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転生したら天の声に転職させられたんだが  作者: 不弼 楊
第1章 騎士学校編 禍福糾纆
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運者生存Ⅱ

 教師たちは集合場所に建てられた監督本部で担当するチームを見守っていた。

「フラムさんがシエルで……ルゥがセレナのチームか。……うん、他の子は興味ないからここでいいや」

 そう言ってルゥとフラムの間に座りデシテリアにここへ来るよう手招きする。

「騎士団の査察など嘘だと思っていたのに……全く……邪魔をするなよ」

「分かっているよ。あの子たちは見ているだけでも楽しいから」

「お前なぁ……」

 試験官の前にはパーティーの人数分の映像が映し出されている。多ければ5人分をまとめて観る必要があるがルゥはセレナたち3人分をモニターしている。

 正確にはセレナたち3人をまとめて別視点からモニターしていた。

――シェルティオの視点で見えるから別にコレで見る必要ねぇんだが……

 ルゥも天の声を具現化させられるようになっていた。風属性の鳥型で自在に空を飛びセレナのグラウリと同じく視覚を共有することができた。シャルティオは風属性らしく音声の共有もできるのでいざとなれば彼を通して声を届けることもできる。

 イルヴィアはルゥが具現化した天の声を使って観ていることを知っていたのでニヤニヤしながらルゥを見ている。

「マジで邪魔だから帰ってくれねぇか?」

「連れないコト言わないでよ。ルゥが試験官するところも見にきたんだから」

「それが嫌だって言ってんだろがっ!」

「あ、よそ見してたらだって! ほら、動き出してるよ」

 舌打ちをしながら急いで映し出されている映像に目をやる。そこにはセレナたちと他のパーティーとの戦闘が開始されていた。



 対峙している4人組パーティーは前衛に騎士科が2名と後衛に魔術科の2名でバランスの良さそうな組み合わせであった。

「【氷柱つらら】」

 ソルフィリアが氷の針を飛ばし全身のシールドを割って一人脱落させる。

「【炎の弾丸(レッドバレット)】」

 セレナも炎の弾丸で心臓付近のシールドを砕いてダメージ超過で退場させる。

「「はああっ!」」

 後衛の魔術師2人は左右に分かれて隠れていた。木の影からの飛び出し炎の魔法を攻撃直後のセレナとソルフィリアめがけて放ち爆発を起こす。

「やった!」

 爆発で舞い上がった砂埃は視界を塞いだがすぐさま渦を巻く水流に絡め取られてソルフィリアたちが姿を見せた。

「嘘……直撃したはずじゃ……?」

「グーテス、ありがとう!」

「防御は任せておいてください」

 そのやり取りの間にソルフィリアが魔術師2人も仕留めていた。

 戦闘が終わり落ち着くかと思われた矢先、背後から弓矢と魔法攻撃が迫る。タイミングをずらして放たれた攻撃は魔法が先着し爆発を起こし矢で射抜く算段であった。完全に虚をつかれ振り向くことも出来ない速さでの攻撃であった。

「危ないな……助かったよ。ありがとうトムテ」

『キュー』

 まるで亀の甲羅のように張られた防御壁は魔法も弓矢も全てを防いでいた。

「トムテがいれば後ろは安全ね」

「見つけました。……15メートルほど先の木の影に3人です。すでに拘束済です」

 ソルフィリアの報告に一斉に駆け出す。

「行くわよ!」

 これでセレナたちのパーティーは早々に10名をダウンさせて計3部隊を壊滅に追いやった。


「フィリアってさ……大人しそうに見えてやること結構エグいよね?」

 モニタリングしていたイルヴィアが先ほどの戦闘を見ながら感想を漏らす。

「あいつ、俺たちに気を遣っているだけで前に出たがるからな。無識にシエルの方へ行こうとするらしい」

「ふーん……そうなんだ」

 同じく観戦していたデシテリアも感嘆の声を上げる。

「今の背後の攻撃はどうやって防いだのでしょうか? あらかじめ背後に防御魔法を張っていた? でも前衛の2人への攻撃も防いでいたし……」

 デシテリアのお付きで一緒に観戦していたバウトとアリスも驚いていた。

「複数の魔法を同時に操るマルチキャスターってやつですか?」

「ゼピュロスには既にロージア・エスランというマルチキャスターがいるのに……生徒の中にもう1人……?」

 ノトス騎士団の3人の声にルゥとイルヴィアは顔を見合わせ小声で会話する。

「グーテスには色々教わっておいて、あんま気にしてなかったけどよ……やっぱあいつも化け物じゃねーのか?」

「アタシがいうのも何だけど……グーテスもヤバいよ。……だってマナの蓄積量も操作の精密さも普通じゃないもん。……ウチのロージアだって三つが限界だって言ってたのにグーテスは5人分の防御をしながら周囲探知と攻撃してたもん……」

「シャルティオもあいつのおかげだしな……どこぞの魔王と姫と比べて教え方うめぇし……」

 2人は隣でフラムが観ているシエルの視点へと目をやった。



 シエルは相変わらず木の上で身を隠しながらセレナたちを探していた。

「広いし中々見当たらないね……」

 周囲を見渡していると突然全身のシールドが効力を失う。

「ヤバい……効果範囲外だ!」

 慌てて魔道具が指し示す方角へ飛びだす。木から木へと移って行きやがて方角を指し示すヴィジョンが視界から消える。

「びっくりしたぁ……急に視界に霧がかかってシールドも全部消えた……これ回復させないといけなのかな?」

 程なくシールドが自動で生成され全身を覆う。

「範囲外で消えた分はちゃんと補填されるんだ。回復させないといけないのは相手に壊された時だけなのかな?」

『そうだろうな。でも範囲外で攻撃したら直接ダメージで危ないからやめておけよ』

「そうだね。……自分も当てられないように注意しなきゃ」

 同じく効果範囲収縮の難を逃れたパーティーもこの特殊な効果について気がついたことがある。

「もしかして……範囲外で少しでも当てられたらボスの攻略ができるのでは?」

 全く勝ち目がないと思われていたシエル攻略の糸口が見えたことで残っていたパーティーは希望を見いだす。ボスモンスターを倒せるかもしれない、と。

「シエルさんの攻略方法がもう一つ浮かびました」

 効果範囲へ退避しグーテスのシールドが自動回復するのを見てソルフィリアも他のパーティーと同じようなことを口にする。

「場合によっては最初の案を効果範囲外で行うこともありなのでは……と」

「でもシエルのスピードに負けちゃわない?」

「はい、ですから……対峙せざるを得ない状況にすることです。挑発には乗ってはもらえないでしょうから……簡単なのは最後の二組になる事ですね」

「正面から戦う状況にするなら周囲を囲んでしまいましょうか?」

「それもありね。リスクはあるけど……それぐらいしないと勝てる気がしないもの」

「10分毎の収縮と考えれば……おそらく試験時間は1時間のはず」

「思ったよりも短期決戦ね。次の範囲の予測はできる?」

「まだそこまでは。……ですが次の範囲収縮後にここからの距離がわかれば予想はできそうです」

「それじゃ距離を測りながら少しずつ移動しましょう。まだ範囲外にいるパーティーがいるかもしれないから、グーテス背後は頼んだわよ」

「はい、任せてください!」

 既に6部隊が脱落。次の範囲収縮までは戦闘は起こらず慎重に進むパーティーばかりであったが、3回目の収縮時にはさらに5部隊が脱落して開始時の約半分にまでパーティー数は減少していた。


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