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転生したら天の声に転職させられたんだが  作者: 不弼 楊
第2章 国割り head out
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encounter Ⅴ

 ふたりの戦いに目を奪われているのはアウローラだけではない。レオが全方向から光の刃を時間差で放ち自らも突撃するがグーテスは全て防ぎ切り隙をみては拳大の岩を打ち込む。レオもそれを躱すか粉砕して回避している。攻守を変えながら絶え間なく動き続けるから見ている方が先に息切れしてしまっていた。

「ふむ……マナコントロールにカドゥケウスの方が追いついていないようだな。もう少し調整が必要か」

「えっ、オリハ⁉︎ 何でここに……」

 テコたちの輪に鍛冶師のオリハが入って来るとソルフィリアが立ち位置を変えて場所を空ける。オリハは無言で礼を言って空いた場所に入る。

「内乱鎮圧に出向いた折に渡した武器を誰も使わずに帰ってきて感想も聞けない俺に何でとはなんだ?」

「ええ……俺に言われても……」

 じっとりとした目でテコに詰め寄るがシエルが間に入ってくるので仕方なく揶揄うのをやめる。

 傍若無人のテコも苦手とする人物は居て、そのひとりが鍛治師のオリハだった。尤も普段は無口なオリハに対して苦手意識はないのだが今は少しだけ後ろめたい事があるからだ。

「テコ、貴様……“天照”と“月読”を模倣……いや、創ったな?」

 シエルがオリハから受け取った二振りの刀を勝手にコピーしたうえ融合させて一つにしてしまっていた。

「ごめんて! 良い剣だなと思ってつい出来心で……」

 謝るテコを見下ろして長いため息を漏らすとテコが見ていない事を良い事に申し訳なさそうな顔のシエルに合図を送る。

「後でお前の刀を持って来い。そいつにも魂を打ち込んでやる」

「……おお、許してくれるのか?」

「許すわけないだろ? 一生分の貸しだ」

 そう言ってグーテスの試合に視線を向けた。


「あの金髪の剣士……あれはグラディウスじゃないか。あれを扱える奴がいるとは」

 オリハは独り言のつもりだったが隣で聞いていたユリウスが得意満面で答える。

「そうさ、あれはかの名剣グラディウス! ただの光属性持ちではなく選ばれた者だけが扱えると云われる伝説級の武器だ」

 自慢された事に腹が立って言い返そうとしていたテコよりも先にオリハが反応する。

「そんな事になっているか?」

「帝国内で受け継がれる数ある伝説級武具の一つだ。……ん? そんな事?」

 何とも言えない表情のままオリハがユリウスに謝る。

「すまない。100年ぐらい前だったか……グラディウスを含めいくつかの武具を当時の皇帝に譲った。賭けに負けた代償にな。イカサマをしている事はわかっていたがタネが分からず終いで腹いせに駄作ばかりを渡したのだ」

「駄作……?」


 聞きたくもない秘話を聞かされて適当な事を言うなと憤慨しているユリウスを尻目にオリハの解説はレオの攻撃と共に続く。

「あれは光のマナを集める事によって威力が増す、いわゆる魔剣だな」

「魔法剣とはどう違うのですか?」

 魔道具製作に興味を持ち子供たちと共にオリハを師事するソルフィリアが尋ねる。

「魔法剣は本人の魔力を剣に伝えて力を発現させるのに対して魔剣は剣自体の魔力で魔法やなんらかの効果が発現する」

「ではあの剣は光のマナを自身で集めて刃を発している……凄いとは思いますが光のマナがなければ……」

「そう、ただのナマクラだ。だがグラディウスは光属性の剣士からであればその力を無限に貪り、あいつのように光の刃を出すことも切れ味を増すことも出来る」

「持ち主のマナを吸い取るのですか?」

「呪いの魔剣じゃねぇか」

「だからあいつにくれてやったんだ。その時の皇帝は光属性持ちだったからな」

「殺す気満々か? 怖ぇよ……」

 レオの戦いぶりは力を吸い取られている様には見えない。それどころか魔剣の力を存分に引き出して戦っているようにも見える。

「武具も長い時を経れば意思を持つモノも現れるが魔剣は特にその傾向が強い。互いに信頼しあっているのか? 今日みたいな晴天であればグラディウスは最高の力を発揮できる、が……これは理論値以上の力を引き出しているようにも見える」

 レオの攻撃は激しさを増していく。グーテスの守りは強固であることに加え反撃のスピードも速い。徐々にペースを狂わされていく感覚に剣士としての勘が警鐘を鳴らしグーテスに決定打を出させないよう間を取っている。

 だがそれはレオの方も同じで決定的な攻撃どころかグーテス本人に傷のひとつも負わせていない。ジリ貧の状況に焦りは禁物と自分に言い聞かせ隙を伺っているとある事に気が付く。

——こちらが攻撃を停めると防御を解いている……?

 距離を取るとグーテスが展開する薄い翠の輝きが消えていることが分かる。

——展開スピードが尋常ではない……それなら!

 もう一度突進するとグーテスの守りは一瞬で四方を固めてどの角度からの攻撃も防いでしまう。同じような展開であったがレオはすぐに距離を取って離れてしまう。

「おらぁ、グーテス! いつまで守ってんだっ! お前も突撃しろ!」

 ヘルマをはじめとした観客が外からヤジを飛ばしてくる。

「簡単に言わないで下さいよ! めちゃくちゃ早くて上手く当てられないんです!」

 余所見をしたグーテスの隙を見逃がすはずもなく間合いを半分の距離まで詰めるとこれまでよりも二回りも大きい光の剣を放つ。

「【闇を乖離する光(レイ・グラディウス)】」

 光の剣はグーテスの障壁に突き刺さるとヒビを入れ尚も勢いは衰えずに打ち砕かんとする。

——マズい!

 破られると一瞬で判断し身を捩って回避すると光の剣は真っすぐに観客の方へと向かっていく。観客の前にも魔力による防護壁が張られているが、グーテスの障壁を破りかけた程の威力を持つ光の剣を防ぐことなどできないだろう。

 その剣が向かう先にはアウローラたちがいた。

「しまった⁉ アウローラ‼」

「ふんっ!」

 グーテスは光の剣の軌道に幾重にも魔力障壁を立てて威力を削ぎ落とそうとする。スピードは落ちたが勢いは衰えず、1枚、また1枚と障壁を砕く音が響く。

「きゃあああっ!!」

 最後の1枚を砕いてアウローラの目の前で剣は結界に突き刺さったまま止まった。

 アウローラの目の前にはシエルとソルフィリアが庇うように立っている。光の剣も結界に押し返されるかのように離れて霧散する。

「あ……危なかった……。お、お前ら! アウローラに何かあったらどうするんだ⁉」

 激昂するユリウスのいうとおり間一髪であった。流石にファウオーも肝を冷やし気持ちを落ち着かせようとしている。

「シエルとフィリアは反応出来ていたしグーテスが防いだ。問題ないだろ?」

「何をバカな事を……」

 テコとユリウスが口論を始める隣でアウローラは腰を抜かし座り込んでいる。それをソルフィリアが介抱した。しばらく呆然と立ち尽くしていたレオが我に返りアウローラたちの元へ駆け寄る。

「済まないアウローラ! 無事か?」

「は、はい……」

「レオ! 何やってんだ⁉ この結界のおかげで助かったけど万が一の事があればどうする気だ⁈」

「あれあれぇ? 観客に危害を加えるような戦い方はせずに勝てるっていってなかったかぁ?」

 テコの煽りに怒りの眼を向けるがそれはそのままレオにも向けられる。

「いつまで遊んでいるんだよ? こんな茶番はさっさと終わらせてくんないかな?」

 レオも厳しい表情で振り返りグーテスを見る。

「彼は強い。君もそれを見極められないようでは帝国の軍師失格だな」

「お前っ⁉」

 グーテスの間合いギリギリまで近づき剣を構える。

「君は強い。だからこの一撃で終わりにしよう」

 剣を両手で高々と掲げると光の粒子が剣に集まっていくのが見える。

「私の最高の一撃を受けきれば君の勝ちだ」

「断れる雰囲気……じゃないですよね……?」

 有無を言わせない展開はいつもの事かと大きくため息をついて諦めると杖を握って構える。

「ふふ……君になら任せても大丈夫そうだ」

 レオが持つ光剣グラディウスは集めた光が折り重なるように白く輝きを増していく。それと同時に強大なマナが凝縮されていくのも感じとれる。徐々に存在感を増して凝視できないほどの輝きを放つ光の剣を構えると場内から音が消えた。

「【光の剣グラディウス・ルーシス】」

 レオが踏み込むと同時に観客を守っていた結界が岩の壁に変わりグーテスたちを覆い隠してしまう。

 何も見えなくなった岩壁の向こう側からは激しい激突音が聞こえる。

「グーテスの障壁が割れるときの音……」

 シエルのつぶやきと共にエーテルで創生されていた岩壁が崩れて消えていく。

 霧散したエーテルが晴れていくと中には大の字に横たわるグーテスと膝をついて蹲っているレオの姿があった。


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