4話 ステータス確認
//12.28:空属性に関する記述を削除しました。
否決すれば最低でも国に対する疑心感が芽生え、最悪勇者の暴動が。
可決すればどう足掻いても勇者の強制隷属は不可能になる。
さて、皇帝はどう出るのかな?
「……。わかった。その3つの保証を可決しよう」
おお! やったぞ!
これでこの長話を終わらせられる…!
「…これで、異存はないな?」
皇帝は何と言うか案の定というか、怒りを前面に出した顔をしている。
「はい。では『この契約を受理します』」
皇帝から言われていたキーワードを発する。
するとなにかが発動したのか、金色の光の粒子が俺たちの周りを包む。
そして治まると、俺は地面にへたりこんだ。
汗が吹き出してくる。
「あ゛ー、疲れたー。もう人生分頑張った気がする」
…と言うか今更だけど、全部俺が決めちゃったけど良かったのかな?
やらかしてそうですごく心配。
「…これで契約は無事成立した。それでは能力の確認に移ろう」
お、これで終了なのか。
本当に簡単だったな。
これならご老人でも簡単に登録できる! ってか?
…いや、詐欺に引っかかりまくる未来しか見えねぇから実用化は無理だな。
「能力は別の部屋で確認する。そこの騎士に着いていくように」
すると銀色の鎧を着たごっつい男が出てきた。
他と違って兜は付けていないため、男だと判断できる。
…もしこれがおっさん顔の女性だったとしたら、この世界に夢は無いと諦めるしかない。
と言うか能力か。
俺いま脱力感がすごいからよく分からないけど、能力値がまともだといいな。
俺もラノベは読むし、戦いたい気持ちはあるが、正直いきなり死地へ向かわされるのは勘弁したい。
この国いかにも能力値のゴリ押しとかやりそうだしな。
そんな事を考えながら銀鎧の男について行くと、何やら中心に水晶が置いてある謎の部屋に着いた。
部屋はだいたい学校の教室と同じくらいの広さだが上に高く、白い石英出できた柱や頭上のステンドグラスから差し込む陽光によって神聖さが出ている。まるで神殿のようだ。
ここだけ見ると正に『聖国』って感じなんだがなぁ。
そんなこんなで皆その光景に釘付けにされていると、銀鎧が話し始めた。
「よし、先ずは自己紹介だな! 俺はヴァッシュ・アウグスト。この国の騎士団長をやっている。お前たち勇者の指導係でもある。よろしくな!」
すると銀鎧改めヴッシュはおもむろに一番前にいた俺の親友である『暁 燈火』の手を掴みブンブンと振った。
ガハハハと笑いながら手を振るヴッシュとは対照的に、燈火は何とも苦しそうだ。
周りも可哀想に、と同情するばかりで助け舟は出さない。
そりゃまぁ、あんな筋肉ゴリラに手を掴まれたら痛いわな。
そしてこちらに助けを求めるように目を向けてくるが、無視する。
…ああいうのには関わらない方がいいんだよ。
絶対同じ目に遭う、そう俺の勘が告げているからな。
俺、勘というか運は凄くいいんだよな。
そのおかげで顔もそれなりに良い…はずだし。
いや、生まれてこの方彼女できたことないし、やっぱり俺の思い込みか? だったら超絶恥ずかしいわ…
さて、取り敢えず燈火は拷問から解放されたようだし、さっさと説明をてもらおう。
正直、この超絶興奮した状態で平静を保つの<叡智>なしじゃ無理なくらいだからな!?
というわけでヴッシュを促す。
「あの、それでヴッシュさん、この部屋は…」
「おう、この部屋は…えーと? なんつったっけなぁ… そうだ、『鑑定の間』だ! んでこの場所は、[上級鑑定]やら[属性判定]やらのスキルが付与された水晶玉が中央にあってだな。それに触れる事で自分の能力値、つまりステータスを表示することができるスグレモノだ!」
…何と言うか、絵に書いたようなバカだったわけか。
にしても[鑑定]…
ふ…ふふ…ふふふふふっ!
おおっ! 何ないきなり知ってるスキル名出されたから何か興奮しちまったよ!
やべ、ニヤニヤしてねぇかな?
と周りを見渡すも、全体の実に2/3がニヤニヤしていたため問題ないと判断することにした。
「うお!? なんでいきなりニヤニヤしだしてんだよ… まあ取り敢えず、自分のステータスの確認を始めよう。そうだな…自分で確認する方法もあるが、まずはこの水晶で鑑定してみよう。じゃあ誰にするか──」
お、やっぱりあるのか!? セルフ確認方!
じゃあテンプレにのっとって──
「ステータ「よし、そこのお前、名前は?」
おい、なんでこのタイミングで止めるんだよ…
とりあえず答えるけどさ。
「不知火 悠です」
「そうか、シラヌイ…いや、勇者だからユウ・シラヌイで…ユウが適切か?」
「そうですね」
「よし、じゃあユウ、この水晶に触れてみろ」
え、触れるだけ?
「え、何か念じたりしなくていいんですか?」
「いや、触れるだけで問題ない」
マジすか。
取り敢えず言われた通りに触れてみると、ブンッというメカニックな音とともに空間に半透明のガラスのような物が現れた。
今更だけど、これはもう異世界確定だな。原理がわからん。
「ちょ、これ見えて良い奴なんですか!?」
「まあ、お互いに勇者としての能力を知らなくてはならないしな、仕方ない」
「それダメな時の言い訳じゃ!?」
と軽くいざこざしている間にも俺のステータスは見られていた。
そして俺もそれを確認してみたのだが…
まあなんと言うか予想通りというか、酷かった。
////////////////////////
個体:不知火 悠 ♂ 16
種族:人間Lv1
職業:なし
状態:健常
属性:なし
【レベル】1
【生命】100/100 【体力】100/100
【魔力】100/100 【氣力】100/100
【筋力】50 【耐久】50
【知力】50 【抵抗】50
【敏捷】50 【器用】50
【運気】100
スキル:
・補助系
<叡智Lv1>[鑑定Lv1]
・特殊系
[異邦人Lv-]
称号:
「転移者」
装備:
「異界の学生服」
////////////////////////
運だけ高っ! どうしたらこんなに偏るんだよ!
基準がどうだかわからないが、状態:健常なのにこの倦怠感…やっぱり元より弱くなってるな。
アナウンスにあった『パラメータを還元し』とか言うのが原因だろうが、それによって得られたはずの﴾■■﴿なるスキルやそれに付随して獲得したはずの称号が見当たらない。
もしや能力値だけパクられた?
いやいや、そもそも異世界召喚できるような神様がそんなことするはずがない無いだろうし…
それとも相当パラメータが高かったんだろうか?
そんな事を考えていると、
「おおっ!? 素晴らしい! <伝説級スキル>を持っているとは!」
と興奮した様子の、いつの間にか現れていた貴族群(暫定)の一人。
そんなに凄いものなのか? と期待していると、
「だがパラメータがな…」
「スキルも少ないな」
「属性がなしなんて!」
「しかも無職だと」
「称号に「異界の勇者」がないぞ!」
「【運気】が100!? 有り得ない、どうなっているんだ! さては[偽装]か?」
散々な言われようだ。
特に無職ってのがグサッときた。
すぐさま水晶玉から手を離し、元の位置に戻る。
「ま、まあ、問題はあったが一般人よりは高いパラメータだ。その上<伝説級スキル>なんて持ってるやつは数百年に一人くらいだからな? 安心しろ」
ヴァッシュがそう宥めてきたが、そう簡単に安心はできない。
正直やらかした感満載だ。
【運気】に関してはもはや嘘だと思われてる始末だし。
少なくとも「へっ、やっぱりお前は雑魚だったな!」とか言ってくるクラスメイトが居なかったことに感謝ておこう。
そして次は誰かと思ったら燈火だった。
因みに燈火のステータスはこうだった。
////////////////////////
個体:暁 燈火 ♂ 16
種族:人間Lv1
職業:<勇者>Lv1
状態:健常
属性:火・土・光・闇
【レベル】1
【生命】500/500 【体力】500/500
【魔力】300/200 【氣力】300/300
【筋力】400 【耐久】400
【知力】200 【抵抗】200
【敏捷】400 【器用】200
【運気】70
スキル:
・武術系
【灼熱剣Lv1】[剣術Lv1]
・補助系
[鑑定Lv1][聖剣召喚Lv1]
・特殊系
【鬼才・武Lv1】[異邦人Lv1]
称号:
「転移者」「異界の勇者」
装備:
「異界の学生服」
////////////////////////
装備欄の「異界の学生服」というのは、文字通り学生服のことを指すらしい。
あと特殊系スキルの[異邦人]は異世界人特典のようなものと考えておこう。
けどやっぱり俺より強いし、称号に「異界の勇者」がついてる。
「おおっ!! 勇者だ! 勇者様だ!」
「さすが勇者様! パラメータが桁違いだ!」
「4属性も持ってるぞ!」
やっぱりこうなるか。
燈火は面倒そうな顔をしてまたこちらに目を向けてくるが、面倒事が起きそうなので無視する。
他にも特に歓声が沸いたのは何人かいたが、一番騒がれたのは何だかんだで俺だった。もちろん悪い意味で。
そして案の定、一番パラメータが低かったのは俺でしたとさ。
そして無事鑑定も終わり、生徒一人一人に部屋が割てられた。
移動はメイドに連れられてだった。
そう、メイドだ!
無駄にリアリティのあるオバサンメイドではなく、ちゃんとした美人メイドさんだった!
しかも一部屋事にお付のメイドまでいるらしい。
因みにメイドさんはファンタジーの定番である魔道具の呼び鈴を鳴らせば来るらしい。どういう仕組みだろ。
まあ、これもメイドに手を出させて契約に触れずにこの国に拘束しようという魂胆なのだろうが。
そして今、俺も部屋に着いたところだった。
「フフ、フフフ、フフフフフ…!」
だがそれと同時に、俺ももう限界だった。
「やったぞ! 異世界だ!」
そして俺は、異世界に来たら絶対やるだろう検証やらを始めるのだった。