6話 並列思考で検証してみる
《括弧》内は並列君のセリフです。
今後並列君2、3と増えていく度に別種類の括弧が増えていくと思います。
そうだ! <叡智>の効果を使おう!
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補助系伝説級スキル <叡智Lv1> 能動/受動型
能力
◆神々の叡智
・情報/思考/記憶/才能系のスキルに影響。
・効果が大幅に上昇する。
・習得/成長速度に「Lv×50%」加算される。
・思考/演算/記憶領域を大幅に拡張する。
・思考/演算/記憶速度が大幅に向上する。
・意識の分割が容易になる。
・思考の自動化が可能。
◆智の極地
・複数の情報から整合性の取れた情報を導き出す。
・あらゆる仕組みや構成の分析、解析、理解が可能。
・スキル内に無限に情報を蓄積できる。
・情報/思考/記憶系スキルを格納する。
・いかなる状況下でも冷静な思考が可能。
◆森羅万象
・現在居る世界における創世から現在に至るまでの全ての情報の閲覧が可能。ただし、あくまでも世界の記録なので個人の情報は得られない。
説明
神々の叡智を束ねたスキルとされる。あらゆるものを見抜き、知り、己が糧とする。
内包スキル
[鑑定]
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神々の叡智の効果、意識の分割の容易化。
これがあれば勝つる…!
というわけで、使ってみる。
恐らくパッシブ効果なので、既に適用されているだろう。
並列思考のコツは、しっかりとした思考と薄ぼんやりとした思考を作り、その思考に当てられている思考リソースの割合を調節してやることだ。
最初はメイン100%だったのを、メイン90%/サブ10%にして、それをだんだんハーフハーフに近づけていく感じだ。
そしていつもの感覚でやっていると──
「うわ、なんだこれ気持ち悪!!」
《うわ、マジでこれ!?》
キモっ! マジキモっ!
こんなの俺の知ってる並列思考じゃない!!
今までのはいくら分けても意識は俺だったのに、何故か俺が増えたのだ。
何を言ってるのかわからないだろうが、正直どこも感情とかが欠如していなくて、もう1人の思考も読めるせいで普通に俺が増えたようにしか思えないのだ。
あ、そうか。思考の分割じゃなくて意識の分割だからか!
うん。これはアイデンティティが崩壊しそうで怖いから、あまり増やしすぎないでおこう。
《おい、これスキルとか生えねぇの?》
「やっぱりそう思うよな。少なくともスキルの習得速度にも影響するらしいから、そのうち生えるには生えるんじゃね?」
並列君がちゃんとした自我を持って質問したことで、意識が分割されていることがハッキリしたな。
スキルが生えるかどうかはラノベだとよく向き不向きが影響するとかあるからなぁ、どうだろう。
«無級スキル[思考]を獲得しました»
«無級スキル[並列思考]を獲得しました»
«無級スキル[並列意思]を獲得しました»
«[思考][並列思考][並列意思]は<叡智>に格納されます»
《な、なんだ!?》
「うおっ、勝手に体動かすなよ!」
«無級スキル[並列行動]を獲得しました»
«[並列行動]は<叡智>に格納されます»
おお、突然のスキルラッシュに驚いたせいで並列君が勝手に体を動かしてしまったようだ。
まあスキルが手に入ったしいいんだが…
この頭の中に響く感じ、苦手だなぁ。
《悪い悪い、と言うかこっちでも動くんだな》
「らしいな。スキルも手に入ったし、頑張れば戦闘もできるんじゃないか?」
《もしかしたら二刀流とか…》
「極大魔法放ちながらの剣戟とか…」
とそこまでロマンを語り合ったところであることに気が付く。
「そういや俺ら属性持ってなくね?」
《そう言えばそうだったな…》
ここに来て挫折するとは…まあ、二刀流は出来そうだから魔法剣士は諦めるしかないか。
«無級スキル[並列思考]のレベルが上がりました»
«無級スキル[並列意思]のレベルが上がりました»
おお、また上がったのか。
《ところでさ、検証はどうすんのよ》
「あ、そういやそうだったな」
ということで検証に戻るとするか。
「神々の叡智は思考リソースが有り余ってることからして体感できるよな」
《ああ、そもそも人の身でこんなに自由な意識を複数も持てないもんな》
「じゃあこの思考リソースの7割やるから、森羅万象の方調べといてくれよ」
《あいわかった》
取り敢えず有り余ってるリソースをいかにもリソース食いそうな森羅万象に当て、こっちはこっちで智の極地について調べることにする。
「整合性の取れた云々は既に契約の時に体感したし、格納と賢者タイムも体感したよな」
ああ、もちろん賢者タイムというのは冷静な思考がーってやつである。
「あらゆる仕組みの分析やら解析やらって…」
正直あらゆるってついてる時点で不味い気がするけどな。
取り敢えず部屋にあったイスに使ってみる。
「<叡智>、起動」
すると、
「いだだだだだだ! あ゛ー! ぐおおお!」
突然の激痛。頭が割れそうなほど痛い。
そして、
ドサッ!
気を失った。
«無級スキル[分析]を獲得しました»
«無級スキル[演算]を獲得しました»
«無級スキル[把握]を獲得しました»
«無級スキル[理解]を獲得しました»
«無級スキル[自動処理]を獲得しました»
«無級スキル[思考]のレベルが上がりました»
«無級スキル[分析]のレベルが上がりました»
«無級スキル[演算]のレベルが上がりました»
«無級スキル[把握]のレベルが上がりました»
«無級スキル[理解]のレベルが上がりました»
«無級スキル[自動処理]のレベルが上がりました»
«[分析][演算][把握][理解][自動処理]は<叡智>に格納されます»
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ん…? ここは…? 俺は何をして…そうだ、
たしか異世界召喚されて…
色々とスキルの検証をしていて…
《…い…! お…い!…》
なにか聞こえる気が…
「うっぐ! あー、なんだ…今の?」
《おい!》
「うおっ、どうしたよ」
そうだ、並列意思まで使って検証してたんだ。
《凄い勢いでお前の思考リソースが食い潰されたと思ったら、お前が血を流して倒れてるから何があったかと思ってよ》
「…え? 血?」
鼻の当たりを拭ってみると、確かに血が着いていた。
床にも少し着いていて、これは拭いても取れないだろうなと思う量だった。
鼻の中に残った血を噴き出すと、頭痛が治まるまで座っていた。
しばらくすると頭痛は取れたが、それとは別になにか頭にこびり付いているような違和感があった。
それを手繰り寄せてみると──
「なんだこれ。設計図か?」
なんと先程分析してみたイスの設計図が、それもミリ単位以外で正確に理解出来た状態で存在したのだ。
しかも成分組成の情報付きだ。
「うわぁ、そりゃこんなの人の脳みそごときで、それも瞬間で理解できるわけないわな」
今思えば、思考速度の調整もできていたのだし、分析ももう少しゆっくりやれば良かったのたと分かる。
「原因が分かった。<叡智>の分析を超高速でやったせいだったわ」
《おい、なんだそりゃ。普通に考えて分析なんて機械がやるようなもんを超高速で済ませるか? 多分これ下手したら死んでたぞ》
…たしかに。
某夏の戦争の主人公が暗算で解いてた10進数の暗号も、現実世界でやったら鼻血どころか死ぬらしいしね。
もしイスなんて簡単なものじゃなくて、それこそスキルの付与なんかされたあの水晶なんかに使ってたら…
って、分析だと設計図ってことは水晶玉の方が単純だったのかもしれないな。
あと使ってないのは解析と情報の無限記憶とやらか。
《いや、無限記憶は勝手に使わせてもらった。森羅万象も使ってみたが…あれはヤバい》
「そうか、じゃあちゃんと無限蓄記憶は機能してるんだな。それで、森羅万象がヤバいって?」
《説明通り、この世界の常識やらなんやらが簡単にわかった。ダウンロードするようなイメージで、知識を『引き出す』ことができた》
知識を『引き出す』ってなんか変だが、そんな感じのニュアンスでしか表現できなかったんだろう。
《一応一般常識はダウンロードして<叡智>に保存しといた》
「もしかしてさっきのイスのデータもそこにある?」
《ちょっと待て…いや、ないな》
「ならそっちに移しといてくれ」
これでもしかしたら分析した時の頭への負荷が軽減されるかもしれないしな、何より無駄な情報はそっちに押しやりたい。
因みに<叡智>に移したあとも普通にラグ等なく思い出せたので、今までの記憶は全てそちらに移しておいた。
向こうの記憶はなるべく無くしたくないし、何より記憶喪失とかが怖いし、要はPCのクラウド扱いだな。
「よし、じゃあ次は解析を──」
《いやまて、もう飯だろう?》
「あ、まじか。じゃあ食ってるうちにスキルの確認しといてくれ。何となく結構増えたような気がするから」
《了解した》
ステータスの時も言ったが、俺の勘ってよく当たるんだよね。
«無級スキル[予想]を獲得しました»
«無級スキル[勘]を獲得しました»
ほらね?