秋祭り
暑い夏がすっかり遠のいて、朝や夜は少し寒くなって来た頃、神代神社でも奉納のお祭りが行われます。
ここの神社は、小高い山の上に建てられた神社なので、他の神社の様に山車は出ないのですが、それでも御神輿、獅子舞い、餅投げなどを行い沢山の人が参加をしにやって来るのです。
みんなが楽しみな屋台もたくさん毎年でます。
しかし今の稲穂の頭の中には、御神輿が帰ってしまう前に行う、お知らせ屋の猫達の奉納の舞の事でいっぱいです。
もちろん奉納の舞を踊っている猫達を見れるのは一部の人間だけ、神代神社の猫の飼い主はそれを拝殿からこっそりそれを眺めます。
近場で僕達をみれるのは、お母さんと駿河君だけです。二人とも飼い主のお父さんとみずほちゃんに触れている時に僕達を見たのでお知らせ屋の猫達のみんなを見れるようになったようです。
「でも、みずほちゃんにも近くで見て貰いたかったな、せっかくこんなに着にくい服着て踊るのに」
僕たちは軽業師の衣装を着て、顔を布で隠している。そして時々顔を隠している布をフーフーする。なんとなくそうしたいだけだけど……。本番に持つ剣は、ちゃんと机の上に収められて決して、剣で遊んだりしない。駄目だって言われてちょっと怒られたから。
僕がそう言うと、着物のズボンの部分をパタパタやっているあずき先輩が僕を見る。
「稲穂、瑞穂には昨日の予行演習でさんざん見せただろう。そしてお前は最後の方は、気が散って、怒られていただろう。瑞穂に!」
「あの時は、お母さんの美味しい料理の匂いがしてきたし、仕方ないよね」
「お前は猫だから食べられないだろう」
あずき先輩が呆れたようにいいますが、その時、僕らが居るお守りなどを売っている社務所の中にみずほちゃんが入ってきました。
「み ず ほ ち ゃ ん」僕は、両手をパタパタさせてみずほちゃんを出迎える。
「稲穂、ちょっと落ち着こう」可愛い手毬の浴衣を着た、みずほちゃんは僕の肩に手を乗せ、とても落ち着いていた。
「瑞穂、駿河君は今日は来るのか?」
そんな時も、ズボンをパタパタしている、あずき先輩が横からみずほちゃんに話しかけた。
「えぇ……、うん……来てたよ。二人の踊り楽しみだって言ってた。でも、何であずき、駿河君の事……今、聞いたの?」
「友達だから、なあ稲穂……うん?」
「なんか怪しい……」野生の僕の感が、みずほちゃんが何かを、隠しているって言っている……。そうして見ていると、みずほちゃんは浴衣に合わせた手毬の柄の金魚の巾着から猫のおやつを取り出して僕達に見せてくれる。
「駿河くんがふたりに、猫の時にあげてねって」
「駿河はいい奴だな」「うん!」
そんな時、綺麗なお着物を着たお母さんが、僕達を迎えに来る。とてもにこにこ笑顔で――。
「まぁ!ふたりともやっぱりよく似あってる。やっぱり二人ともお兄さんだわ」と、僕達を褒めてくれました。
「お母さん、俺は人間の歳の数え方でも結構な大人だから、稲穂と一緒にするのはちょっと……」
そう言いにくそうにあずき先輩が、そう言うと、お母さんは思い出したように少し目を大きく開く。
「あはは、ごめんね。あずき」
でもあずき先輩は、ご飯べてすぐ寝ちゃうし、雷こわがってるし、そんなにかわんないと思うんだけどなんか失礼しちゃう。
僕達はお母さんの後へついて、社務所を出る。人込みをかき分けていくと、途中に金魚すくいの屋台があってとても気になる。綺麗な金魚少しだけ、味も気になっちゃう。食べないけどね。大丈夫。
「稲穂、金魚すくいは駄目だぞ……」
「なんで?」
「なんでだろうな……猫になって歩いていると、結構な確率で……金魚鉢が落ちそうになっているんだ……なんでだろうな」
そう言って剣を持った手を見るあずき先輩……内なる獣を押さえられないばかりに、いろいろな物が倒し、何かをやぶく。でも、それは僕にも言える事で、まぁ障子紙破れちゃうけどいいっか! 気にしない気にしないってなって、みずほちゃんに怒られるを事を繰り返す。
僕達は内なる獣飼っている。だから仕方ないかもしれない。普段は、まんま獣だし。
「あずき先輩わかった! 内なる獣のせい。怖いね!」
「えっ? 猫はまんま獣だぞ?」
「こわいね!」
「あぁ……」
そう言ってあずき先輩も納得してくれた所で、僕達の舞台の土俵の前に来た。
土俵の周りは、斉竹に付けらた荒縄で囲われている。その後ろに、舞台が出来ておりそこでは太鼓や横笛などを演奏する人達が待機して居る。僕達の前の人間には僕達が見えず、誰か踊っているのですよ。って設定って事にはなっているのだが、時々、僕達が見える小さい子ども達によって稀に僕達の存在が伝えられ、あっ、えっ本当何か、見えざる者が踊っているの?程度の感じになっている。
神様の歓迎をする為に、拝殿から出られないと言う名目の、神代神社の直系の者達の代わりに、お母さんが踊り手を連れて来るって行事の設定通り、お母さんの先を通る事により、僕らの踊りの場までの通りを確保してくれる。
そのお母さんが、荒縄の紐を上げ僕らを通すと、お辞儀をする。
それを合図に奉納の舞が始まる。
ジャージャン、その音と、ともにうずくまっていた僕達が跳びあがり足を踏む鳴らす。
それが僕らの舞の始まり。
クルって内側に回って互いの剣をぶつけるパシッ――ンと言う音が鳴る、そのままその反動で、もとの位置に戻って剣を横へと振りまわす。そうすれば僕は座り、あずき先輩が一人で踊るパート、先輩はその背丈を活かして剣を音を立てながら、剣をゆうびやかれいって感じに振りまわす。それを僕はそのまま座って見ていた。
その視線は客席を、そして客席の向こうの拝殿の屋根の上に、座って僕達を見ている人物に気付く。顔は僕らと同じく白い布で顔を隠しているのでよくわからない。服は僕らとは違い、お父さんの様な神主の恰好に近い様な?
その時です。
えぇ――んと言う泣き声、ぐずぅぐずぅと鼻水を流しながら小さな子どもが、歩いているのをみつける。
その子に人間の誰も気づかない様で、どんどん階段の方に行ってしまう。
でも、舞台の上の和太鼓が、ドンドンドンと音を響かせると、僕が今度は踊る番になってしまった。
あずき先輩が、僕の肩に剣を当てる。とそのまま舞台の袖まで回って行き、そのまま土俵の上から荒縄を跳び越えて、男の子が向かった先へと駆けて行ってしまう。
僕はそれを見届けると、大きく後ろに宙返りをし、そのまま手を付かず側転し、土俵の上を回ったり、前転したし大忙し。
練習中に、何度も「子猫の跳躍力は、何回見ても凄い」とお父さんに言われ、あずき先輩からは「お前もその内わかる。一番動けるのは子猫の内だって事が……だから漢字頑張れ」という、ちょっとわからない励ましをされた踊りの段取りところ……。
その後、剣を月にの様に丸く動かし、そして前方へとヤァヤァヤァと突き刺す。
視界の端に、いつもは本殿にだけ居てくれる誰。その方があずき先輩の抜けて、少し不安な僕を見ていてくれている事に安心する。
きっとあずき先輩の事も誰かさんはわかってくれる。そう思いながら舞を踊るとあずき先輩が、さっきの子どもを連れ帰って、やっと心から安心して胸をなでおろす。
そうしてお母さんに子どもを預けたあずき先輩は、ふたたび鳴りだす太鼓のドンドンドンの音とともに、斎竹を手をやると、その勢いを借りてそらに高く跳び、体を真っすぐにしながら体を捻らせ僕の前に着地、すぐさま体を低く落としその勢いで剣で円を描く。
どこからともなく、小さな拍手の音がいくつか聞こえる。まだまだ僕達を見られる子どもはいる様です。
その時、風が吹き紅葉が僕達のもとへとゆっくりと舞い降りてきて、その端に拝殿で笑っている誰かの笑顔。
布の上からでもわかった……僕達はつながっているから。
舞い散る落ち葉の下で、音を響かせ剣を相手の剣に叩きつける、幾つもの衝撃、剣の音を響かせて、僕達の舞は終わりを迎える。
僕達は力なく剣を落とし、静かに横たわる。
そこには紅葉舞い散る音と横笛の音だけが静かに響き、すべてを終わらせるのでした。
☆★☆★☆
舞台から降りる僕達と拍手の音。拝殿の上を僕が見あげても、もう誰もいません。
「あれ……いない……」
「あぁ……神様か?」
「神様?」
「神様は……えぁ……、ここの神社のボスだな」
「そっか……。待って、ボスも大事!大事だけど……金魚を見に行こう! いや、待って……今日はお祭りだよあずき先輩」
腕を組み凄く賢そうに僕は、つぶやきました。
「そうだな……」
「お祭りで金魚を捕まえるのも大事だけど、他の屋台も大事……例え猫だから甘いお菓子は少ししか食べれないけれど……感受性豊かな子どもの内ならそんな思い出も大事だと思うの」
ぼくはみずほちゃんやお父さんならおやつくれる子猫の時の可愛い声とお顔で言ってみた。でも、同じく猫のあずき先輩には通用しない様で――。
「そうかもしれないが、お菓子食べたいだけで、神様から拝借している知識を総動員するのやめろ。日頃から会話からもっと頑張れ」
「子猫だからしょうがないでしょ!食べたい盛りなんだから、失礼しちゃうわ」
そう言って、屋台の沢山置いてある通りへ突っ込んだ。
「あれ、あれが欲しい!」
今回、舞の練習で、練習したように指をピューピューピューと高速で動かし、指をさす。
「お菓子とおみあげ1つづつだからな」
何故か、さっきとってもかっこ良かった、あずき先輩の表情が死んでる。
「うんうんベビーカステラなら、たくさん食べれるから良し!」
「そうか、そうか」
帽子と上着を腰に巻き、耳としっぽを隠した。あずきせ先輩が買ってくれた。
沢山の紐を引く屋台では、きれいなスポンジのボールが当たった。
そこでふっと一息つくと、あずき先輩が今度は屋台に買いに行った。
参道の裏のゆるい坂道は、きつい階段をのぼり疲れた人用の道。参道ではないので、階段よりは込む事はないが、それでも何人もひっきりなしで歩いて行く。
「奉納の舞凄かったね」
いつの間にか、するがくんが僕の横に立っていた。
どうやら梅の木々が多く植わっている、下の梅の園から上がって来た様だ。
僕はベビーカステラの袋を彼の前に出したら、「ありがとう」って言って1つ取って食べてた。
そうしてそれを食べ終えると、彼は「もう帰るか」と言って、「またな」と、言って帰っていった。
僕は、「またね」と言って答えた。
あずき先輩がやって来たので、参道に戻ると、最後の御神輿が帰って行く。
空には白い庭石のような大きな雲が点々とあり、夕日を浴びて底が茜色に染まっている。
一日一日と過ぎていくなかで、僕の最初の秋はもうすぐおわり。
もうすぐ最初の冬が来る。
そして明日はどんな明日になるだろうか。
それよりもう疲れて眠いんだけど……ここで、寝ちゃおうかな?
おわり
これ完結です。ありがとうございました。(書く気だったハロウィンの事も書いてないので、やっぱこの先はどうなるかわかりません)
さすが、小説家になろう様、想像を超える方が見てくださり、最初、本当に混乱してましたがありがとうございました。(ちなみに1日にPV10位から凄いどうなってるの!? 認識だった気がしますが、もう覚えてません……。記憶よわよわ、投稿者)
ありがとうございます! またどこかで~。