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【第12話】襲い来る牙

「ギィイ゛ィ゛イ゛イ!!」


 幼虫の鳴き声が、洞窟中に響き渡る。


 その声に応える様に、ブーン……と奥から奇妙な音が。


 「もう……だから言ったのに……!」

 安に問わずと、その頭を抱えるアズサ。


「来るわよレイン!」

「え?」


「来ないで!!」


 胸を押されたその刹那、

 ゴーーーーーーーーーッ!!!


 突然の風が、2人の間を突き抜けた。


「な、何?!今の風!」

「唯の風じゃないわ!これはーー」


 ブーンと震える風の音、苔の光に照らされて

 その正体が露わになった。


「さっきの風はあいつの仕業よ!」


 けたたましい羽の音、

 光を反射する無数の複眼、闇色の鎧甲に鋭い毒針。

 こ、こいつは……


 「「 巨大蜂(キラービー)! 」」


 それは2メートルはあるだろう、巨大な蜂のモンスター!


 思わぬ敵との遭遇に焦る。

「また来るわよレイン!」


 攻撃を躱された巨大蜂(キラービー)が、旋回して体勢を立て直す。

 アズサはポーチからナイフを出して、そして構えた。


「まさかーー迎え撃つ気!?」

「レイン、そこの幼虫を手で持って!私が合図したらそれをあいつに投げつけて!」


 えっ……幼虫(これ)を!?


 足元でうねるラグビーボールくらいあるその幼虫は、ドロドロべたべたの粘液で纏われて、

 嫌にテカって、脈打つ様に全身をくねらせる。


「ギャオオオオ!!」

 (はね)を高速で動かして、突撃してくる巨大蜂(キラービー)


「何してるのレイン!早く!」

「だ……だってアズサこんなの……!」

 こんなの触るなんて絶対にムリ!でもーー


 ここで死ぬのはもっと無理!


「わあああああ!!」


 僕は叫んで覚悟を決めるとーー

「今!」

 

 幼虫(それ)を掴んでブン投げた!

「ーーギュィ゛イ!?」


 寸前まで迫った巨大蜂(キラービー)が、急遽進路を変えて壁にぶち当たる。

 や、やった?!

「厄介ごとの種とその習性、逆に利用させて貰ったわ!」

「やっつけたの!?」

「いいえまだよーー」

 え


「レイン伏せて!!」


 咄嗟に従う。するとアズサの放ったナイフが一閃、僕の頭の上ギリギリを掠め、

 巨大蜂(キラービー)の頭に突き刺さった。


「ギャウウウ!」ズシャンーー……。


 やったと思っていた巨大蜂(キラービー)、それが僕の目と鼻の先にまで、毒針を突き立て迫っていた。


 崩れ落ちる巨大蜂(キラービー)

 危機一髪、アズサのナイフで助かった。


「モンスターとの戦闘は頭を潰すまで気を抜いちゃダメ、特に昆虫類は生命力が強いから」

「ご……ごめんアズサ、ありがとう助けてくれて」

「当然よ」


 モンスターの特性なんて、今まで考えてもみなかった。


「行くわよレイン」

「あ、うん!」

 ……って待ってアズサ忘れ物!ナイフが蜂に刺さったままじゃない


「……あれ?」


 いつの間にか巨大蜂(キラービー)に刺さったナイフは消えて、アズサの手元に戻っていた。

「アズサ、さっきのナイフって」

「ああさっきの?あれはーー」


 ピローン……ピロロローン……


 え……?

「何かしら」


 部屋から出ようとした直後、巣穴の奥のどこからか不思議な笛の()が鳴り響く。

 (笛の……おと?)

 その時だった。


「! アズサ、倒したはずの巨大蜂(キラービー)が!」

「うそ、コイツまだやる気!?」


 瀕死であるにも関わらず、起き上がる巨大蜂(キラービー)

 そしてその体から発せられた謎の異臭が、2人の鼻を刺激する。


「ーー!?臭っ……何この臭い!」

 それは洞窟の中瞬く間に広がった。


「まさかこの臭いはーー」

「アズサ知ってるの!?」

 洞窟の奥から聞こえる無数の羽音(はおと)


「これは巨大蜂(キラービー)の警戒フェロモン!まずいわよレインここにいちゃーー」

 その臭いに引き寄せられて、仲間が集まってくる!


「逃げるわよレイン!」

「でもアズサ、逃げるってどこにーー」

「どこでもよ!」


 1匹ならともかく、こんな逃げ場の無い洞窟の中、集団で襲われたらお終いだ。

 とにかく僕らは走って逃げた。

 途中沢山のやわらかいものを踏んだけど、それを気にしている余裕は無かった。


 早く洞窟(ここ)から出ないとまずい。

 なのにどうして、洞窟は迷路みたいに入り組んでで、まったく出口が見つからない!


 あっちもこっちも分かれ道、僕らがあれこれしているうちに、集まってくる巨大蜂(キラービー)


「駄目アズサ!こっちからも来る!」


 曲がり角……

「そんな、行き止まり!?」


 そして遂に僕らは追い詰められた!


 大群が牙をむく。

 もう駄目だ!お終いだ     死


「わあああああああーーむぎゅ!?」


 悲鳴を上げる僕の口をアズサの手のひらが蓋をして黙らせる。

 んん?!


「……やっと、見つけた!」


 巨大蜂(キラービー)の牙、それが到達する寸前でぴたりと止まる。


 え、どうして!?

 襲って……来ない?

「ふぅ……危機一髪、私の魔法が成功したのよ」

 アズサの魔法?!それってどんな……


「『幻術(イリュージョン)』。

 相手に幻覚の魔法をかけて、目の前に幻影(まぼろし)の壁を出現させたの。

 巨大蜂(キラービー)達には目の前の私たちが、一瞬で消えたかのように見えてるはずよ」


 すごい、そんな魔法がーー


「で、でもアズサ、まだ肝心の出口が見つかってないんじゃそのうち僕らーー(見つかってまた襲われる……!)


「ところがどっこい、出口はもう目の前にあるのです」


 え?


 そう言ってアズサが行き止まりの壁をバン!と叩くと、壁が崩れて光が差した。

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