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117.来週から試験

 生徒行方不明事件が収束して1週間後の屋上。二人の生徒が屋上に顔を出していた。


「夏がやってくる。あの入道雲うんこみたいな形してるし……」


 少年は少女にそう語った。


「ほんとだ! でも本当の姿はあんなんじゃなくてもっと真っ直ぐしたやつだけどね」


「はいはい、子どもが見て直ぐ分かるようにあの形で覚えてるの。実際にあんなものが出てきたら病気を疑うね」


 どうでもいい話で盛り上がる二人。しばらくして静寂がやってくると少女から話を切り出した。


「女体化治ったんだね」


「誰のせいだと思ってるんだ」


「可愛かったのに。もう少し女の子の姿でいて欲しかったなー」


「女風呂は二度とごめんだね。もう少し恥じらいというのを持つべきだと思うけど。特に君がね」


「昔から一緒なのに今更恥ずかしがることあるの?」


 少女は後ろに手を組んで笑顔で話す。


「ない。だが羞恥心がないのは恥ずべきことだ」


「またまたー、厳しいこと言っちゃって……」


「あの日僕がどれだけ苦労したことか。うんこから戻ったらみんな居なくなってるんだし。魔物に襲われるしでもう本当に苦労したよ」


「道に迷うのが悪い」


「確かに……」


 少女はあの日のことは誰にも口外していない。同じく行動していた仲間も誰一人として。


「亡くなった生徒はフェンだけでしょ? 遺体も見つかったって聞くし、本当に規模が大きかった事件だよねー」


「まあそうだね。生徒は全員見つかった、だけど事件は今だに未解決。聖騎士団も犯人の行方を追ってるし、まだまだ安心はできなさそうだね」


 犯人消息不明。少年は真犯人を伝えていないようだった。二度と解決することがないだろうこの事件は将来的に御蔵入りすることとなる。


「クルスくんは酷く落ち込んでるみたいだし」


「幼馴染だったんでしょ? 仕方ないって。私だってレインが死んだら悲しいもーん」


「僕はそんなに……」


「ああん?」


「僕もかなしいよぉー」


 棒読みだった。


「そう言えば来週から試験だっけ? 僕自信ないんだけどなあ」


 特段表情を変えずに少年は言う。


「あんまり焦ってないなら大丈夫なんじゃない? 私は成績上位だから心配することないけど」


「嫌な自慢だね。少しぐらい分けてくれてもいいのに」


「まじめに勉強すればいいじゃん」


「それができれば今頃この世界は天才だらけだよ」


「それは困るね」


 雲の形状が崩れていくと少年は視線を少女に持っていった。


「な、なに……?」


 ちょっとだけ嬉しそうな声だが、少年はかなり真面目な顔で見つめていた。


「今授業中なんだけど、なんでここにいるの……」


 授業の終わりの鐘が静寂を掻き消した。

 次回終章により4章無事完結です。

 5章は8/4(月)から開幕です。よろしくお願いします。

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