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騎士団

そして、ダリルは正式に聖騎士団に入団することが決まった。

彼は、これからフィンを支え、王都の平和を守るために戦う日々が始まる。しかし、その心の中には、常にベルトとルシールの存在があった。彼らに誇れる騎士となるため、そして自身の使命を果たすため、ダリルは新たな一歩を踏み出した。


これからの道のりは決して平坦ではない。しかし、彼の内にある揺るぎない信念と、家族への深い愛が、ダリルをさらに強くしていく。そして、その力を持って、多くの人々を守り、導いていくのだ。


フィーネは、次期国王である兄フィンを心から尊敬していた。彼女にとって、フィンは完璧な存在だった。美しく、気高く、強さと知性を兼ね備えた理想の騎士。フィーネ自身もまた、その美貌と強さで多くの者から称賛を受けていたが、彼女にとって兄以上の存在はありえなかった。兄こそが彼女の目指す全てであり、彼女はその影を追いかけていた。


フィーネが兄を追って聖騎士団に入団した時、彼女の中には一つの確信があった――自分こそが兄の一番の理解者であり、彼の傍に立つべき存在だと。しかし、その期待は裏切られることになった。兄の右腕として注目を集めていたのは、ダリルという男だった。


フィーネ

「なんなの、あのダリルとかいう奴……許せない!私が兄様の一番なのに、どうしてみんなが彼を持ち上げるのよ!」


彼女の嫉妬心は日々募っていった。ダリルから兄の気を取り戻し、自分こそがふさわしい存在であることを証明しようと、彼女は決闘を申し込む決意を固めた。


フィーネ

「決闘を申し込むわ。みんなの前でダリルに屈辱を味わわせて、私が兄様の一番に返り咲くのよ!」


こうして、フィーネはダリルに挑戦状を叩きつけた。


そして決闘当日

フィーネ

「強そうなのは顔だけね。すぐにあなたを打ちのめしてあげるわ!」


だが、ダリルは彼女の言葉を冷静に受け流した。


ダリル

「んー、やめませんか?フィンさんに悪いですし……」


彼の優しさにフィーネはさらに苛立ち、決闘が始まる。


フィーネ

「もう勝った気でいるの?私をバカにしないで!」


彼女は、これまで幾度となく勝利を収めてきた必殺の突きを放った。その剣先は鋭く、彼女は勝利を確信した。


だが次の瞬間、思わぬ出来事が起こった。


「ッギン!」


強い衝撃が走り、フィーネの剣が跳ね返された。目の前には、ダリルの胸があった。彼女は、自分がダリルに抱きしめられていることに気付き、驚愕する。


フィーネ

「この!離しなさい!愚か者が!」


必死に抵抗する彼女に、ダリルは優しく声をかけた。


ダリル

「大丈夫か?」


その優しさに、フィーネは一瞬困惑した。何を言っているのか理解できずにいると、そこに兄フィンが駆け寄ってきた。


フィン

「妹を守ってくれて、ありがとう。」


その光景にフィーネは驚きを隠せなかった。兄がダリルに頭を下げ、感謝している――その事実が信じられなかった。さらに、背中にまわしている手に…ヌルッ…とした感触、自分の手に触れた湿った感覚に気付き、驚いてよく見ると、手は血で染まっていた、そして自分の剣の破片がダリルの背中に突き刺さっていた。


フィーネ(心の中)

「まさか……私の剣が折れて、その破片が……。彼は私を守るために、自分の背中で受け止めたの……?」


彼女の目は、信じられない光景を捉えていた。自分を守るために傷を負ったダリル――その事実に気付き、フィーネの顔は恥ずかしさで赤く染まった。


フィーネ(心の中)

「なのに……『離せ』なんて……愚か者って……ああ、恥ずかしい……」


ダリルは、そんな彼女の心情を知らず、優しく彼女の手を離して言った。


ダリル

「大丈夫でよかった。」


その瞬間、フィーネの心には新たな感情が湧き上がった。彼女は、完敗していた。戦いの技だけでなく、その心の強さと優しさに、彼女は圧倒されていた。


フィーネ(心の中)

「ああ……離さないで……ダリル様……」


彼女は初めて、ダリルに対して芽生えた感情に戸惑いながらも、それを否定できなかった。彼の優しさと強さに、フィーネは心を奪われ始めていた。この瞬間、彼女の心の中でダリルは兄フィンと同じように尊敬すべき存在となり、同時にそれ以上の何かが芽生えていたのだった。

ミケルは、ダリルの後を追うようにして騎士団に入団した。それまで自信過剰で、人を見下すことが多かった彼も、ダリルとの出会いを通じてその価値観が大きく変わっていった。ダリルがどんな人にも優しく接し、決して慢心せずに日々鍛錬を重ねる姿は、ミケルにとって理想であり、目標だった。ミケルはその姿をお手本にし、天使族の血を引く彼は神聖魔法と回復魔法を懸命に学んだ。日々の鍛錬は、まさに血の滲むような努力だったが、彼は諦めることなく成長を続けた。


そして、その努力は報われ、ミケルはついに騎士団でダリルの副長にまで昇進するほどの実力を身につけていた。一方で、ダリルもまた、わずか1年で二番隊隊長に昇進していた。学園での輝かしい実績と騎士団での功績が、彼を押し上げたのだ。ダリルの名は王都中に広まり、彼の誠実さと強さは、多くの人々からの尊敬を集めていた。


しかし、その年、ダリルにとって大きな試練が訪れる。彼の心の支えであった養父母、ベルトとルシールが天に召されたのだ。二人は、ダリルが幼い頃に拾い、彼に愛情を注ぎ、家族として育て上げた存在だった。ダリルは深い悲しみの中で、両親の墓前に立ち、静かに語りかけた。


ダリル

「父さん、母さん……俺はまだ何も返せていない。あなたたちが俺に与えてくれた愛、混血の俺を息子として愛してくれたこと……本当にありがとう。これからの俺の生き方で、その恩返しをしていきます。どうか見守っていてください。」


ダリルの声には悲しみがにじんでいたが、決意は揺るぎないものだった。彼は、ベルトとルシールが教えてくれた無償の愛を胸に刻みながら、その愛を他の誰かに注ぐことで、恩返しをしようと決心したのだ。


その後、ダリルはますます騎士として成長し続けた。彼は自らの使命として、弱き者を守り、正義を貫く騎士道を貫いた。副長となったミケルもまた、ダリルの背中を追いかけながら、共に困難な戦いを乗り越えていった。ダリルは自分を育ててくれた両親に誇れる存在になるために、そして彼らの教えを次の世代へと伝えるために、日々の任務を全力でこなしていった。


ダリルの両親に対する感謝と愛情は、彼の生き方そのものに刻まれ、彼を支え続ける力となっていた。そして彼は、いつか天国でベルトとルシールに再び会うその日まで、騎士として、そして一人の人間として、前を向いて進み続けると心に誓ったのだった。


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