01:プロローグ
「ブレイボール!」
僕は地方の少年野球大会のマウンドに立っていた。
照りつける熱線がキャップを貫通して僕の肌をじりじりと焦がしていく。
「はぁ……はぁ……」
3回を投げたところで、僕は腕に力が入らなくなっていることに気がついた。動悸がいやにうるさく感じる。耳に栓をしているみたいだ。
風景が色を失っていくのを感じる。
そのまま、僕はマウンドに倒れ込んだ。小学四年生の、暑い夏のことだった。
◆◆◆
「お子さんにこれ以上直射日光下での激しいスポーツを続けさせることは、困難かもしれません……」
「そんな……」
病室で、僕は窓の外の小鳥を目で追いながら、医師と母親の会話を遠くの出来事のように聞いていた。
僕はもともと日光があまり得意ではなかった。それでも小学二年生から続けていた野球のため我慢していた事が祟ったのか、その体質が悪化し、外で激しい運動をすることが困難になったらしい。
しかし、そう簡単に諦めることは出来なかった。野球はともかく、僕は体を動かす時間が大好きだった。
「なにか、息子にやらせてあげられるスポーツはないものですか?」
「そうですね……室内競技ならば、問題ないかと」
その後しばらくして、落ち着いた僕は母親と自宅に帰った。
「なにか、野球に似た室内競技ってないの?」
と僕が父親に尋ねると、父親は、
「そうだな、バドミントンは振り方が野球のフォームに似ていると聞いたことがあるけどな……」
と答えた。
この回答が、僕の人生を大きく変えることになる、とは、大げさではなかったと今なら断言できる。
これは、僕・羽田純平が、世界に名を馳せるバドミントンプレーヤーになるまでの物語である。