猫のおしらせ屋のきょうどう作戦 前半
学校には、怪談話が多い。 それは何故なのか?
「あぁ……俺の先輩が言っていた事によると、学校……特に小学校や中学校には人間の子ども達は行くものとされているから、そこ関わる人数が多いほど、怪談話が作られる道筋が出来やすいらしい」
「みち?」
「あ……池のそばにやなぎの木があるだろう。そこにお前が立っているとする。Aさんがそれを見て、やなぎの木の下の人影がいると言う。Bさんは、次の日誰も居ないのに、見間違いで柳の木の下で人影を見る。もしかしたらAさんの話をどこかで、聞いて覚えていたのかもしれない。そして最後にCさん、同じ小学校に通って2つの話を知っているから何にもなくても、『あっ、やっぱりいる』と思い込み話が出来る。そう言う道筋をたどって、怖い話が出来あがる」
「そうなのかな? じゃ――僕達なんで、お仕事でこの場所に来る事になったのかな?」
「でも、夜は、あぶないって俺の先輩が……」
「何があぶないの? こんなに先生も生徒もいるのに」
「えっ……」
そのまま、あずき先輩は話さなくなってしまった……。
あずき先輩は、ジャングルジムの一番上に、僕は、ジャングルジムの下の方で座ってみんなを見下ろしている。
今日、僕達の居る夏休みの小学校の校庭では、来年に林間学校へ行く、小学4年生によるカレー作りが行われている。
僕達の近くでは、同じ地区の子ども会のみずほちゃんとするがくんは、一緒に飯ごうで、ご飯を炊いている。その横でお母さんが、他の子達にカレーの作り方を教えている。
そうやってブロックに挟まれたかまどを囲んで、みんな楽しそうに料理作りをしている。
(いいなぁ~美味しそうだなぁ~)
その中で、こちらに向かってくる2人がいた。ちゃろちゃんとめろちゃんだ。二人は、人間になってもあまり似ていなかった。猫のふわふわのちゃろちゃんは、あずき先輩位のお姉さんで、人間になっても髪も服装もふわふわな感じでかわいい。めろちゃんは短いおかっぱの髪で僕より少しだけおねぇさんで、ほそいごはんちゃんと食べてる?
カレー作りが、始まったてからすぐに二人は、るりくんと言う二人の家の子のところへ行ってしまっていた。
「みてぇ~ふたりとも校長先生が、スイカくれたわよ~」
るりくんの所へ行っていた。ちゃろちゃんは、お皿にスイカを4つ乗せて持って来てくれた。
「今年もまた、貰ってきたのか?」
あずき先輩は、毎年このカレー作りに参加している様で、二人とそれなりに仲がいいみたい。
「うんうん、智樹君は、毎年、何かくれるからいい子よね~」
ともきくんは、学校の校長先生らしい。ちゃろちゃんからは秘密のかおりが凄くする。
それはともかく、スイカは、凄く美味しそうだった。いつもお母さんが少しだけくれるスイカより大きくて、甘そう……明日も、肝試しをやらないかな?
僕は、めろちゃんに「はい」と渡され、スイカを少しづつ大事に食べた。やっぱり美味しくて甘い。素敵で、最高!
「でも、ふたりとも生徒達の居る、向こうに行って大丈夫なの? 見られたりしない?」
「見られたりしない、これがあるし」そう言ってめろちゃんは、漢字のカードを見せてくれた。
「もしかして、あずきちゃん、消のカードの事教えてないの?」
「あずき、まず基本を教えないとダメ」
ちゃろちゃんの後をついていくめろちゃんも、そう言ってあずき先輩を注意する。
ちゃろちゃんとめろちゃんの言う、消のカードを使うと、僕達はもっと人間から見えなくなるのかな?じゃ――みずほちゃんとずっと居られるかもしれない。最高かもしれない。
何? 今日、すごくうれしいんですけど――。
二人に言われて、猫耳が、イカ耳でふさぎがちな先輩が言い返す。
「稲穂に、教えるとずっと、瑞穂について行こうとするから駄目だ。もう少し大人になってから、それよりかっこいい戦闘用の漢字を覚える方が先だ!」
(せんとう用の漢字もかっこいいけど――、みずほちゃんもきっと僕が一緒に居ても気にしないはず、いいよって言ってくれ……内緒で時々ならいいでしょ?)
「ご主人様に、ずっとつい行くのは当然だとおもうわ」
「ウンウン」
めろちゃんは、ちゃろちゃんの話に凄くうなずいている。首の振りがはや。
「うちは、二人のとこみたいに過保護じゃないから、なっ?」
「でも、猫と人間ってそういうものよ、あずきちゃんとっても仲良しなの」
あずき先輩が、珍しく怒られているけれど、僕はみずほちゃんの事を見ていた。みずほちゃんやそのお友達が飯ごうを火の上から降ろし始めた様だ。
「みんな、もうそろそろカレーが出来るみたい、これからどうするの?」
僕はお腹減ったし、話にあきちゃったのでご飯がたべたった。今日のごはんは、なんだろう。
「はい」
めろちゃんが、消のカードをくれた。
「消で、消えるのいい?」
(? ? ?)僕に頭の中に? のマークが、3つ出た。
「めろちゃん、この子はまだカード使った事がなさそうだから、それじゃ……わからないと思うの」
「めろ、こいつは、たぶん今年の春生まれだぞ」
「そっか……」
ちゃろちゃんとあずき先輩に言われて、めろちゃんは優しく僕の頭をなでた。
「稲穂は、まだ赤ちゃんなんだね」
「俺たちが長生きなだけで、稲穂は、赤ちゃんじゃないだろう?……ないよな?」
あずき先輩まで僕の事、赤ちゃん扱いする。後で、みずほちゃんに言いつける。ぷんぷん
「赤ちゃんじゃないよ! 立派なおとな、おとななの! で、使い方教えて!」
「じゃあちゃろお姉さんが、教えてあげるね」
「おねがいしゃっす」
「お願いします。言えてえらいね。このカードは、手にもって『消えろ!』っと思ってカードが消えたら成功です。相手にさわると、相手からも見える様になります」
ちゃろちゃんのカードは、本当に消えてしまった。けど、ちゃろちゃんは見える。
「でも、見えるよ。いいの?」
「いいの。じゃー稲穂ちゃんもやってみよう~」
僕は、足をちょとひらいて、消えろ!と思いながらカードを少し押し出す。変身はできないけど、消える事は出来たかな?
「じゃー瑞穂をその姿を見せてきな。瑞穂が、カレー落とさないように気をつけろよ」
「わかった。ちゃろちゃんありがとう、行ってきます」
「ほこりが、まうから走るな――」
あずき先輩が、後ろから声をかける。僕が行くと、みずほちゃんの班は、みんなでお話してる。楽しそう。僕はみんなの周りを歩いたけど、みずほちゃんも、するがくんも見えてない様だ。僕は、みずほちゃんのお皿を片手でささえ、片手をそのまま肩に置くと同時に「ふりかえらないで」ってそっと言った。
「みずほちゃん僕は、今、ちゃろちゃんに姿が、消える方法聞いて消えています。大人なので、だから大丈夫だよ」
そう言うと、みずほちゃんのお皿をゆっくり離して、みずほちゃんの隣に、僕は座った。体操座りで座った僕を、みずほちゃんは見てる。
「楽しいねぇ」僕は、すごくうきうき楽しい。だから、みずほちゃんに伝える。
……ちゃんとみずほちゃんに伝える事のできた、僕の肩をあずき先輩がトントンして来た。
そして僕の手を引いて、みずほちゃんの元から連れ去ったのだった。
向かった先は調理室でお父さんと校長先生とめろ、ちゃろちゃんと二人のおとうさんがいた。
全員で8人初めて会った人達と食べる。不思議な気持ちで子供用カレーを食べた。美味しかったけど、おかわりは、初めて食べたから今日はダメだよって言われて食べれなかった。残念。
もっと残念なのが、みんなに見えなくなってみずほちゃんの隣に、自由に居られる様になったのに、結局少ししか居られなかった事だ……。
この後の肝試しの時こそ、みずほちゃんのそばで一緒に居られるようにがんばるぞ!
つづく
珍しく前後編です。
見ていただきありがとうございました。
またどこかで~。