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精霊の森は今日もやかましい。  作者: 森の民
本編
13/30

部屋とは何をもって部屋というのか2

ラインハルトの部屋


「とりあえずここから一番近いハルト兄様のお部屋から入るのです!」

「普通に部屋だからな?」

「ぼくのお部屋だって普通ですよ!ええい、ノックは無視なのです開けますよ!!」

「リヒトクローネ様。それはいけません。部屋に誰かがいた場合にご迷惑でしょう?それと一声…」

「部屋の主ならぼくの後ろですよ!えい!」


リィが扉を開けると青いカーテンに茶色のフローリングに薄いグレーの壁紙。仕事用の地味な机には何の変哲もないガラスの花瓶にシンプルな野の花。天蓋こそついているものの飾りは無い茶色のベッドに白に濃いグレーのストライプの布団が普通に敷いてある。天蓋用のカーテンはシンプルなグレーのカーテンが1枚だけ。茶色の本棚は家具屋で売っている簡易的な組み立て式のものだ。そして客人用のテーブルとグレーのソファが無造作に置かれていた。


「くっそつまんねー部屋なのです…。」

「リヒトクローネ様。そのような言葉を使ってはいけません。」

「わかっていますがもう感想はそれなのです。ぼくのお部屋を研究室扱いしてくる割には何も変わったものは無いし、特別におしゃれでもなければ本当にただの普通のお部屋なのです。平凡の極みです。」

「いやそこまで言うか!?」

「じゃあこのお部屋の特徴は何なのですか?」

「特徴…あ、あれかな。ほら、本棚の隣に小さいチェストがあるだろ?茶色のやつ。その上に…」

「何なのです?この統一されてないごちゃごちゃしたのは。」

「ごちゃごちゃしてて悪かったな!みんなからもらった土産だよ!」


チェストの上には貝殻のオルゴールやら忍者刀のレプリカやら美少女のフィギュアやらが乗っている。ラインハルトの好みそうなものが一切ないあたり、明らかに『貰ったものをただ並べてみました』感がすごかった。


「放置しておくのも心苦しくてな、あと眺めないのも申し訳ないから、ほら、これ。」


そういってラインハルトはチェストの上にあった木製の変わった形の人形を見せてきた。


「それは確か…こけし…だったかな?」

「こいつを寝た時に目が合うように置いてる。」

「ぼくにはこけしと見つめ合って寝る趣味は無いのですよ!こけしの首をもぎますよ!?」

「やめろよ!フィンが怒るだろ!?」

「フィン…私にはティーセットだったのに…。なぜハルトにはこけし…。」

「謎だよな…冷静に考えると…。というか、アデルにはティーセットだったのか?」

「ああ、プラスチック製のおもちゃだがとても良いもので…」

「何でおもちゃのティーセットなのです?」

「それは私の部屋にいる家族のためですよ。」

「家族?お前の家族なら確か実家だろ?」

「ちょっと特別なんだ。」


そう言ってアデルは嬉しそうに笑った。


アデルの部屋


「さて次はハルト兄様のお部屋から近いアデルのお部屋なのです!おーぷんごまふりかけ!!お邪魔します!!」

「だからノックはしような。」

「おおー…暖かい色なのです。」


リィが扉を開けると淡いオレンジのカーテンにベージュのフローリング。床には薄茶色のマット。壁紙は女性物ではないものの薄桃色の愛らしい花柄。邪魔にならない程度の飾りがついている仕事用の机には洒落たガラスの花瓶に活けられた百合の花。茶色の天蓋付きベッドにはやはり邪魔にならない程度の飾りがついていて、ささやかな白のレースがついたクリーム色の布団が敷いてある。天蓋用のカーテンはシンプルなレースのカーテンの上に薄茶色のカーテンを重ね掛けしている。茶色の本棚等は品のいい年代物の木製だ。客人用のソファなどはないが部屋としてのレベルは高い方である。

それでもコーデが前より可愛めなのが気になるな、とラインハルトが部屋の隅へ目をやると…


「…いっ!?」

「はうっ!?」


ラインハルトとリィの目に飛び込んできたのは巨大なうさぎのぬいぐるみ達だった。しかも部屋の半分を陣取っている彼らの居住スペースでくつろいでいる。いや、くつろいでいるように置かれているだけだが。


「アデル、このうさぎさん達は…」

「ああ、可愛いでしょう?仕事先で見かけてしまって思わず…せっかくなので家族でお迎えしました。」

「…なあ、ちょっと前に電光掲示板の騒ぎがあった時にお前うさぎの姿のままだったろ。あれ、わざとか?」

「いや、あれは普通に忘れていただけなんだ。ただ少し楽しんでしまっていたのは否定できないな。妃殿下もお気に召していらっしゃったようだし。…それも彼らがここにいる理由か。」

「ここにいる理由?」

「実家より近かったからこの部屋に彼らを迎えたんだが…仕事をする私室では不味いかと思って実家に連れて帰ろうと思い直したんだ。その時だったかな。妃殿下がこの部屋に仕事を持ってきてくださって…それからお父さんを見て、ふらふらと中に入って抱っこしてベッドでくつろぎだしたんだよ。相当お疲れの様子だったから止めるのも忍びなくてね…。その後からかな。たまにいらしてはお父さんを抱きしめてベッドにダイブなされる。妃殿下と2人きりになるわけにはいかないから、私は部屋を出るけどね。」

「ぼくも抱きしめるのです!」

「お父さんはリヒトクローネ様より少し大きいので気を付けてくださいね?」

「お父さんて名前なのかあのうさぎ…」

「ああ、向かいのエプロンがお母さんで、真ん中の2人のうちズボンがお兄ちゃん、スカートがミミだ。」

「ミミちゃんご一家お前の部屋を侵食してるんだけど!?」

「だめ…だろうか?」

「いや…まあ、お前がいいのなら、うん…」


ラインハルトは完璧超人と言われるあのアデルがこんなものを私室に置いていると皆にバレたらどうなるかな、と考えたがバレたところでアデルの好感度が上がるだけなので考えるのをやめた。

とりあえずアデルの部屋のコーデが何となしに可愛いのはおそらくミミちゃん一家のためだと思われる。


「このティーセットがもらったものなのですね。とても可愛いです!ぼくもベッドにダイブしたい気分ですが次のお部屋に行きましょう。いてくださるといいのですが…」

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