おとうさんとあずき先輩、みずほちゃんとぼく
猫の気持ち、こわいきもち。
水は、飲むのは、出来るけど……。お風呂にはなかなか入れない。水がたくさんは、怖いよね~。
なんでだろうね? わからない。
人間の姿の僕の横で、猫のあずき先輩がごろごろしていた。その時、パジャマ姿で、通りかかったお父さんとあずき先輩は目が合った様だった。
「あ……そうだ。」
そう言ってお父さんは猫用のかごを、ごそごそしだす。そこから取り出したブラシであずき先輩の背中をなでなです――い、す――い。どんどん黒い毛が取れる。僕はお父さんの後て見ていた。あずき先輩は、なんか気持ち良さそうで羨ましい……。
僕はもじもじしながら、ソファに座っているみずほちゃんの前に行く。
「みずほちゃん僕のもアレしてもらいたいですが……」
「稲穂あれって?」
「あずき先輩みたいにブラシで、なでなでして欲しいです」
僕はキャットタワーの前にいる、お父さんとあずき先輩を振り返りながら説明した。みずほちゃんは、僕の横から顔を出す様に二人を見つめる。
そうすると、みずほちゃんは、猫用のかごの隣りに置いてあるかごを取り出し、その中に入っているブラシ探し出し僕に手渡す。
「人間の時に猫用ブラシを使うと、髪の毛に猫の毛がついちゃうから、こっちのブラシを使ってね。はい」
ブラシを僕に手渡すと、みずほちゃんも自分のブラシを持って来くる。
「稲穂、いいこうやってす――い、す――いって髪の毛をとくのよ。やってみて」
「す――い、す――い出来た」
「ブラシちょっと貸して」みずほちゃんが、僕の髪のをとかす。猫の時よりもスイスイとブラシは、進む。
でも、みずほちゃんの手が止まり、僕はみずほの方へと振り返る。
「稲穂は、髪の毛はどうするの? あずきみたいに伸ばすの? それとも短いままでいる?」
「そうねぇ……人間の髪の毛は抜けずに、長く伸びるのかぁ……でも、なんで伸ばすの? しっぽみたいに、追いかけると楽しい?」
「あずきが前に言ってたのは……、『漢字を使う時に、威力が上がる気がする』って事と、『奉納の舞の時は髪が長い方がいい気がする』って事かな?」
「ふむふむ、髪の毛にはそんな効果が……」僕は口もとに手を置き考える。夏は、短い方が良いけど、冬は長い方が暖かそう。どうしょうかな?……。考えているとまた、みずほちゃんは僕の髪の毛をとき始めた。
「稲穂の髪の毛は、猫毛で柔らかくて、少し細いから、髪の毛が絡まりやすいから短いままの方がいいかも? でも、こまめにブラシです――い、す――いってやれば大丈夫だよ。はい、おしまい」
「みずほちゃんが――」
僕は、期待して振り向く。
「えっ……やだ……」僕は前に向き直ると、小さな声で「今は、短いままでいいです……」と、言った。
正直、猫缶だと思ったら、カリカリが出てきた時位のショックだった。カリカリが悪いんじゃなくて、今は、猫缶食べる為に準備されたお口と、気持ちだっただけなの……。
そして偶然、僕は猫缶が好きなだけであって……偶然は、仕方ない事なの……。
みずほちゃんに毎日、す――い、す――いして貰えない……。ふぅ――あずき先輩にして貰うか……。
僕は、あずき先輩を見た。
あずき先輩は、今度はお父さんに抱っこされている。
僕も……。
お父さんは、猫のかごから……猫の爪切りを取り出した。僕は、思わず口を手でおおった。
お父さんは、順調に、あずき先輩の爪を切って行く。パチン、パチン。
……あずき先輩の顔が無表情になっている。そしてとうとう顔をお父さんの腕の中に隠す。
(あずき先輩すごくかわいいかも~)
「稲穂、そういえば、ひらがなドリルどこまで進んだの? うん、どうしたの?」
「ううん、何でもないよ。ドリルみて、みてみずほちゃん!」
僕は大きく伸びをしながら、爪を切っている、お父さんとあずき先輩を隠してドリルの場所までみずほちゃんを連れて行った。
そして僕が猫用爪切りで、爪を切られながら、フゥ――、フゥ――言ってしまうのは次の日の出来事だった。
おわり
見ていただきありがとうございましたー!
またどこかで。