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【第23話】魔女の正体

「ぐべぅ!」


 間抜けな声を上げながら吹き飛んだ魔女が、背後の壁へとぶち当たる。

 大きく目を見開きながら、魔女は背中を壁にめり込ませ、そして地面へドサリと落ちた。


「やったよアズサ!」

「レイン!」

 僕はアズサに駆け寄って、

 2人できゅっと抱き合った。


「やったねアズサ!」

「ええ、私たちの勝利よレイン!」


 ーーー


 僕たちは魔女をやっつけた。


「アズサ、あの魔女どうするの?」


「気絶してくれてるし、縄で縛って生け捕りにしましょ」


 アズサがポーチから縄を出す。

 え、トドメを刺さないの?!って思ったけど


 そうだねアズサ。非情な人だったけど、僕たちが手を汚す事はないし、後は町の人たちに任せよう。


「僕が縛ってくる!」

 縄を受け取り魔女のもとへ僕は走った。


 魔女は全身水浸し、体をビクンビクンと震わせて、白目をむいて伸びている。


「どうだ自分が水浸しになる気分は!」

 僕は魔女に言ってやる。

 ま、気絶してるんじゃ聞こえないか……ん?

 魔女の髪からポタポタと、滴り落ちる紫の水。


 何これ、血……じゃないよね?

(スンスン……) 甘い匂い?この匂いどこかて……って、そんな事よりロープだロープ。

 僕は魔女を縛ろうとその体に触れた。ーーその時だった。

 ガッ!腕を掴まれ気がつくとーー

 魔女の瞳が、こちらをギョロリと向いていた。


「きゃーーー!!!」

「レイン!?」

「うふふふふふふ……捕まえたあ~」


 邪悪に満ちた魔女の声。


「レイン!!」

「おおっとお!動いたらこの子を首を絞めて殺すわよ!?」

 僕は魔女に縄を奪われ、後ろから首を絞められる。


「ぐ!」苦しい……!

「うふふふふ……馬鹿な勇者御一行……」

 彼女は気絶したフリをして、この瞬間を待っていた。

「でもこれでーー形勢は逆転ね」


 魔女は僕を人質に取りながら、唇に横笛を近づける。

 やられたまずい……「逃げてーーアズサ!!」


 笛の音が鳴り響く。そして部屋の壁を突き破りーー

 3匹の巨大蜂(キラービー)が現れた。


「さあ(おび)えなさい、(すく)みなさい……そしてこの旋律を聴きながらーー


 無残な姿で死になさい!」

 ーーー


 3匹の巨大蜂(キラービー)が、アズサに向かって飛び掛かる。

 部屋の中では野外での様な戦闘はできないーーが、今度はその巨体をフルに使って攻め立てる。


「さあどれだけ耐えられるかしら!?」

 巨大蜂(キラービー)は部屋中を暴れながら(ちから)任せの攻撃を仕掛ける。

「ほらほらどうしたの!?早くしないと増援が来ちゃうわよ?」

 鳴り続ける魔女の笛。

「『幻影のナイフ(イリュージョンナイフ)』!」

 3匹の攻撃を避けながら、アズサも必死に反撃をする。


「ギイイイ!!」


 1匹の頭にナイフが命中、絶命する巨大蜂(キラービー)

 しかし残る2匹によって部屋の隅へと追い詰められる。

 駄目ーーこれじゃあ逃げられない!

「危ない!アズサ!!」


 ーーガッ!

 巨大蜂(キラービー)のけたぐりがアズサを横に薙ぎ払う。

「ッああ!」

 きりもみしながら転がるアズサ。

 巨大蜂(キラービー)は羽を広げホバリングするように飛んですぐに追い付き、

 前脚で転がるアズサを捕獲。上から下へ叩きつけるように、彼女を地面に押し付けた。


「ぐあッ!!」

 地べたにアズサが打ち付けられる。


「さあこれでお終いよ!殺りなさい巨大蜂(キラービー)!!」

 アズサの喉元に牙が迫る。絶体絶命ーーその刹那

「そろそろ……いいかしら」

 アズサがボソリと呟いてーー「!?」


 その直後、巨大蜂(キラービー)がピタリとその動きを止めた。


 え!?

「な、なぜ攻撃しない巨大蜂(キラービー)!?」

 うろたえる魔女、すくりとアズサが立ち上がる。

 にっ、とアズサが微笑して、2匹の巨大蜂(キラービー)、その姿がぐにゃりと歪む。

 ーー!これは……!

 

 アズサがパン!と指を鳴らすと同時(とも)に、消える2匹の巨大蜂(キラービー)

「まさかーー」


「そう、貴女が操っていた巨大蜂(キラービー)

「私の呼び出した巨大蜂(キラービー)


「それは〝幻術(フェイク)〟よ!」


「ーーな゛」

 魔女の顔が赤くなり、しなやかな髪が逆立った。

「貴様あーー!!」


 がぶ!! 

「ーーー!?」

 魔女が発狂し意識を逸らしたその瞬間、僕は魔女の手に嚙みついた。


 甲高い声を上げ怯む魔女。


 ーー今だ!


 僕はヒジで魔女の胸を思いっきり殴ると、素早く懐から抜け出して

「ぐうっ逃すかあ!」

再び捕らえんと手を伸ばす魔女。ーーでも

「逃げないよ!」

 僕は体をぐるりと回して、伸ばした手を魔女の胸へと突きつけた。

 手のひらに触れる魔女の腹、

 僅かな隙間をもって形成される水の魔法ーー


「『水珠(アムル)』!!」


 目一杯の魔力を込めて叫んだ呪文、

 ゼロ距離で放たれた水弾は僕と魔女ーー2人の体を吹き飛ばす!


「レイン!」

 吹き飛ぶ僕をアズサがキャッチ。

「レイン大丈夫!?」

「あ、ありがとうアズサ!……うっ」

 ぐらりと腰の力が抜ける。


 どうやら全力での水珠(アムル)は2発、これが僕の限界らしい……。


 ガラガラと魔女が激突した壁の岩肌が砕け散り、


「げほッ……がはッ……」


 バラバラに砕けた仮面、激しく咽せた口から血を吐き出して、魔女は予想外のダメージを受けて悶えた。


 水溜りの中で藻掻(もが)く魔女へアズサが近寄る。

 ーー!あれは……!


 ずぶ濡れの魔女の髪から、紫色の液体が流れ落ち、

 黒から栗色へ、

 彼女の髪色が変化する。


 栗色の髪、緑の瞳、この人……!


 アズサが魔女に向かって言った。

「やっぱり貴女だったんですね

 巨大蜂(キラービー)の暴走の黒幕にして黒羽の魔女の正体……


 オチバ・フランシードさん」

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