道を通る時に
『猫のお知らせ屋』の朝は早い!
学校へ通う、みずほちゃんの登校の準備が始まる前に、儀式を終わらないとダメだからだ……。
だから、眠い……頭が、ぐるぐるしちゃう……。
「稲穂、大丈夫? 昨日の夜中に起きて遊んでいて、あずきに怒られてたよね?」
みずほちゃんが、かわいい水色のワンピースで、僕を見つめる。昨日、ちょっと起きたら、ぼくのしっぽがあって楽しかったんだ……遊んじゃうのは、仕方ないよね。
「抱っこ……」
僕は眠い目をこすりながら、みずほちゃんに言うが「今は、大きいから出来ないよ」と、断られた。
みずほちゃんと僕が朝ごはんを食べ終えると、猫のあずき先輩がやってくる。あずき先輩は、ゆっくりとした足取りで僕の前を通りすぎるので――。
「あずき先輩、抱っこしてあげますね」
と、言って僕が近づくと「ヴァァォ~~!」と、言ってあずき先輩が怒る。それでやっと目が覚めた。そんな事をやっていると、みずほちゃんの登校の時間。
僕もみずほちゃんについて、玄関に座り玄関の靴を履く。僕の靴は、マジックテープってやつが付いていて、あずき先輩は紐が付いている。
同じ靴なんだけど、あずき先輩の方がかっこいい。なんでお知らせ屋のお仕事セットの鞄から出た、僕の靴はマジックテープだったんだろう?
「稲穂も、もうお仕事なの?」
みずほちゃんは、靴をトントンしながら僕に聞く。僕も同じくトントンしながら――。
「そうなの、途中までついて行ってあげますね――」と、答えた。
「いいけど……。見えないところに居てね。友達と手をつないでる時、稲穂を友達が見たら、稲穂が見えて大変な事になっちゃう」
みずほちゃんは、とても真剣な目で僕を見る。人間になった僕は、猫の時よりその意味がわかる。わかるから……ちょっと悲しい。
子どもは、大人より僕達の近くにいる。大人はきっと僕達の事、本当に見るまで信じない。子どもたちは、信じてくれる気がするんだ。友達になってくれないかな? だめかな? 学校の7不思議になっちゃうかな? 学校にいないけど~。
……僕の事を知っている、するがくんは……わりといいやつだから……もう友達なのかな? どうだろう? でも、みずほちゃんと一緒のところを見ると、僕の胸がもやもやしちゃう……なぜだろう……。
「稲穂? どうしたの? おこっちゃった?」
みずほちゃんの目が、僕をのぞきこんでいる。ぼくは、ちょっと考えてたみたいだ。
「みずほちゃん、ぼくはするがくんと友達なの?」
ちょっとがっかりした顔したみずほちゃんに、手を引かれて歩きだした僕。
朝の境内を通ると、きれいな空気と緑の匂いを感じる。今日も少し遅く起きたらしいニワトリが、コケコッコー遅い朝を知らせる声を聞きながらふたりで歩く。
特別な毎日。
「駿河君は、きっと稲穂とあずきの友達になってくれると思う。でも、その前に会ったら、この前の事、謝らなきゃだよ」
「うん、わかった……」
人通りにない少し、広い道まで来ると……。
「もう、お仕事行くね」
僕はそう言い僕達は、立ち止まる。
「うん、わかった。気をつけてね」
「みずほちゃん、いってらしゃい」
僕は、大きく手を振ると、みずほちゃんは周りを見回してから、少し小さく手を振ってくれた。
僕は、この道を右に曲がると歩き始めた。多くの人たちが僕とすれ違う。子どもも大人も目的地に向かうように、猫の僕も目的地へ向かう。
少し大きなトラックの横を通り過ぎ、トラックの後ろの横道に入り少し進む。そしてそのまま『虫の知らせ』の受取人を静かに待つ。
その時、息を弾ませて走って来る少年が見えた。僕は、僕の前を通る彼に歩調を合わせて、彼の手を少し強くつかむ。
「痛いっ!」
彼の走る速度が遅くなり、道路の前で立ち止まった時に――。
大きなトラックが一台、ブォォーーォォー!と、音を響かせて、彼の目の前を通り過ぎた。
「えっ……」
彼は、小さな声でつぶやいた。
「貴殿に謹んで申し上げまする。道路を、飛び出しちゃ危ないよ……。今日は特に、道路のわきに止まっている、このトラックのせいで君は見えづらいからね」
「もちろんトラックが、無くても右見て、左見て、右だよ。わかった?」
「うん……」
彼は、そう言うと辺りを見回すが、誰も居ない事に気づき行ってしまった。
僕は、ほっとなでおろす……。今日も、お仕事はうまくいった。早く帰って寝なきゃ!猫だから!
僕は、帰り道、はなうた歌いながら帰ったのだった。
おわり
見ていただきありがとうございます!
またどこかで~