【第13話】返答はいかに
「さあレイン、早くここから出て、あの町長にお礼参りよ!」
差し込む光は煌めく太陽、
外の渇いた空気に導かれ、僕たちはこの巣窟から抜け出した。
巣穴の外は山林だった。それも酷く荒廃した。
しかしそのお陰で上空の見通しは良く、
太陽の方角を頼りに僕たちは無事下山することができた。
※※※※※※※※※※
「本っ当にッ、申し訳なかった!」
町に戻った僕たちに、町長たちは土下座し謝罪。
盗み取ったお金を返し、これには深い事情があったのだと、町長は震える声で訳を話した。
「この町はあの蜂たちによって、苦しめられているのです」
ナターリアの町アルヘン、その山林に住まう巨大蜂によって、町は1年ほど前から襲撃を受けていた。
「奴等はとても獰猛で、山の森林を食い尽くしても飽き足らず、ついには我々の住む人里にまで降りてくる様になったのです」
元々山林に生息していた巨大蜂だが、それほど危険な種ではなかったらしい。
「しかしある時急に狂暴化して……」
巨大蜂は瞬く間に畑の作物を食い荒らし、それが尽きると遂には人間まで捕食するようになったという。
だから町人たちは団結してーー
「定期的に旅人を捕らえては、自分たちを守るため、虫たちへの生け贄にしてたってわけね。」
それを聞いて僕は怒った。
「それで僕たちをあんな目に!?酷い……そんなの理由にならないよ!」
アズサも同意と頷いた。
アズサも町長に言ってやる。
「あなたたちも可哀そうかもしれないけれど、関係ない私たちを巻き込むなんて信じられない、
おかげで死ぬところだったんだから」
「しかし貴女方は帰ってこられた」
町長は土下座のまま懐から紙を取り出すと、それをすっ、と僕たちに差し出した。
〈討伐依頼契約書
報酬/1000万ゴールド〉
「報酬は必ず……」
「なっ……!」金に物を言わしたその態度、
僕はその胸ぐらをつかむと、思いっきりビンタした。
「ふざけんな!
人をあんな風に騙しておいて、今度は助けろだ?そんな虫のいい話がありますか!」
町長の金的を蹴り飛ばし、それを見たローブ達が目を覆う。
「お前たちなんか、全員蜂に食べられちゃえばいいんだ!ねえアズサ」
「報酬は1000万ゴールド、これ、偽りじゃないわよね」
アズサ!?
契約書を手に取って、アズサが町長にそう言った。
「ちょっとアズサ、何言ってんの?!」
僕はアズサに詰め寄った。
「そんな虫退治くらい……自分たちでやれって話じゃない!」
「まあ落ち着きなさいよレイン、その虫退治で1000万ゴールドよ?」
「そ……それは……確かに凄いけど、でもアズサ……!」
「よく考えてみてレイン、これだけお金があれば、この先ずっと贅沢し放題なのよ?」
さっきまで怒りに燃えていたアズサの瞳は、いつの間にか報酬の釘付けになっていた。
そして僕もーー
「贅沢し……放題……?」
「そうよレイン、想像してみて」
その言葉に、僕はふと昔のことを思い出す。
蘇るあの遠き昔、幸せだった日々……
僕はそれを思い起こすと、ほんわかふわふわした気持ちになった。
目頭が熱くなり、瞳を潤ませながら僕は謳った。
「贅沢……万歳」
アズサと町長が横で固く握手をかわす。
「町長……いいえ
Mr.オーキンス、では交渉といきましょう」