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【第21話】尋問

「ばあっ!!

  ゴホッ!かはっ!……はぁ……はぁ……」


 もうどれだけ経つだろうーー


 バシャン!

 ーーぶくぶくぶく……「ーーー!ーーーー!」

 ガラガラガラ

「ばあっ!!

 ゲボッ!げほごぼっ!ぜー……はー……」


「苦しい?貴女が喋りさえすれば、この苦しみから解放されるのよ?」


 あれから何度も

 何度も水の中に落とされて、


「はあ……はあ……知らないって……言ってるのに……」

「強情ね」

「違っ……!僕は本当にーー」


 バシャン!!

 ごぼごぼごぼ……


「げバっ!あぶっ……ーーはあっ……!」


 窒息の寸前で引き上げられては、また水の中へ落とされる。


 初めこそ、「絶対にアズサが来るまで耐えて見せる!」

 なんて強い気持ちを持ってたけれど、何度も水に落ちるたびにその気持ちは徐々に水に流されて、

 心を体も限界を迎えていた。


 水で体温を奪われてた身体はぶるぶると震えが止まらない。

 水を沢山飲んだせいでお腹は重く、貧血気味になった頭はズキズキと痛んで、

 それは吐き気を催すほどの苦しさに我慢できずたまに吐く。


「ふふふふ……滑稽ね、勇者様」


 魔女はそんな僕をを見てあざ笑うと、再びロープに手を掛ける。


「もうやめて!お願いだからッーー……!」


 これ以上はもうーー死んじゃう……


 僕は思わず涙を流す。


「……うっ……うう……」


「泣いたって無駄よ?」

 泣きじゃくる僕に魔女が冷たく言い放つ。


「ここは巣の奥の更に地下に作った特製の尋問部屋。

 だからどれだけ泣いても叫んでも、誰もあなたを助けには来ない。勿論大好きな()()()もね」


 そ……そんなーー

「やだっ!そんなの嫌!アズサは来る……来てくれるんだからッ!」


 僕は精一杯の反抗心で魔女を睨んだ。

 しかしーー「じゃあ仮に来たとして、先に貴女が死んでたら彼女……どんな顔をするかしら」


「ひいっ……!」


 魔女の殺気に怖気づき、僕は目に涙を溜めながら、大きく横に首を振る。

「いや……お願い……! 殺さ……ないで……」


 ぼろぼろと零れる涙。

 じょぼじょぼと緩んだ股から暖かい水を漏らす僕を見て、魔女は呆れた口調で呟いた。


「何それ、もしかしてお漏らし?……汚ったない。」


 魔女がロープから手を離す。

「なんだかもう飽きちゃった。

 貴女みたいな腰抜け勇者……拷問しててもつまらないわ」


 興を削がれたのか、魔女が僕に背を向ける。


 助かっ……た?


 そう思うと、少しほっとしたのか、全身から力が抜けた。


 疲れがどっと押し寄せて、頭がとても重くなる。

 あれ……なんか……気分が


「ーーどうやら、ようやく薬が効いてきたようね」


 え……?

「な、何それ……」

 くす……り……?


 そういえば、水に濡れたはずの身体が何だか熱い。


 頭の奥がじんじん痺れて……呼吸も少し……

「まさか……この水ってーー」


「そう、これは唯の水じゃないわ、

 水の中には少量だけど、巨大蜂(キラービー)の毒が混ざっているの」

 巨大蜂(キラービー)の毒!?


 魔女は部屋の奥から薬瓶と先端に針の付いた円筒型の筒を手に取ると、

 再び僕の方へ歩き出す。


「初めて巣に入った時に見たでしょう?ウジ虫みたいに蠢く人間達の肥溜まり、

 生き餌の保管室」


 生き餌!?じゃ、じゃああそこに居た人達は……

「みんなその毒でああなって!?」


巨大蜂(キラービー)の毒は神経系に作用する猛毒。

 その毒には打ち込まれた獲物の身体の自由を奪うと共に性感を強烈に刺激して馬鹿にする成分が入っているの」


 そんな……だからあの場所にいた人たちはみんな……

「壊れたら貴女も幼虫たちの餌にしてあげる。

 それとも……苗床の方がいいかしら」


 ひどい!


 酷すぎる……!

「どうしてこんな……残酷なことを……」


「残酷?これは巨大蜂(キラービー)たちの生態、自然の摂理よ?」


「違う!

 だって……だってこれは貴女が巨大蜂(キラービー)を操って……ーーゔッ!」


 魔女が僕の顎を掴んで手繰り寄せる。

「うふふふふ……そうね、確かにそう、

 残酷なのはそれを利用して巨大な巣を作らせた「私」、「人間」の方。


 人間は残酷よ? 


 己の欲望の為なら何だってする。例えば平気で人を欺き殺め、私欲のために尊き森を焼き払う!

 そう……あの町のやつらが……!」


 町の……やつら?


「ーーうっ!」

 突然、魔女が僕の股に手を忍ばせる。


「あら、もうぐちゃぐちゃじゃない……これ、さっきのおしっこじゃ無いわよね?」

 魔女は意地悪な声でそう言って、濡れた指先を僕に見せつけると、また指先を奥に忍ばせる。


「気持ちいいでしょ?」

「嫌っやめて!触らないで……!」


(いや……こんなので……)

 軽く摩られただけなのに、だらしなく、だらだらと濁った蜜が股の間から溢れるように滴り落ちる。


(駄目……止まらないっ……)


「でもね、快楽は時に残酷なの」


 魔女は薬液の蓋を開け、円筒型の……注射器でその中身を吸い取ると

 瓶を捨てて液体の入った注射器を僕に見せつける。


「これは巨大蜂(キラービー)の毒、ダラクキシン。

 その中に含まれる快楽物質を摘出して何倍にも濃縮させたモノ」

「ま、まさかそれをーー」


 魔女は僕の首を掴むと、

「これをを直接体に注射されたら……うふふふ……どうなっちゃうのかしらね」


 そう言って首筋に針を突き刺した。


「強すぎる快楽はやがて痛み変わる、全身を襲う苦痛にあなたは耐えられるかしら?」

 い……嫌だ!!

 魔女が注射器のピストンを押す。

「さあ思う存分……堪能するがいいわ!」


「やだやめて!嫌ああああーーー!!」


 僕が叫んだその時だった。


 バリーーーン!


「ーー何!?」


 注射器が割れる音、そして


「ぎゃああああ!!」

 魔女が突然悲鳴をあげた。


 飛び散る「赤」ーー。

 魔女の手から溢れる血、その手には深々と1本のナイフが刺さっていた。


 魔女がそれを抜いて床へ投げると、ナイフは音も立てずに消えていく。


 幻影のナイフ!?まさかーー


「悪趣味な部屋ね……まさか巣の奥にこんな部屋があるなんて」


「こ、この声はーー」

「ぐうっ……誰だあ!!」


 魔女が後ろを振り返る。

 スタスタとこちらに歩く影

 僕は思わず涙を流す。でもそれの涙は恐怖じゃなくてーー


「貴女が黒羽の魔女かしら?」


 そこには

 夜空の様な黒い髪、燃える紅玉(ルビー)みたいに赤い瞳の少女、


「まあ随分とレインを虐めてくれたじゃない」


 闇の魔法使い


「アズサ!!」


 彼女がそこに立っていた。


「お待たせレイン。遅くなってゴメンね」


 驚く魔女。

「な、何故……この場所がーー」

 アズサが目線を僕へと向ける。


その子(レイン)が首にかけてるペンダント。それには私の魔力が込められてるの」


 アズサがくれたペンダント、それが胸元で一瞬キラリと光る。

(あなたの瞳と同じ、青い蒼玉(サファイア)魔法具(ペンダント)

 私の魔力が少しだけど入ってるから、危ない時にレインを守ってくれる)


 アズサ……!


「まさか、そんな小細工(方法)で!?」


「お陰でこの場所が分ったわ。ーーでも、

 レインにこんな事をして、タダで済むと思わないでよね」


 魔女に向けるアズサの目、

 それは怯えて涙でぐちゃぐちゃな僕とは正反対に、メラメラと、強い怒りで燃えていた。


「黒羽の魔女、貴女を倒して、レインを返してもらうわよ!」

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