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80.間諜と鬼とゾクン

今日は何話か投稿予定です。

退()け!

頼むから退いてくれ!

何でこんな……小雪(シャオシュエ)

返事をしてくれ!」


 大雪(ダーシュエ)が長らく探していたらしい妹へ駆け寄ろうとするも、先程の丞相と同様、近衛に阻まれてしまいました。


 しかし阻まれながらも必死で倒れた妹に手を伸ばし、名を呼び続けます。


 それはそうでしょうね。

この宮に滴雫(ディーシャ)貴妃として訪れたのは、()()()()()のですから。


 彼はここに訪れる少し前、私と入れ替わった小雪(シャオシュエ)に気づいてしまいました。

薄暗い中で、既に黒の薄衣を頭に被っていたのですが、そこは流石と褒めて差し上げましょう。


 なので背後からドカッと一発。

眠って頂く事に。


 その可能性も含めて変装中の彼女には(グイ)の双子をつけて移動していましたが、鮮やかなお手並みでした。


 私ですか?

少し離れた物陰から傍観してましたよ。


 大雪(ダーシュエ)も長らく間諜をしていたからか、はたまたそれ以外の後ろ暗い何かをしていたからか、戦闘能力は高いです。


 しかしあの双子には、仮に1対1であっても彼が敵う事はありません。


 私と出会った当時、彼らはその道でもかなり有名な暗殺組織に属し、弱肉強食よ世界で育っていました。

元々彼らに名は無く、先の者が使っていた呼称を継承していく制度で、その中でも抜きん出た強さを表す(グイ)と呼ばれていたのが、あの双子達です。


 どうやって先の者から呼称を継承するか、ですか?

ご想像にお任せします。

ただ先の者は、2度とどんな呼称も名乗る事はない、とだけ。


 ああ、彼らを引き抜く直前、何故か、つい、うっかり、組織が消失してしまったんですよ。

お陰で彼らの経歴は綺麗です。


 ご利用者が多くいらした秘密組織でしたからね。

無くなってしまうと全てが無かった事になる方が、諸々の要人にとって都合が良かったのでしょう。


「ヒッ……」


 おや、その場から逃げ出そうと踵を返した殺人未遂犯が、背後から忍び寄っていた私達に気づいてしまいました。


 なんて思った一瞬後には、前髪の分け目が右寄りの右鬼(ヨーグイ)が彼女の背後に回って後頭部を軽く掌底。

脳が揺れたのか、クテリと崩れ落ちてからの、俵担ぎ。


 相変わらず素早く丁寧な仕事運びです。


 彼と全く同じ容貌で、前髪の分け目だけが逆の左鬼(ズォグイ)は顔色1つ変えません。


 こちらは私の隣で、しっかりと護衛してくれております。


「まあ、随分騒がしいですね。

そんなに血相を変えてどうしたのです、大雪(ダーシュエ)?」


 私の言葉に踵を返した彼は、あら?


 それこそ鬼の形相というやつを顔に貼りつけて、大股で真っ直ぐ私に向かって突進です。


 胸倉でも掴もうとしたのでしょうが、そこはうちの左鬼(ズォグイ)が取り押さえ、背後から蹴って転がします。

力の差が歴然としていますね。


「ぅぐっ、何でだ!

何であんたの代わりにシャオシュエが殺されてる?!」

「それでは私が殺されるはずだったと、言っているようなものですよ?」

「うるせえ!

あんたの事を主として誠心誠意仕えてたんだぞ!」

「知っていますよ?

だから何です?」

「はっ……ちょっと、触らないで!

降ろしなさいよ!

私は関係ないわ!」


 ダーシュエの声が余程騒がしかったのか、何かを訴えようと口を開いたところで、金切り声が右鬼(ヨーグイ)の肩から遮りました。

お尻をこちらに向けた声の主がバタバタしていますが、彼は力持ちですからね。

拘束は弛む気配がありません。


「関係ございますよ。

少なくとも昨日、私をそこの枯井戸に突き落として、殺そうとなさいましたでしょう」

「だったらどうして落とされたあんたがピンピンしてるのよ?!

証拠を出しなさいよ!」

「残念ながら、貴女が私と落ち合ってからの一部始終を、複数の者達が確認しております。

陛下、皇貴妃、近衛長。

それから(シュー)侯家当主、並びに次期当主。

そして既に罪人として、余罪含めて捕えている(フォン)家の面々も」


 事の成行を見守っていた陛下に目配せすれば、陛下の指示で猿ぐつわを噛ました者達が引っ立てられてきます。


 既に私にはめられた事に気づいたのか、睨みつける元義家族達など歯牙にもかけず、丞相の視線は私に釘づけですね。


 しかしその視線は冷ややかなものではなく……どことなく嬉しそう?

何とはなしに背筋がゾクンとしましたが、これ、いかに?

いつもご覧頂きありがとうございます。

よろしければ、ブックマークやポイント頂けるとやる気スイッチが入りますm(_ _)m

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