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サンタに捧ぐ贈り物  作者: 春野わか
9/16

「ブラボー!どう?皆の実力?マシュー、御目が高ぁい。因みにラップが出来るトナカイも少数派よ」


 マシューは確かに異常なハイテンションと押しの強さに圧倒されていた。

 でもラップやコーラスの才能がソリを引くのに何の関係があるのだろうか。

 そこに力を置くべきなんだろうかという疑問が湧いてくる。


 突然マシューの頭の中で『Rudolph the Red-nosed Reindeer(赤鼻のトナカイ)』の歌が流れ出した。


「決まって良かったわね。もう今日からアンタはあたし達のマイメンだもの。さあ契約書よ」


 前肢を高く上げて契約書に蹄で印を押すルディのクルー達。

 マシューに回ってきてサインしながら考えた。


 そうだ、いつもルドルフは泣いていたと歌詞にあるが、「ピカピカのお前の鼻が役に立つのさ」とサンタは長所として認めるのだ。

 それで奮起したルドルフは見事に役に立ってみせた。


 サンタはポジティブで包容力が無ければならない。

 並の人間が短所と見るところを長所として捉えられるかは重要だ。

 ルディwith親衛隊と出会えたのは運命なのだろうとマシューは考える事にした。

 サインし終えて、ルディは渡された契約書を確認しながら言った。


「まあ、あたしもあんたも初心者同士だからワクワクするわよね。クリスマスの日が待ち遠しいわ。今まで溜まったエネルギーを全開にして挑むわよ。あんたが振り落とされなきゃいいけど。蹄が鳴るわ」


「初心者……」


 何故、最強なのに残っていたのか本当の理由が分かった。

 マシューは後悔したが、今更契約を撤回出来る訳が無かった。


────


 真っ赤なポインセチア。

 赤い実を付けた柊。

 降り積もる雪。

 夜になれば星の煌めきと競いイルミネーションが町を輝かせる。

 大小様々なツリーにキラキラしたオーナメントを飾りソックスを吊るす子供達。


 通りのショーウィンドウに飾られたサンタの衣装のテディベアが微笑む。

 ピスタチオ、パウダーピンク、フロスティブルー、レモンイエロー。

 パステルカラーで溢れ返る童話の世界に似た町並みが、クリスマスを迎える準備で浮き足立つ。

 

 ターキーの焼けた匂いが早くも香ってきそうだ。

 クリスマスが鈴の音を鳴らして近付いてくる。

 マシューはカレンダーの日付に✕を付ける度に胸が高鳴りそわそわと落ち着かない。


「マシューのサポート役、私が担当していいって許可が下りたわ」


 クインの報告が何よりの励みだったが、自分がミスを犯したら彼女のキャリアに傷が付くんじゃないかとネガティブになってしまう。

 トナカイ達と親交を深める為に飼育小屋まで何度か足を運んだ。

 彼の姿を認めるとコーラスで迎えてくれる。

 驚く程ポジティブだが、全員クリスマスにソリを引いた経験は無いらしい。

 そのポジティブさはどこからくるのだろうと首を捻った。


「あんた、小さな事気にしてんじゃないわよ」


 ルディの猛烈なお喋りに相槌を打ちながら、親衛隊のコーラスとラップ、ドゥーワップで励まされて気持ちが上向く。


 ルディ達と密かにソリを走らせる練習をしてみた。

 力の半分もルディは出していないと言うが、ソリは問題なく飛びマシューの不安は一掃された。


 クリスマスイブまで後1日となった。

 

 

 

 

 


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