205.この強さをとくと味わえ(遺言)
「おーっと! 聖人ルーアン、危ないところでしたがなんとかザバルタの1人を打ち倒しましたー!」
魔法の打ち合い。相手が僅かに腕前が高く、ルーアンの苦戦が見られた。
「戦闘向けの加護じゃないのが唯一のハンデだねー。聖人最弱の名は伊達じゃないよー」
彼女は既に2回戦っており、もはや体力もここが限界のようだ。次に戦う相手はマリアかバルトになる。
「さてさてお次は目玉の対決。一般生徒でありながらも上位に駆け上がるのはガレオス学園のマリア選手! どうやら剣技と魔法を組み合わせる戦いが得意なようで、可憐な戦いを見せてくれます!」
ステージが生成され両者構える。
「バルト、ここは通さないよ」
「僕もです。ここまで勝ち上がれたのは実力以外にも運があるので。女神の導きに外れぬよう戦い抜きます」
2人ともやる気満々な表情をしており、知人同士手加減無しで戦うようだ。
「それでは試験開始!」
初めに動いたのはマリア。蝶のような流々と惑わす動きにバルトの視線が釣られた。意識した時にはもう危なかった。
「やりますね。この身体の動き、まるでセリア様と戦っているみたいですっ……」
可憐な動きに惑わされつつも彼は剣を防いでみせた。
「流石に防がれるよね。まだ見せたこともない奥の手だったのに」
マリアは平然と嘘をつく。まだまだ隠し玉はごまんと存在する。
「──炎・第五階級魔法」
マリアが隙をついて脇腹に魔法を放つ。
「──中級防御魔法」
しかしバルトも応戦する。
綻んだ隙に彼は距離を置いて構え直す。
「──炎・第四階級魔法プラス、ウィンドカッター。──剣技穿つ千本の針」
炎・第四階級魔法の炎を纏ったウィンドカッター。それが3つほどのバルトの足元を襲う。
剣技での突き技で放たれた斬撃は炎の属性を持ちながら彼の急所へ何度も飛んでくる。
「疑似エンチャントを即席で再現できる辺り、戦い慣れてますね。やっぱりマリアさんたちと協力しててよかったです!」
彼もまた負けてはいない。正確に攻撃の軌道を逸らし、受け流している。攻撃の密度が高く反撃の隙を伺うが彼女の手は休まらない。
「流石はエフィレの側を使えてるだけはあるね。冷静でいて、それで効率的な動き」
「強者と戦い続けて数年、僕だってコツは掴みますよ」
バルトはマリアの剣を大きく逸らし反撃を試みる。
「ただでは受けてくれないですね」
「当たり前だよ。過酷な学園生活を送ってるからね」
「ではレインくんも同じような?」
2人は剣を交わしながら会話を楽しむ。
「そうだよ。初戦敗退した落ちこぼれだけど、どこか強いって信じてるんだよ。何があってもレインだけは毎回無事なんだ」
「今回の未開拓地攻略には彼が必須だと聞きましたが、それが理由なんですね」
「もう二度とあそこには行きたくないけど。負けっぱなしは嫌だから。私が2人を守らなきゃ……」
マリアの攻撃に重みが加わる。
「力が増した……と言うよりも、身体強化でそもそもの火力が上がりましたね」
「──全体最大身体強化! バルトには悪いけど私はここで挫けたくないから」
魔力を溜め込み放つ。先程の省エネのような戦いではなく、魔力を出し惜しみせず豪快な戦い方に切り替えたようだ。
「セリア様ほどではないものの容赦ないですね」
一振りで地面を根こそぎ抉り取るほどの魔力を放出。火力は十分すぎるが、この戦い方では5分と持たない。
「ここで負けるぐらいなら、貯金を気にしてる場合じゃないからね!」
「少なく見積もってもマリアさんの魔力では4分が限界。しかしこの効果力ではシールド魔法では完全には防げないですね。ならばこちらも魔力の消費を気にしている場合ではないですね」
バルトは自身の周囲にシールドを展開させる。
「──全体防御壁プラス魔法反転プラス風・上級第三階級魔法」
小規模のトルネードを3つ生成させてマリアを斬り刻む。
「遠距離攻撃を対策して、私を遠距離で倒そうとする……確かに高火力の近距離を封殺するには必要。だけどねっ!」
──一閃。
金属音がステージに響くと斬撃がバルトのシールドを叩き割った。
「魔力ではない普通の斬撃……これは魔法反転では返せませんか。通常状態でこんなものを連発するセリア様は化物ですね」
しかし相手は時間制限付きのセリアと考えればバルトにも勝機はある。
「僕がセリア様相手に対策しようと温存しておいた奥の手を使わざる得ないなんて、やはりマリアさんは凄いです……」
「並のシールド魔法じゃ攻撃は防げないよ。そのまま押し切って、次の試合に繋ぐ!」
トルネードから抜け出し、素早い攻撃でバルトの防御を崩す。二つの太刀でバルトの手から剣が溢れた。
「っ……!」
バルトはまさかの状況に驚く。トルネードを抜けてから1秒も経ってない。見えたのは自分の剣が宙を舞う姿のみ。
「はや……過ぎる……」
マリアは剣を収め、右拳を握りしめる。
バルトの身体が吹き飛んだ。ものすごい速度と力に彼は奥の手を出す時間もなかった。そのまま場外まですごい速度で飛んでいく。
「バルト選手場外! リタイアする間もなくマリア選手に吹き飛ばされてしまったー! マリア選手は身体強化魔法を使って、一時的に魔力を解放している状態でしたがなんとか勝ててよかったです。今一番輝いている選手はマリア選手と言っても過言ではないでしょう」
一般生徒は見たところ3人程度しか突破していない。故に一般生徒は目立つのだ。加えてマリアはセリアのような外見をしているため更に注目されている。
『あの戦い方……まるでセリア様そっくりじゃないか』
『セリア様は2人いらっしゃる……?』
そんな声も聞こえる。マリアはそんな声も無視してステージから去る。
「お姉ちゃん程の力はないけど私だってお母さんの血を引いてる。頭も使いながら戦えばきっとうまく戦える。決勝でお姉ちゃんと出会ったら……その時は私が、目覚めさせてあげるから。私もちゃんと強くなったんだって」
記憶があるなし関係ない。マリアの力がセリアに通用するなら彼女は足手まといではないからだ。
「マリア、突破したんですね」
ミリアナが待機所で帰ってくるマリアを待っていた。
「けどあれ以上の出力は出せないよ。この先の貴族たちは厳しい戦いをすることになるかも」
「あと3回勝てば優勝。しかし遠いですね。私も次の試合はどうなるかわかりません」
「成人アエリナ……骨も残らなさそう」
「普通に間違えてますよ、組み合わせを。あんな火力で殴られたら……考えたくもないです」
不運なことにアエリナのブロックに飛ばされてしまった彼女。しかし覚悟は決まっているようで眼に曇りはなかった。
「頑張ってね。次の私の相手は聖人ルーアンだから。お互い様だよ」
心の底ではどこか安心しているマリア。アエリナにあたったミリアナを憐れむような目で見て挑発する。
「決勝でその顔ぶん殴ってやりますよ」
「そっちのブロックには聖人セリアもいるよ。2人ともぶっ飛ばさないと決勝は無理だよ」
「諦めるなと、おじいちゃんには教わっています。安心してください。その顔面へこませてやりますから」
ミリアナは本気の目をして言った。流石のマリアでもその目力にやられ冷や汗をかく。
次なる戦いはミリアナ対アエリナだ。しかし、あれだけ意気込んでいたミリアナはアエリナの3発でリタイアしてしまったのだった。




