確認するか?」




