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【第22話】タイマン勝負

「レインを返してもらうわよ黒羽の魔女さん。

 そしてあなたの首も……持ち帰らせてもらうわ!」

 魔女とアズサが対峙して、お互いに睨み合う。

「うふふふふ何よそれ、私の首を持ち帰る?笑えない冗談ね!」


 魔女が脇から笛を抜き、口元に近づける。

「その前に蹂躙(じゅうりん)してくれるわ!」魔女が笛を吹こうとしたその刹那ーー

「やらせない!!」


 ギインーー!!


 金属同士がぶつかる音、


 放たれたアズサのナイフ。

 魔女が横笛(おうてき)で弾いて軌道を逸らし、踏み込むアズサ、構える魔女、


 アズサと魔女、互いの武器がクロスして、

 今、戦いの火ぶたが落とされた!


 ーー


 ガン!!と2人の得物がぶつかり合う。

 アズサはナイフ、魔女は横笛(おうてき)


 先に攻撃を仕掛けたのはアズサだった。


 まずは投げナイフで牽制し、その対処の間に肉薄、

 素早く相手の懐へと潜り込む。


 アズサの作戦は先手必勝、

「相手に何もさせない」事。


 笛で巨大蜂(なかま)を呼べる魔女に対し、

 攻撃は最大の防御だと言わんばかりの速攻を仕掛け、魔女にその機会を与えない。


 1対1(タイマン)での近接戦に持ち込んだアズサは、一気に戦闘の優位に立った。


 ヒュンヒュンと風を切るアズサのナイフ。

 素早い連続攻撃にフェイントを混じえつつ、隙あらば喉笛を掻き切らんと殺気をのせて振り上げる。

 乱れた魔女の髪に切先が当たり、触れた髪先がパッと舞う。

 同時にアズサが踏み込み跳んで、ふわりと宙に舞い上がる。

 空中でくるりと回転をしながら、

 その軌道に斬撃を乗せ、予測不能、防御困難な乱れ斬りを見舞いした。その斬撃は服を切り、そして

 魔女の首を引っ掻いた


「ーーッ、危ない危ない」

 首に赤い線が走って、僅かに跳ねる血、しかし浅い。

「ぐっ……もう一度!」

「どうかしら?!」


 す……凄い……!


 息つく間も与えぬ攻防戦、

 その幾多ものやり取りは僕の目には速すぎて、まるで高速アルプス一万尺。

 キンキンキンキンキンキンキン!

 何やってんのかわからない!


 ーーが、攻めているのはアズサの方だ。

 辛うじてそれが分った僕は、彼女に向かって声援を送った。

「いけー!そこだアズサ!頑張ってー!」

 しかしーー


 ーー


 ギン!!

 ナイフの切っ先を、魔女の横笛(おうてき)が受け止める。


「くッ……!」

「うふふふ……どうしたの、私の首を取るんじゃななかったの?!」


 魔女が苦戦するアズサを煽る。

 始めこそ翻弄され後手に回っていた魔女、

 しかしこの勝負、アズサが全くの有利と言う訳ではなかった。


「接近戦なら勝てる……とでも思ったかしら?

 でも貴女……自分も魔法使いだってこと忘れてない?」

 本領を発揮できないのは、双方(どちらも)同じであったのだ。


 アズサの得意とする闇の魔法 幻影のナイフ(イリュージョンナイフ)は本来、投げナイフによる中距離戦向けの攻撃魔法。

 よってこうも接近して戦っては、その十分な効果をを発揮できない。

 それに慣れない攻撃は徐々に魔女に見切られ始めーー

「ぐッ……!」

「ーーアズサ!」

 アズサは遂に魔女の反撃を許してしまう。


 ドン゛ーー!と魔女の横笛がアズサの脇腹を横ざまに打ち払う。

 よろめくアズサ、硬い横笛は切れ味こそ無いものの、打撃によるダメージがその顔を歪ませる。

「好機ーー!」

 ここぞと攻めに転じる魔女の、2撃目がアズサに迫るーー

 ギィンー!!

「ふふふ……危なかったわね」

 その追撃は何とか防いだーーが

 魔女の攻撃は終わらない!

 ナイフより僅かにリーチの長い横笛に、アズサは追い詰められていく。

 やがてぶつかり合う金属音に、アズサの声が混じり出す。

「ぐっ!」

「あうっ!」

 徐々に劣勢になるアズサ。


 攻撃を繰り出すよりも、逆に受ける方が多くなりーー

 ドッ!!

「あ゛うっ……!」

 魔女の見事な突きの一撃が、アズサの胸に突き刺さる。

 そして蓄積したダメージにより、アズサは地面に跪いた。


 ーー


「どうしたの?もう終わり?」

 見下す魔女。


 全身に横笛による打撃のダメージを負うアズサ。

 も……もう嫌だ!

「もうやめて!!」

 耐えられずに僕は叫んだ。

 アズサがやられ……傷つき苦しむ姿なんて見たくない!


「あぐっ!!」「っあ!!」鼓膜に響くアズサの悲鳴、

 魔女の攻撃がまたアズサに当たる。

 駄目だ……このままじゃ……!

 僕は見るに耐えれず目を瞑る。

 ーーその時だった。


「レイン!!」


 ーーアズサ!?

 アズサが僕に向かって叫んだ。


「私は大丈夫だから!絶対に貴女を助けるからーーだから!

 だから私から目を逸らさないで!レイン!」


 アズサ……!!


「そう?じゃあやってみなさいよ!」

 魔女の蹴りがアズサのお腹にヒットする。

「ぐぅぅ!」

 アズサ!!

 後方へと身体が蹴り飛ばされる。その直後、


 アズサの手元がキラリと光り、魔女に一閃が放たれた。


 苦し紛れの投げナイフは闇の魔法ーー幻影のナイフ(イリュージョンナイフ)

 それは直進しながら4本のナイフに分身しーー


「何それ、同じ技が2度も通じると思って?!」

 ひらりと躱されるーーが、

「狙い通りよ!」


「何!?」


 ザン! バリーーン!


 切れるロープに砕ける鎖。

 ナイフは魔女を通り過ぎ、捕らわれていた僕を解き放った。


「ーーしまった……人質が!」


 アズサが叫ぶ。

「レイン!今よ!!ーー水珠(アムル)を!!」


 僕はアズサの言葉にハッとする。

 そうだーー今なら!


 僕は両腕を前に、左で右手首を固定して正面で構えると、

 精神を集中させて、広げた手の平に魔力をこめる。

 魔法石(ペンダント)が光り、発動する水の魔法ーー


    「『 水珠(アムル) 』!!」


 手の平から放たれた水弾が魔女の身体にぶち当たる。

 水珠(アムル)は魔女へ命中し、その身体を大きく吹き飛ばした!

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