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【第17話】溶け合う心

 絶え絶えになる息が、熱くて意識を失ってしまいそうだった。


 僕はぼんやりと思い出す。


 アズサとの特別授業、マンツーマン。

 想像と違った魔法の特訓、


 魔源(マナ)の覚醒。

 その言葉を聞いたとき、僕はその、もっとこう、剣術の初めにやる筋トレだとか心得だとか、そんなハードなやつ、暑苦しいのを想像してた。


 いや、今汗だくで言っても説得力ないけれど

 でもとにかく、それとは全然違ってもっとーー


 もっと濃くて甘くて……気づけば僕はアズサでいっぱいになっていた。


 ーーー


 寝室に置かれた1本の黄色い蝋燭の灯りが、僕とアズサを優しく照らす。


 ついに今夜、僕の魔源(マナ)が覚醒する。


 ベットに座る僕とアズサ。僕が前でアズサが後ろ。

 抱き抱えられるようなそんな体位で、アズサが耳元で囁いた。


「それじゃあレイン、今から私の魔力をレインの中に入れるけど、苦しかったり、痛かったら我慢しないで直ぐに言ってね」


「う、うん。わかった」

 僕はぎこちなく頷いた。


「緊張してる?」

「だって……」


 強制魔源(マナ)覚醒法。

 覚醒者の魔力を非覚醒者に注ぎ込むことで強制的に覚醒へと導く手法。しかし

 その手法は邪道と呼ばれ、

 失敗すれば拒絶反応や精神崩壊なども起こり得る危険なもので


「大丈夫、心配しないでレイン、優しくするから」

 その言葉に少しほっとする。


「大丈夫」僕はアズサからその言葉を聞くと、何故だかいつも気持ちが楽になる。


 そうだ、アズサが言うことなんだから心配いらない。


「じゃあレイン、まずは深呼吸から」


 僕はアズサに言われた通りに深呼吸、

 安心して。その身を任せることにした。


「落ち着いた?」

「……うん」

 頷く僕。


「そしたら私の言う通りに、ゆっくり目を閉じて……閉じた?

 閉じたら私と一緒に呼吸を合わせて。そして感じて……」


「私の呼吸、鼓動、ぜんぶ」


 アズサの……全部?

 目を閉じると感覚が研ぎ澄まされて、そばにいるアズサがより一層近くなる。


 ぴとっ。

(あっ……)

 アズサの手が、優しく僕のお腹に触れた。


 すると、体の中……というか、下腹部がじんわりと温かくなって、


「どう?これが私の魔力」

 アズサの……魔力……


 ぽかぽかした温かさが、身体の周りにまとわりついて

「苦しくない?」

「ううん、大丈夫……」


 もっと苦しかったり痛かったりするのかと思ったけどそんな事は特になく。

 むしろ


「気持ちいい……」


 僕の身体はぬるま湯に浸かってるみたいな温かさ、心地よさに包まれた。


「そう、よかった。拒絶反応は少ない見たい」


 拒絶反応……この感じ、人によっては痛かったりするのかな。でも僕は痛くなかった。だってぽかぽかして気持ちいい。


「じゃあレイン、もっともっと気持ちよくなりましょ」


 アズサが体内(なか)へとその魔力を浸透させる。

「うっ…」

 ぐーーっと圧力が身体に加わる感じ。

 流石に少し苦しいかも。

 でも


 暫くすると慣れてきて僕の体の力は抜けて、とろ〜んとリラックスした状態になった。


 アズサがはぁっ…と吐息混じりの声で言う。


「想像してレイン。私の体とレインの体、……ココアとミルクが一緒になって、溶け合ってそして混ざり合う」


 混ざり合う……アズサとひとつになるってこと?

 わからないけどやってみる。

「んっ……」


 アズサが背中からぎゅっ……と僕を抱きしめた。


 すると僕の心はじゅん……となって、おへその下部がキュンとした。


 アズサの手が下腹部からゆっくりと脇まで上がって来ると、その指先が胸を伝って、そこからぷっくりと突き出た胸の先端に辿り着く。

 ピン

「あんっ…!」


 ーーハッ!

 カッと僕は赤くなる。


 やだ、今変な声出しちゃった


 恥ずかしくなり慌てて口をおさえると

「いいよレイン、声、我慢しなくって」

 そう言ってアズサに手をどかされた。


 再びアズサの指が胸の先端に触れると、びくん!とまた電流が走ったみたいに僕は震えた。

「ここ好きなんだ」


 指先が先端に触れながら、周りをくるくると円を描くみたいに焦らしながら優しく入念に愛撫する。


「んんっ……ん」

 気持ちいい快感が じゅわぁ……と身体に染み渡る。


「はあっん……!」じゅわ……

 じゅわわ……「ーー~ッ……んっ」

 ああん……ッ……

 駄目、無意識に声が出てしまう。


「はあんっ……アズサ、だめ……

 これ……すきぃ……」気持ちいい……


 とろ~んと頭がとろけるみたい。

 呼吸と一緒に波みたいに揺れる心地よさが身体中に流れ込む。

 ゆらりゆらりと波に身体が揺すられて、意識を流されてしまいそう。


「うふふ、レイン、あなた今凄い顔してるわよ」

 か……お?

 つつー……

「んんっ……」


 自分の顔の表情なんか、とても気が回らない。アズサに身体を触れられる度、僕の身体は何度も弾む。


「やん……」

 だめ……

 頭の奥に快感がびりびりと伝わって、段々呼吸が早くなる。

「はぁ……はぁ……」


「可愛いレイン…ほら、もっと感じて」

「だめっ……アズサ……」

 アズサがぎゅっと胸を掴むと、快感が更に強まって

 だめ……これ以上は飲み込まらちゃう……!


 大きな波、溺れる身体。


「あんっ……やっ、あっ……んんっ」

 びっ!

「っあ!」

 身体は愛撫の度に跳ね上がり、いつの間にか僕の心は、アズサの魔力で満たされ染めあげられて、その快感、快楽の虜になっていた。


「すきぃ……そこ好きいぃぃ……あっ!あん……んっ」

「そこ深いぃ……深く…いくうっ……!」


 やあんっ……!

 すきっ……大好きぃっ……!

 身体はもう夢中でアズサを求めて、アズサのすべてを享受する。


「はあ…はあ…」

「はあ…はあ……レイン、聞こえる?」

 ……聞こえる。

 アズサの声、アズサの息継ぎ、アズサも気持ちいいのかな?

 一緒に気持ちよくなってるのかな。


 ざぶんざぶんと押し寄せる絶頂の波、頭の中が体も骨も何もかもほぐれて溶かされたみたいに煮えたぎる熱を欲する身体、

 ドロドロに溶けたマグマのような快楽が、熱く甘く朦朧とした意識を包み込んでいく。


「はぅ……あっ……」

 頭の中は真っ白で

 どんどん意識が堕ちていく。


 沈む……


 沈んで落ちて


 どんどん沈んでーー、

 そして僕は辿り着く。


 深い深い海の底、


 ここは……どこ?


 そこは波も無く熱も感じない暗い闇の中だった。


 何も見えず誰もいない、そんな闇の中でふと、

 僕は何かの「言葉」?不思議な力を感じ取る。

 頭に浮かぶその「言葉」……


「あーーる?」


 無意識に復唱したその刹那、

 ゴッ!!と波の渦に身体が巻かれ、意識が底から意識が押し戻される。


 ん……ぁあっ!


 意識が闇から遠ざかるーー。

(……イン)

 誰?


 ーー「レイン!」


 ハッ……!


 鮮明に意識が戻る。

 火照った身体、ドクン、ドクンと高鳴る鼓動。


「ーーレイン、よかった!」


(アズ……サ…?)

 アズサが僕を抱き寄せる。

「はあ……はあ、よかったレイン、何度も声掛けたのに何一つ言葉が返ってこなくなったから」

 こと……ば……?

 その時僕は思い出す。


(そうだあの時、僕は言葉をーー)


「んあっ……!」

 思い出したその刹那、胸の内から熱い何かが胸の奥から喉元へと込み上げる。

「レイン?!

 !これは……感じたのねレイン!魔法の呪文を……()()()()()を!」


 覚醒の……魔法……?!

 その瞬間

「アズサ……ぼく……!」

 言いたい。

 声に出して叫びたい!!


 そんな衝動に駆られた僕は、押し寄せる快楽に喘ぎながら、アズサに向けて懇願する。

「いい?アズサ……言っていい?!」


 しかし返って来た言葉は無常にも

「だめ!まだよレイン、言っちゃダメ」


「そんな……どうして……!?」

 アズサは首を横に振り、僕の口に指を入れて蓋をする。

「駄目!まだ、言っちゃ駄目

 限界まで我慢して」


 言いたいのに、アズサの指が舌の動きの邪魔をする。

「いや!」

「レイン!!」

「いじゅわるぅ……ん゛っ!」

 アズサが胸を強引に愛撫する。


 でもだめ……動機がとても激しくなって、

 体が熱い……息を吸うのも儘ならない!


「はあ…!はあ……アズサ……もう駄目僕……!」

「レインもう少し、あと少しだから」

 もうだめ、頭がーー

「あっあんあんあぁっ!

 ……っあ!!」


 僕はたまらずに、全身を使って暴れ出す。


「そろそろ限界かしら……じゃあいいわよレイン、言って!」

 ぐんっ!!

「んあ゛っ!?」


「ほらレイン!言いなさい!!」


 アズサの手がめいっぱい僕の下腹を圧迫し、

 限界を越えた僕はその言葉を絶頂と共に吐き出した。

「あーー


     『 水珠(アムル) 』!!! 」



 カッ……!!

 身体中から沢山の力が放出される感覚と共に、

 僕の目の前に風船みたいに浮かぶ大きな水の球体が現れた。


「よかった、魔源の覚醒は無事成功したみたいね」


 アズサが耳元で囁いた。

「水の魔法水珠(アムル)、レインにぴったりの魔法じゃない」


(これが……僕の……?)


 発現した水の魔法の球体は暫くぷかぷかと空中を漂った後、徐々に浮力を失って僕の元へと着地した。


 魔法で出したとはいえ、それは紛れもなく水だった。

 ので当然それに触れた身体は濡れる。

「ーーあらあら、こんなに濡らして、見てレイン、シーツがびちゃびちゃ……レイン?」


 水珠を発した僕にはもう返事をする体力すら残っておらず、うつろな瞳で開いた脚からぽたぽたと滴り落ちる水滴を眺めながら、僕はまだ僅かに残る絶頂の余韻に浸っていた。


「よく頑張ったわねレイン……

 いいよそのまま眠って

 明日に備えて、しっかり体を休めてね」


 僕はアズサに頭を撫でられながら、そのままくたりと眠りに落ちた。

明日7/8 土曜日の投稿はお休みです。次回は7/10 月曜日に投稿します。

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