【第14話】黒羽の魔女Ⅰ
〈巨大蜂討伐依頼〉
依頼を受けた僕とアズサは、屋敷の応接室に集まった町長、それからローブたちと共に、
巨大蜂討伐の為、それぞれ有益な情報を出し合った。
名付けてーー巨大蜂の巣撲滅会議。
「そうか……!まさか巨大蜂の巣がそんな場所にあったとは……!」
僕たちが提示した情報は、巨大蜂たちの生態とその巣の在処。
「蜂達の巣は山林の隆起した土壌にあって、
入り口は土で隠されていて、外からは見つけ難くなっています」
「成る程どうりで……だから今まで奴等の巣穴、そのハッキリとした場所が掴めなかったわけだ」
これまでに巣窟から町に戻った者は1人もおらず、こうして生還した僕たちだけが、唯一敵のアジトを知る生き証人で
「でもアズサ、あの時よく出口がわかったね」
「それはねレイン、理由は巨大蜂の巣の特徴、その構造に秘密があるの」
蜂達の巣、それは入り組んだ迷路に見えて、実はとても合理的かつ、機能的なものだった。
その内部は成虫が効率的に幼虫の世話ができる様、どの部屋、どの通路からでも行き止まる事なく巣穴を一周できる、そんな構造になっていて、
(そうか、だからーー)
「だから通った通路が行き止まりなら、そこが巣窟の出口ってわけ」
2人の会話を、町長たちは感嘆の眼差しで聞いていた。
「流石生還者の情報だ、まさか巣の特定や内部構造まで……であれば当然、あの巣の主人、その存在もご存知でありますな?」
「え?」
巣の主人?なあにそれ
僕とアズサがきょとんとすると
「何?奴の存在を知りませんか!」
町長は驚いた顔をして、そして「そうか……だから帰って来れた……」
そう言って失礼にも目の前で、「はぁ……」と大きなため息を吐いた。
「巨大蜂だけなら……そう苦労は致しません」
ってことは、他の問題があるって言うの?
僕とアズサがそう聞くと、町長がこくりと頷いた。
「獰猛な巨大蜂、その群れを使役し操っている者がいるのです。
名を『黒羽の魔女』
我々はそう呼んでいる、この災厄の元凶です」
「「黒羽の……魔女……?!」」
「巣窟で笛の音なんかが聞こえませんでしたか、それは魔女の使う強力な闇の魔法で……」
笛の音?……そういえば!
僕はあの巣窟内で、聞こえた音色を思い出す。
「ねえアズサあの時の!」
直後、アズサも思い出した顔をする。
「そういえば聞いたわね、思い出した!
苗床の部屋で巨大蜂と戦って、それを倒した後に巣窟の奥から聞こえてきた笛の音」
そう、あの笛の音が聞こえた途端、倒した筈の巨大蜂が立ち上がってーー
「おお、やはり聞きましたかあの音を」
「オーキンスさんその魔法使いの事、もっと詳しく教えて頂戴!」
しかし情報を求めるアズサに対し、町長は残念と首を振る。
「それが……我々にも今言った情報以外、その実体を掴めていないのです。
幾度か奴は町に巨大蜂を引き連れてやってきました……
しかし顔は仮面で隠しているし、長い黒髪の女ということしか……」
なんて拙い情報だろう。
(そんなんじゃ何も分からないよ)
そう僕が思っているとーー
「黒髪の女……闇の魔法使い……
もしかして!」
アズサがハッとした顔をする。
「何アズサ、知ってるの?!」
「いいえレインでもね、この黒髪に闇の魔法って特徴、それは黒の国、ブラクリーの人間が多く持つ特徴なのよ」
それを聞き、僕も同じくハッとする。
「黒の国?!」
そういや……僕が黒の国で出会った人たち、アズサもあの黒い男も、それは真っ黒な黒髪だった。それに闇の魔法……?
「ーーまさか!
アズサそれって……!」
「そう、私が探してるあの人物も、黒髪で闇の魔法を使う魔法使い」
暗闇の魔法使い!
アズサはブルブルと拳を震わせ、にゃりと唇の端を吊り上げた。
「ねえレイン私この依頼、断然やる気出てきたかも」
内容の整理のため1週間ほど投稿をお休みさせて頂きます。
次回は7月7日からの投稿を予定しています。