オルゴール付き懐中時計で大晦日に祓われた悪霊
挿絵の画像を作成する際には、「AIイラストくん」と「Gemini AI」を使用させて頂きました。
大型バイクの爆音が後ろから近づいてくる。
振り向いて確認したら、首がなかった。
数年前に事故死した走り屋の霊が、成仏出来ずに彷徨っている。
その首無しライダーに撥ねられたら、物理的ダメージは無くても不幸な目に遭う。
ネットで見た都市伝説は本当だった。
「獲物は私…だろうね。」
やがてバイクの爆音が間近に迫り、ヘッドライトの光が私の視界一杯に広がったんだ。
どうやら自分の不幸を他人になすりつけたいらしいね。
「!?」
だが、声にならない悲鳴を上げたのは首無しライダーの方だった。
無理もなかろう。
私の身体と接触する直前、見えない壁に車体ごと跳ね返されたんだから。
「生憎だね、さっきの年末詣で交通安全の御守りを神社で頂いたんだ。君も安全運転を心掛けていたら良かったのにね。」
そう皮肉を言いながら、私こと鳳飛鳥はポケットから目当ての品を取り出したんだ。
「今日は大晦日だから、それに相応しい遣り方で君を楽にしてあげる。」
金色の懐中時計を印籠みたいに突き出し、オルゴールのスイッチを入れる。
すると路面に倒れた首無しライダーの身体がビクッと震えて、思念の声が私の脳に直接響いたんだ。
「こ、この曲は…!?」
「ベートーヴェンの交響曲第9番、またの名を『歓喜の歌』だよ。無軌道な暴走行為に耽らずクラシック音楽でも楽しんでいたら、そんな姿にならずに済んだのに。」
同じく思念波で答えながら、私は九字を切り霊符を投げつけたの。
すると次の瞬間、バイクもライダーも急速に朽ちていったんだ。
「ああ、心が軽い…これが成仏という事か…」
「現世の未練から解放されて昇天する喜びを、君も享受すると良いよ。」
そうして青白い魂の輝きが冬の夜空に消えていくのを見届け、私は帰路についたんだ。
寒空で体温の冷えた身体には、お母さんの作った年越し蕎麦と電気こたつの温もりは殊更に染みたよ。
そうして身も心も暖まった私は、除夜の鐘を聞きながら自室で事後処理を行ったの。
「さっきの首無しライダーで百八人目、動物霊も入れたらもう少し増えるか…来年はもっと沢山の死霊を成仏させ、オカルティストとして一皮むけたいなぁ。」
一年間の成果をスマホで振り返りつつ、来年の抱負を定める私。
だけど、そう悠長にしてもいられないんだよね。
「残る漢字ドリルも、早く片付けないと。お母さん怖いからなぁ…」
そうして冬休みの宿題を前にゲンナリしながら、私は深い溜め息をついたんだ。
嗚呼、小学生は辛いよ…




