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実力ある異世界人を目指して〜憧れの悪役は実力隠してやりたい放題  作者: グレープファンタジーの朝井
7章 阻止任務

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210/210

210.想いには勝てない

 忙しすぎて執筆する時間が足りないです。8章はもう少し時間がかかりそうです。申し訳ないです。

 オリジンが強烈な光を放った。


「オリジンが……」


 ソリスは目を細めてゆっくりと立ち上がる。異様な雰囲気を感じとるや否や一番に観戦席から飛び出して行ってしまった。


「オリジンの輝きが増した。加えて余とセリアに加えて気配が増えた。何だこの強大な気配は……」


 砂煙に紛れて映る影。小さい姿のようにも見えるが、モヤがその姿を大きく見せる。


「セリアちゃんが負けるのは想定内だけど……あれじゃあ回収を装って近づくことができない。何なのあれ」


 エルフルは救援を装ってセリアを回収しようとしていたみたいだが足が止まる。


 砂煙が落ち着くとセリアこそ気絶しているものの代わりに小さな影が立ち塞がっている。


「な、なんだこりゃ〜! 聖人セリアは戦闘不能のジャッチが降ろされるが、オリジンが転送しない! これは試合続行ということでしょうか。まさかの乱入者。準決勝を前に乱入者とは盛り上がるところではありますが、聖人アエリナは大丈夫でしょうか」


 オリジンは沈黙を貫く。本来試合が終われば試験者をステージ外にテレポートさせるはずが行われない。


「余に乱入者を倒せと……? いや、あれは乱入者じゃない」


 僅かにだがセリアの魔力を吸い取りながら影は形を成している。


「オリジンが沈黙している理由がわかったぞ。ここからが本番というわけだな、セリア」


 セリアはゆっくりと立ち上がり頭の出血を抑える。クラクラしていた視界を取り戻すと、彼女は影を見て紅潮する。


「レイン! 来てくれたんだね」


 そう言うと彼女は陰に抱きつく。


「みんなと違ってレインは裏切らない。いつも私を守ってくれるもんね。離れたくない、離したくない」


 影はそっとセリアの頭を撫でると引き剥がした。


「そうだよね、周りが安全にならないとイチャイチャできないもんね」


 影が頷いたように見えた。するとセリアは少し後ろに下がり上を指す。


「この装置が私たちの自由を阻止してるよ。それとね、えへへ…、私を害する人達全員殺しちゃって」


 影はロングソードを生成し地面に突き刺した。


「ありがとうレイン! じゃあ、よろしくね。私は守られているから」


 その瞬間影はロングソードを背面に斬り裂くとオリジンを真っ二つにした。


 ビリビリと魔力とエネルギーが漏れ出て、オリジンは粉々に砕け散った。それと同時に周囲を覆っていた結界もなくなり、ステージも崩れた。


「ROOOOOO!!」


 影が叫ぶ。


 アエリナの心臓の鼓動が遅れて二度と打つと魔力と詠唱による魔法強化が途切れた。


「なっ……余の詠唱がっ!?」


「GOOOOOOO!!」


 機械音のような震える声。


 意識しない内にアエリナは影の接近を許してしまう。ロングソードの間合いに入ってしまったアエリナは防御が遅れた。魔力を込める暇がなかった。


「ぐぬっ……!?」


 ベギンとアエリナの持つグローブが砕け、そのまま体に痛々しい傷を付けられる。


 鮮血が舞うとアエリナはものすごい速度でステージ外の観客席の方まで飛んでいく。


「レイン……暴力的でたくましいよぉ」


 そう言いながら影の後ろから抱きつく。


「1人は死んじゃったね。でもねレイン。まだ私の敵がいっぱいいるんだよ。そこで棒立ちのシスターたち。私のお父さんを殺したあの女……殺してよ」


 影の目が赤く光る。セリアの感情によって力が増しているようだ。影はステージを砕いてエルフルの体に刃を振るう。


 彼女は舌打ちしながらも高位の結界で自分の周りを覆う。しかし突然誰かの背中が見えたと思えば、影のロングソードを受け止めてるではないか。


「大丈夫ですか!」


 ソリスが民の危険を感じ取りその剣を受け止めていた。


「ぐっ……なんて力。抑えきれないっ」


 ソリスですら押し負ける力。しかし経験の差が物を言わせる。ソリスはロングソードが自身の身体より外側に滑るよう剣を傾けて影の体勢を崩す。


 力が分散し、ソリスは影を斬り飛ばした。


 飛んでいく影はセリアの前で着地し再び構え直した。


「強力な魔力と力……なぜセリアには攻撃しない」


 ソリスはあれがセリアの生み出したものだとは考えていないようだ。


「団長も私を傷付ける……おかしいよ、私はもう必要なくなったの?」


 守るべき刃をセリアに向けたことで彼女が逆情するように震える。


「やっぱりみんなは敵。てきてきてき! 私の味方はレインだけ! みんな死んじゃえ!」


 それに応えるように影はソリスを敵と認識し、華麗な動きでソリスを魅了する。


「なんて動き……!? 軌道が読めない……!」


 シールドが間に合わなければ彼女は逃げる隙もなかっただろう。シールドが時間を稼いだがそれもコンマ何秒か。


 簡単に砕かれてしまう。


「セリア! この影を動かしているのはあなたですか!」


 彼女は対話を試みる。この強大な力をこのまま留めておくわけにもいかなかったからだ。もし影の制御ができるならと考えたが……。


「レインを殺すの? だめ……そんなことをするなら私があなたをここで──」


 セリアは剣を捨てて魔法陣を展開する。


「命を奪うから」


「まずい……!」


 ソリスは術式を読み取り遠くで待機している聖騎士たちに合図を送った。


 生徒たちの避難だ。オリジンはセリアによって完全に壊され、結界が機能しない。彼女の放つ魔法の規模がここら一帯を消し飛ばすつもりなら生徒全員が命を奪われる。


 ソリスはそんなことをさせまいと同時にセリアを殺戮者としないように剣を強く握る。


「やはり薬での制御が効いてないようでしたね」


 ソリスはエルフルを見てそう呟く。しかしそんなエルフルの表情はなにかに絶望しているようで震えていた。


「ありえない……です。そんな、そんなはずはっ。器として今まで制御してきたのに……今になってその器が壊れてしまいました」


 おまけに女神を降ろすつもりだった彼女の潜在する力も完全に消え去っていた。


 セリアを女神に変える計画はここで失敗してしまったのだ。


 思えば魔王から拉致された時からおかしかった。


「まさかっ……あの魔王!」


 エルフルは魔王の意図に気が付き苦悶で顔を歪める。


「解除されてたのは薬の効果じゃなく、私の洗脳! ふざけるな……ふざけるな!」


 もうセリアに女神を降ろすことは叶わない。それどころかあの時の記憶を全て思い出して、今エルフルを完全な敵として見ているだろう。


「ニュールリストになんて言われるのか……」


 エルフルはまずいと歯を震わせながらその場から去っていく。


「この範囲にいる人たちが全員今の私の人質……それを考えると相当厳しい戦いになりそうです」


 止めるにはセリアを気絶させる他ないようだ。しかしそれを守る謎の影。彼はあまりにも危険なようでソリスはセイントイータ並の警戒を取る。


「聖女の加護で対応できるかどうか……」


 一定以上の範囲に近づかなければ影は襲ってこないようだ。しかし作戦を練ってる間にもセリアが術を完成してしまえば学園もろとも周辺の家々はなくなってしまうだろう。


「術式からすると文明を消し飛ばす隕石(メテオ・ストライク)。そんな禁忌魔法をどこで覚えたの、セリア!」


 演算に時間が掛かっているようだが持ってあと10分だろう。その間に片付けるようだ。


「覚悟を決めて、ソリス・アグライア。ここで決めきれないようじゃセイントイータには勝てない!」


 ソリスは影の間合いに入る。


 それを感知した影はロングソードを魔力で燃やして広範囲に薙ぎ払った。


「この広域全てが彼の間合い……」


 動きが大きく軌道が読みやすいが連発されると避けられる隙も時間も足りなくなる。


「そこっ!」


 攻撃をいなし、華麗な動きでソリスも自身の間合いに彼を捉えた。


「これほどの長物なら……」


 すると影はロングソードをソリスと同じ刀身に合わせて短くなる。


「うそっ……!?」


「GOOOOOOO……」


 呆気にとられている内にソリスは自身の間合いを奪われる。またあのロングソードの弾幕をかいくぐらなければならない。


 しかし影は自身の背面に32の魔法陣を浮かべて光線魔法を繰り出した。


「──追尾型焦光(オートレーザー)


 32の魔法陣から順番に放たれる人の胴ほどの大きさの光線。休む暇がない。


「通常2組セットで打つ魔法を32組操るなんて……」


 ソリスは距離を詰めるどころか距離を取らされている。


「GI……ゲンゴノウリョク奪取……標的ハ……ソリス・アグライア」


 影は掠れた声で話し始める。


「コレヨリ……ボクは……彼女を守るために全てを出し切る」


「なに……」


 影の目が煌めくとステージの瓦礫を宙に浮かせ始めた。そして空中に鋼糸が張り巡らされる。


「──限界値突破(オーバードライブ)攻撃時波動付与(セカンドインパクト)防衛魔力解放(カウンター)超再生(セリア)


 影が自強化を行う。


 攻撃をさらに凶悪にし、攻撃を受けるたびにカウンターとして魔力の波を周囲に広げる。


攻撃時波動付与(セカンドインパクト)は攻撃時に一度強烈な魔力裂波を追加で発生させるサポート魔法のようだ。


 しかしデメリットとして使用者にもダメージが加わるが、防衛魔力解放(カウンター)でダメージを軽減しつつさらに反撃を繰り出すため実質3回攻撃のインチキ戦法だ。


 受けたダメージは超再生で再生し全てのデメリットを補う。


「フハハハハハ!」


 影は高らかに笑い自身を傷付けると凄まじい衝撃波がステージを抉り飛ばす。


「──八撃蜂舞(ハチゲキホウマイ)


「──聖女の加護!」


 影は鋼糸を蹴りまるでスピアのように一点突きを放った。ソリスのシールドを薄氷のように砕き、防御姿勢を崩す。彼女の剣に当たるとインチキ戦法が発動しソリスは強烈な波動と裂波をもろに受ける。それを八撃も。


「があっ!?」


 聖女の加護ではカバーしきれないほどのダメージ量。ソリスは常時再生が追いついていないのか、鼻や口、目から出血する。


 影は波動の反動でもう一度鋼糸に触れる。


「──四脚豪烈(シキャクゴウレツ)


 足払い、下段廻し蹴り、中段廻し蹴り、上段廻し蹴りを高速で行って、魔力の籠もった足で踵落としをする。


 なおこれにも波動、裂波が追加で加わる。


 ステージは衝撃により粉砕しており、砂のようにサラサラとした足場になる。


 直撃を何度も受けているソリスが耐えられるはずもなく、彼女は白目を剥いてその場に膝をついて上を見上げる。


「軟弱な聖女。ボクが殺すまでもない。セリアの魔法が下ればその体、燃え尽きることだろう。信頼するべき者に殺されることを悔いるといい」


 影はソリスに興味が失せたのかゆっくりと歩きセリアのもとに戻る。


 その様子を遠くで見ていたセイントイータは深刻な顔をして見ていた。


「これだけ離れても骨に響く……あの小娘を回収したいのに近づけない。それに加護に頼ってない脳筋スタイル……相性が悪い」


 そしてそこへ近づくエルフル。


「イータちゃん……セリアの回収は無しになりました」


 かなりキレている様子のエルフル。この迫力にはセイントイータも怯えてしまうようだ。


「ひっ……」


「私が失敗したんですよ。これから彼に何か言われると考えると面倒です」


 セイントイータは彼女の言葉を聞くと頭に血が登ったようで胸ぐらを掴む。


「どうすんだよ! 私のフルリエル様はどうなんだよ! 失敗したじゃ済まされねーぞこのアバズレ!」


 流石のエルフルは何も言い返せないようで視線を落とした。


「なんとか言えよ! 私の努力はどうなるんだよ!」


「……わかりません」


「っっっのやろう!」


 彼女はエルフルを殴り飛ばす。


「あれだけ啖呵を切ってたのにか!? もう知らねぇ。ニュールリストに会わせろ」


「……申し訳ありません、難しいです」


 セイントイータは呆れて彼女を殺害しようかとも考えたが力の差を理解して諦めた。


「あの影はどうするんだよぉ? 使えねぇ聖女はくたばった。もう直にここも吹き飛ばされるぞ」


「セリア……セリアちゃんだけは回収したいです」


「使い物にならねぇやつ回収してどうすんだよ!」


 するとエルフルはニンマリと笑顔になった。


「まだセリアちゃんの絶望する顔を見てないですから。ぱぱが死んだことをもう一度知ればどんなに壊れてくれるのか……。本当はその事実を知らせてから女神を重すつもりだったんですが……」


 彼女は体を震わせてよだれを垂らす。


「残念なのでおもちゃとして扱うことにしました」


「お前、自分の失態を忘れてねぇよな」


「ニュールリストには用済みになったセリアちゃんを渡せば許してくれそうなのでやっぱりいいです。私は何の責任も負いたくないですもん」


 エルフルはあざとい表情をつくり彼女に披露する。


「気色悪くてイカれたやつだぜ。だけど私も未来は変わってないみたいだから別にいいけどよぉ……」


 セイントイータは福音書を閉じてため息をつく。


「期間が延長されるって考えたら萎えるぜクソが」


「すみませんねー」


「メスガキがっ。私は逃げる。お前はここに残って消えてくれればいいんだけどよぉ」


「嫌です。どのみちセリアちゃんの回収はその後だからまた戻ってきてね?」


 セイントイータは舌打ちした後に無視して逃げる。


 会場は静かになった。あれだけ盛り上がっていた試験は今やソリスとセリアのみになった。本来いるべき聖騎士団らは魔法の効力外へと全員逃げてしまった。


 しかしこれで良かったのだ。誰がこの魔法を止められようか。ソリスは敗れ、魔法発動まで時間がない。全員巻き込まれて死ぬぐらいならソリス1人の犠牲で良いのだ。


「オーディエンスはいなくなったみたいだね。いや〜まさかうんこから帰ってきたらこんなことになってるとは思わなかったよ」


 するとステージの脇から1人の男子生徒が現れた。まるでこのタイミングを待っていたと言わんばかりに現れる。


「ふはは……」


 彼は指を鳴らし会場を覆うほどの結界を張った。


「今日は何も衣装持ってきてないから大変だ。みんなには見られたくないしね」


「レイン……」


「その感じだと、僕の解呪が終わったみたいだね。まあ完全に記憶が戻ったかどうかは分からないけど、随分と懐かしい気配になってる」


 レインは剣を取り出して魔力を縫わせた。


「それにその影……あの時も見たけどやっぱりセリアから生まれてたんだ。戦闘スタイルを見るに僕っぽいけど……」


「レイン、あれも邪魔だから殺して」


『わかった……』


 セリアにとっての彼は影の方のようだ。もはや区別がついていない様子にレインは呆れて首を振った。


「昔からバカだけど今も変わらずバカで助かってるよ。まあその命令、僕への言葉として受け取っておくよ!」


 2人のレインがぶつかり合う。


 するとオリジナルの方のレインが衝撃波で遠くへ吹き飛んでしまう。


「1回で3回攻撃……なるほどこれは確かにクソゲーだね」


 追い打ちをかけるように影が衝撃波で攻撃する。


「前にそんなの試したことあったよ。お手軽相手バイバイ戦法。けど技に磨きが掛からないからやめたんだよね。それに原理と魔法操作の技術さえあれば簡単に突破できちゃうからね」


「ん……?」


 影が追撃を行うが2回しか攻撃が発生しない上に3回目の威力が小さく跳ね返ってくる。


「もちろん僕には1回目の攻撃しか通ってないよ」


「どうしたのレイン!?」


 影は思わぬダメージに驚き距離をとる。


「お手軽相手バイバイ戦法にはリフレクターと衝撃吸収に弱いって弱点があってね……。もちろんリフレクターと衝撃吸収は併用できなくて、お互いに反射、吸収限度があるんだけどさ……」


「魔法にはルールがあるのになんで……」


 セリアは焦る。


「なんとか併用できたら、高すぎる威力の攻撃も跳ね返せると思わない?」


 レインはリフレクターと衝撃吸収の両方を同時に扱ってみせた。


「併用できないのは1つの魔力回路に限定している話。だったら魔力回路を2つ用意すればいいだけだよ」


 身体は1つ、回路が2つあるなら1つの身体で併用しているように見えるのだ。


「さて出来損ないの君、小細工無しで本気で僕とぶつかっていこうか」


 身体強化系の類は使っていない。その挑発に影も乗るようだ。


「レイン、そんな奴に負けないで! じゃないと私……頼る人がだれも……」


 レインは鼻で笑い、影はセリアの言葉に反応するように頷いた。


 2人の剣が交わる。


 砂化したステージが2人のぶつかり合いで宙に舞う。


 力の差でレインの方がかなり有利のようだ。影は瞬きしない内に宙へ投げ出された。


『ギギギ……!?』


「幼い頃の僕の筋力か……そりゃあオリジナルには勝てないよねっ!」


 互いに鋼糸を利用し合って高速で打ち合う。踏み込みで浮かぶ瓦礫たちは砕けどんどん足場が減っていく。


「難しいかな? セリアの魔力で生み出された僕の影よ。劣勢を繰り広げるだけが騎士の務めではないだろうに!」


 ──パキャン。


 そう音がすると影の剣が折れてしまう。レインが隙を見て側面から叩き折ったのだ。


「体術の方も見たかったけどそろそろ隕石落ちてきそうだから君に構ってる場合じゃないんだよね。それじゃあ、またね」


 魔力を含んだ掌底に影は形もなく掻き消された。


「レイン!」


 セリアが叫ぶ。


「どうしたの?」


「レ、レイン……私のレインが……。ああっ」


「正気じゃない、か……」


「よくも私のレインを!」


 魔法は完成してしまったようだ。ズシズシと重たい空気が魔力を含んでさらに重くなる。


 すると空から輝く1つの点が現れる。


「まあ流石に時間が足りないよね。ここら一帯どころかザバルタ学園の敷地の周辺がなくなりそうだ」


 レインは術者であるセリアの魔力がほぼないことを確認すると彼女の背後に回って背中を柄で叩く。


「うっ……」


「前から来ると思った? ごめんね」


 セリアはその場で倒れて気絶する。


「ゼプト、カトラ。あとはお願いしていい?」


 するとレインの影から2人が現れる。


「いいよー。あの魔法をとめればいいんだよねー?」


「やったー破壊するー」


「破壊は駄目だよ。破片が飛び散ったら大変なことになるからね」


「じゃあ仕舞うの?」


「ポケットにないないする……」


「そーしてくれたら助かるなー」


 ゼプトの持つポケットの加護。カトラの持つ人形の加護を組み合わせるようだ。


 ポケットの加護は魔法を含む全てを溜め組むことができ、人形の加護は誰かの加護をストックできる加護だ。


 セリアが必死で呼び出したメテオ・ストライクはゼプトの加護で収納され、カトラの人形の加護でストックした。


「大事に至らなくて良かったよ。2人ともお疲れ様」


「主が喜んでくれたー」


「うれしー」


 2人は子供のようにレインの足元にすり寄り嬉しそうにする。


「2人は誰にも見つからないように静かに帰るんだよ」


「主はなにするのー」


「僕は後処理しなきゃいけないんだ。セリアが派手に暴れてくれたからね」


 とは言ってもやることはセリアの回収のみだ。またいつ暴走するかも分からない彼女を放置するわけにもいかないからだ。


「そう言えばマルセはどうなったの? 最近会ってないからどうなってるのか知りたいんだけど」


 セリアを野放しにしている父が気になるレインだったが、カトラが放った言葉に彼は目を細めた。


「レオの調査が正しければ数年前に亡くなってるよ」


「……なるほど」


 聞きたいことは聞けたようでレインはセリアを抱えて歩き出す。


「聖女はどうするの?」


「どうするのー」


「彼女ならまあ……誰かが起こしにくるでしょ。放置でいいと思うよ」


「はーい」


 2人は元気に返事をしてトコトコと走って去っていった。


「嵐のような戦いだったよ。さてさて僕が欲しかったものは〜」


 弾んだ声で彼はオリジンの欠片に近づくと一片を懐にしまった。


「少しぐらいバレないよね」


 その後、レインはセリアを抱いたまま会場出口から姿が見えなくなった。

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