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#2 いってらっしゃい

目が覚めると眩い光が網膜を刺激した。数十秒で目がようやくなれてきたところ、眼前に実体のない光の球体のようなものがプカプカ浮遊していた。それに触れようと手を伸ばす。


『やっと起きましたか。成宮翔。』


翔の脳内に直接不思議な声が響いて、体をビクッと振るわせる。


「うわ!なんだ急に!」


『ここはいわゆる死の世界と言うものですよ』


正直心当たりがある。きっとあのトレーラーに跳ねられたのだろう。すぐに翔は落ち着きを見せる。


『・・・』


光の球体は少しの間をとった。もしかしたら、俺の心の中は光の球体にはお見通しなのかもしれない。ここは現実世界ではないのだろうから。心なしか、翔の死の実感を分かち合うかのよう、それも今までより淡く光を放っているように見えた。


『すでに落ち着いているようですね。流石は成宮翔。』


『ありがとう。で、あなたは誰なんだ?」


『予想はついているでしょうが太陽です。』


「神様じゃないんかい!」


翔は思わず声を大きくした。


『嘘です。神です。』


実体はない光の球体だが無邪気な笑顔が浮かぶ。


『冗談はさておき、私の名前はソーサラー。これからあなたが生まれ変わる世界では神として崇拝されています。』


「生まれ変わる世界?」


『そうです。あなたは生まれ変わるのです。その世界には、あなたの友人たちも生まれ変わっていますしきっと楽しめるでしょう。』


「あいつらがいるのか!?」


『もちろんです。あの方々はあなたより先に向こうの世界へと行かれました。」


『ですが、先に言っておきましょう。あの方々はシュート帝国と言う大国に転生されました。しかし、あなたはホルム王国という向こうの世界では一番で、それ以上の大国に転生されることになります。』


「生まれ変わった先の国が違うってこと?」


『そういうことです。つまり探すのは大変ってことですね。ちなみに彼等は全員シュート帝国にいかれてますし、行く前も全員でここに来てましたのですぐに彼等は合流するのでしょうね。』


「俺だけ仲間はずれってことかよ!」


『まあまあ。会うまでの時間が長くなるだけの話ですから。死ななければね。』


「え?今なんて言った?」


思わず翔は聞き返して。まさか死ぬとか言ってないよな?


『あちらの世界は、魔物など沢山いますし戦争もあります。治安自体も良くないですし、治安の良い日本に住んでらっしゃったあなたには少し大変かもしれませんね。』


「魔物!?」


『そうです。ちなみに魔法や剣のいわゆるベタな異世界ですよ?』


「ベタとか言うな!こんな経験今までないんだわ!」


とか言いつつドキドキと心拍数が上がっていくのがわかる。俺は興奮しているのか?ついさっきの走馬灯を見た現実が嘘のようだ。


『でも』


「でも?」


『それ以上に〈スキル〉と言う概念が重要なのですよ。魔法を上達する上でも、剣を上達する上でも、体術を上達させる上でも、学力を向上させる上でも、技術を上げようとするとスキルの成熟度やスキルそのものの強さが重要となるのです。』


「その〈スキル〉はどうやったら手に入るんだ?」


光の球体、つまり神ソーサラーはいい質問ですねと言わんばかりに食い気味に答えた。


『〈スキル〉は基本先天的なものが一番強いです。後天的に取得することもできますが先天的なものとは機能が劣ると思ってもらって良いでしょう。もちろん例外もありますが。』


「つまり生まれた時にスキルを持っていると言うことか。」


『その通りです。あちらの世界の人間は生まれた時に〈スキル〉を授かります。もっともそれを把握できるのは国民全員が10歳の時に行う儀式によってですが。』


「それは帝国も王国も同じなのか?」


『基本は同じです。ただ貴族などは生まれて時に判別することもあるようですが。」


「ちなみにその先天的なスキルは一つなのか?」


『それは基本はそうです。ですがごく稀にマルチにスキルを発現させる方もいるようですね。あなた方の友人全員のように。』


「なるほど…ってそんなにすごい奴らなのかあいつらは!?」


んー。玲二とか海奈とかは納得できるけど太一はそんなすごいやつに見えないけどなあ。イメージはまったくわからず思わず唸る。


『私が直接与えましたからねえ。そりゃ強くて当然です。』


「なーんだ!神様のおかげだったのか!じゃあ納得!」


翔はポンと手を叩いた。


『それはそれで可哀想な気もしますが…とにかくまだ説明はありますので聞いてくださいね。』


ソーサラーは続ける。


『そのスキルにももちろんレア度と言うものがあります。レア度が高いほど強いスキルという相関関係もあります。データもありますが見ますか?」


「いや、いらないいらない!急に理系ぶるな!」


『仕方ありませんね。』


メガネをクイっとあげるような仕草が想像できる。なんか腹立つな。


『レア度はスーパーレアとかのように区分されているわけではありませんので、今までの統計に従って「お前のレア度高いんじゃね?すげー!」みたいな感じになるだけです。』


「割と適当なんだな。」


『そうですね。ちなみに彼等は剣聖とかを与えました。レアそうですよね聖って付くと。』


「本当に適当だな!キャラ変わってないか!?」


『まあまあ。落ち着いて。そしてそのレア度では一線を画すものがあるのです。それが〈ユニークスキル〉です。』


『これは、過去にも先にもたった一人のみに与えられます。これは強力ですが使い方次第ではゴミにもなりますしその人次第ということです。一年に一人出るか出ないかで、[聖]と付くスキルは1年で5〜10人出ると言われてますのでどれだけレアか分かりますよね?』


「なるほどなあ。でもユニークスキルかどうかはどう判断されるんだ?」


『演出です。』


「演出?」


『そうです。儀式の時には神官が執り行うのですがその時に教会の上から光の球体が神々しく降りてきます。」


「統計とかとる割に肝心なとこはフィーリングかよ!」


『その方が感動するでしょ?とにかく!そろそろ時間も近づいてきますので私からスキルをあなたに授けましょう!』


なんか納得いかないけど、このままスキルをもらえずに移動も嫌だから素直に従うか。


『それではいきます。』


ソーサラーの光の球体が分裂し翔の体を包み込んだ。その中の一つの虹色の光が胸の中にスッと入ってくる。


『終わりです。あなたにはユニークスキルを授けました。これを生かすも殺すもあなた次第です。スキルの内容は儀式の時にわかるでしょう。』


「よっしゃ!ユニークスキルで剣聖やなんちゃらや持ってるあいつらにすぐ出会ってやるぜ!」


『それではいってらっしゃい。』


この空間から翔の体は消えてこの場にはソーサラーだけが残った。


『彼等がユニークスキルを持ってないとは言ってないんですがね。ユニーク+剣聖とかなのですが…』


『まあ彼に与えた〈しりとりマスター〉はうまく使用すれば単体でもそれ以上に強力ということですからね。それで許してもらいましょう』


翔はソーサラーの呟きを聞くことなく、違った世界で生を受けることになった。








次回は翔以外の視点です。

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