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秋の虫売り 後編

 朝、起きるとみずほちゃんは、赤いランドセルを背負い学校へ行く準備をしていた。


 猫の僕は、飛び起きてみずほちゃんの足に、スリスリすると、彼女は僕を抱き上げる。


「ちゃろちゃんとめろちゃんが来てたよ……でも、それ以外の人もしかしてあずきが帰って来ても猫さん3人だけでは会ってはダメ。お父さんをうちの内線で呼ばないと駄目だからね」


 そう言いながら階段(かいだん)を僕を抱っこして降りる。僕をおろして玄関へ向かいなが、「いってきます」と言ってみずほちゃんは、学校へ行ってしまった。


 キッチンに行くと、ちゃろちゃんとめろちゃんがいた。


「やっほ――」「おはよう稲穂ちゃん」とキッチンに元気な声が響く。


 僕はにゃ――んと鳴くと、僕のお皿の上のカリカリを食べる。そしてキャットタワーの上に登るのだ。


 にゃーん ……………………。アレ? にゃーん、にゃーん、にゃーん、あれれ?? 


 いつも通りなら、「稲穂もう、そんなところはまで登れる様になったのか……子猫の成長は、早いな……」とあずき先輩もみずほちゃんやおとうさんだって褒めてくれるのに……。


 ちゃろちゃん達はおしゃべりに夢中だ……。あずき先輩帰って来て……。


 その時、ガチャっと玄関の開く音がする。大急ぎで、僕は玄関へ向かう。


「あれ? 稲穂ちゃんどうしたの」


 玄関に行く途中めろちゃんの声がしたが、二人の座るテーブルの横をすり抜けて行く、僕の勢いは止まらないそして誰が来ていていてもいい様に廊下の角に隠れて確認する。


「あら、稲穂おはよう。今日はお寝坊さんだったわね」


――隠れていた僕を、発見出来る凄い……。


 玄関(げんかん)掃除(そうじ)を終えた、お母さんが玄関から入って来た。にゃにゃにゃ――ん、お母さんにさっきの様子を話す。


「そっか……、あずきが居ないから、寂しいのね……」


 お母さんは、僕を抱きあげキッチンへと進むと、


「小百合ちゃんおかえり」「小百合さんおかえりなさい」


「ただいま、今日も外は本当に暑いわね。ふたりとも遠慮しないで好きなもの飲んでね」


「「はーい」」


 お母さんは、僕をおろすと僕は、お母さんを呼びつつキャットタワーへ登る。


「うん上手、上手、稲穂もそんなところまで登れるようになったのね」


 お母さんが、そう言ってくれるので満足してキャットタワーの上から皆を見下ろしていると……、昨日聞いたあの声が聞こえる。


「虫や~虫、虫はいらんかね~♪」


 辺りを見回すとちゃろちゃんは立ち上がり、めろちゃんも警戒しているようだ。


「小百合ちゃん、冬至(とうじ)さんに、虫売りが来た子を伝えて」


「わかったわ」


 お母さんは、内線電話をかけと、ハンドフリーにして話をする。


「こちらからも虫売りの姿は確認できるが、稲穂はやはり今回、外へ出ない方がいいだろう。うちの猫を限定して捕まえようとしているなら、稲穂が今回も捕まらなければまだチャンスはあるはずだから。そして今回メロちゃんに相手の足止めをして貰えないだろうか? あずきの行方が分からなければ、まだこちらとしても封印する事はできないからね」


「わかった、念の為ちゃろちゃんバックアップお願い」


「電話は、このままの状態で行くから小百合さん、僕達に何かあれば、上神代さんに伝えてくれ頼む。では行くよ」


 お父さんの歩く音が聞こえる。様々な音がお父さんが、どこに居るか伝えて来れる砂利の音が無くなったので参道に出た様だ。


「こんにちは」


 お父さんは何気ない声で、挨拶すると、「やった――!」言うちゃろちゃんの声が聞こえる。どうやらふたりは虫売りを捕まえたようだ。


 ☆★☆★☆


「やはり起きたのですか?」


 あずきは、頭を抱えふらふらと起き出す。


「凄く寝たのにまだ寝足りない気分だ。そしてまだ鳥かごの中にいるんだな」


 あずきは、腰に手をやり上を眺める。今まで真っ暗だった空間に亀裂が出来僅かながら空が顔を覗かせる。


「虫かごの中に貴方(あなた)を留まらせる事の出来る時間は、後、僅かなのかもしれません。


 私に、ふたたび虫を売る事が出来る様にしてやろうと言ったあの大きな猫は、どうやら捕まってしまったようです。


 彼の力が無くなり、空が見えて来てる。でも、逆に安心しました。


 彼の力が弱まる事で、私は誰かを困らせてまで、虫を売りたかったのではなくもっと大切ものが見たかったと言う事を思い出せてきました。


 虫を買ってくれる人の笑顔が見たかっただけ……それだけの理由が、この仕事を続ける為の源だったのにそれを忘れていたなんて、私もどうかしてました。


 最後に教えてください……今でも虫は売られていますか? 虫を買って喜んでいる人は? いるのですか?」


「いまでもいる。カブトムシやクワガタ、幼虫の時から買って、成長するのを待っている子供もいる。」


 虫売りは、少し嬉しそうに笑う。


「そうですか。カブトムシは薬効があるって私の時代も言われてました……」


「あっいや、子供達は強くてカッコいいカブトムシやクワガタに夢中で……後、サソリも飼っていると聞くし、そういえばタランチュラと言う虫ではないかもしれないが蜘蛛(くも)を飼う人もいるぞ」


「そうなんですね……蜘蛛(くも)、くもか……」


 虫売りが、少し納得のいかないようなそぶりをし、最後に希望(きぼう)にすがる様にあずきの方を見た。


「私の様な虫売りはいますか? 鳴く虫の声を聞き、虫かごを囲みながら、秋が来た事感じて喜ぶ子供や大人そんな風景が今もあるでしょうか?」


「虫売りだいたいお店で買うもので、しかし生きて鳴く虫を売っている店は探せばあるだろうがそんなにみない」


 「では、私がこの時代の唯一(ゆいいつ)の虫売りになってもこの仕事を!」


 あずきは、何も言わなかった。ただ下を見つめた。それを見て虫売りも下をみる。


「なんて言えばわからないが、今でも、鳴く虫を好きな人もいる。と、思う。その人達向けにパソコンと言う道具で写真と言う絵を見て、選んでもらい家まで手紙の様に送るって言う仕組みはあるらしい。そんな仕事を営んでいる彼ら虫売りの仕事をに任せては、駄目(だめ)なのか? 自分の時代のやり方をごり押してもいい事はないぞ。今は今なりの子どもに虫を届け笑顔にする方法があるって事で、もう安心して成仏してくれないか? 今、お前言う大きな猫の力の(かせ)はもう俺には無い。この状態(じょうたい)なら、あんたを無理やり排除(はいじょ)する事は出来る。でも、それを俺にさせないでくれ……」


「でも……でも! 私が虫たちを! …………」


 そう言った虫売りは、彼の前に居るあずきの顔を見て、大きなため息をついた。


「貴方のそんな顔を見ていると、私の事を思い、考えてくれた娘の顔を思い出しました。虫を売る事が出来なくなったその時、娘に言われたんです。『おとっさんあきらめてくれお願いって……』娘も私に言いたくなかっただろうに、そんな時代になったと私自身が諦めるべきだったのに、私が言わせてしまった……。それなのにまた同じような事を、他人にあなたにまで言わせてしまったんですね。虫売りを諦めて違う仕事を始め、それなりにうまくいって……死ぬ間際(まぎわ)これで良かったと、思ってたはずなのに……なんで虫の事になるとこんなに私は馬鹿なんだろう……。本当に、すみませんでした。帰る事にします。そしてありがとう私の事を思ってくれる人達と出会えた、私の人生不幸なんかではなかった……」


 そして彼は、幻の様に消える、消える彼は笑っていたが、少し寂しそうでもあった。


「って、おい! おれはこのままなのか!?」


 ハハハハハ、すっかり忘れてました――!


 どこからともなく彼の声がする。


 ―― 暗転(あんてん) ――


 目を開けると、鳥かごは残り微かな状態までに消えかかっていた。そして地面に落っこちる。あずきは、猫なので、ひねりをきかして地面に無事着地(ぶじちゃくち)


「あぁ……ひどい目にあった」 彼は、人間の姿になりそうつぶやく。



「「あずき!?」」「あずきちゃん!?」



 目の前には、ちゃろちゃん、めろちゃん、そしてお父さんまでいる。そしてみんな笑顔(えがお)で彼の事を取り囲むと、家の方から三毛の猫の稲穂が小さな体で走って来る。その後ろを、お母さんがついてくる。


 稲穂(いなほ)は、爪を出して、バリバリとあずきのズボンを登って来て、あずきは思わず稲穂を抱き上げて。


「お前ものには、加減(かげん)があるだろう?」


 と、そう言った。そしてみんな安心して、笑顔になったのでした。


 ……………………しかしその間に、今回の黒幕(くろまく)の大きな山猫は、あずきの為に完全に封印されず、シャボン玉の檻に入れられていたが、一瞬の隙を見計らい一目散(いちもくさん)に彼の山へと帰って行ったのだった。



 おわり

そう言えば山猫は、山から(山で猫から)生まれたら山猫認定してるので、そう簡単には滅びませんし、悪い事をしなければ、よし! ok! 認定されている緩い状態です。 小説家になろう様は、シリーズで、まとめられるので明日で、一度、最終回です。別で再開するかもしれませんし、しれぇ~っとそのまま再開するかもしれないし、そのまま終わるか未定です。

とりあえず、後、一回良ければお付き合いください。 見てくださりありがとうございました。またねん!

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