3話 契約だそうです
ということで、一丁勇気を振り絞って発言してみますか。
座ったままだと騎士たちが怖いので、立ち上がってから発言する。
と言っても、さっきから目をギラつかせて皇帝の隣にいる宰相(仮)がなんか言ってくるんだろうけどな。
「皇帝陛下、俺はこの条件では受理できません」
すると案の定、
「貴様、陛下のお心遣いを無下にするつもりか! そもそも異邦人の貴様らなど──」
いや、お心遣いって…
「ウェスカー、よせ」
「し、しかし陛下……ッ!!」
「よせ、と言っはずだ」
「へ、陛下のお心のままに…」
へー、ウェスカーって言うんだ。
関係ない事だけど、ウェセターとウェスカー、紛らわしいな。
てか、なんでこいつはいきなり黙ったんだ?
これもスキルの影響か?
となるとウェスカーの様子からして恐らく威圧系…そして行使者は恐らく皇帝…
『皇帝の威圧』とかそんなとこか?
使うかは分からないけど、仮称としては十分的を射ているだろう。
「して、お主はなんと望む?」
うわ、『皇帝の威圧』をかけながら聞いてきたよ。
というか、早速出番が来たのかよ仮称。
けど、そんな事だろうと予め気を強く持っていたのが正解だったらしく、全身から汗がブワッと吹き出る程度で済んだ。
…いや、『その程度』では無いだろうとも思うが、ここで怖気付いて『なんでもありません!』とか言わなかっただけマシだよ。うん。
すると皇帝は『皇帝の威圧』に耐えた俺に眉をひそめ、威圧を更に強めようとする。
このままだとやばい気がするので、取り敢えず話を進めようと思う。
「はい、まず条件の1、これは自由参加型にしてください。戦力が無い代わりに生産能力のある勇者がいるかもしれませんし、そんな勇者が戦場に出ても無駄死にするだけでは? それでは他の勇者も納得できないと思います」
やはり威圧で混乱しているからか、若干文体がおかしくなったが問題ないだろう。
あるとしたら最後の聞き返しが悪かったらしく、ウェスカーがこちらを睨んできていることか。
ウェスカーも少しは自重しろよな…最悪打首だろ?
そして生産能力云々に関してだが、主に保身のためだ。
他の奴らのスキルは知らないが、少なくとも俺の<叡智>は戦闘向けじゃあないだろう。
それと戦闘意欲のないやつにまで強要して無駄死にさせれば、こちらの心象が悪くなることも言外に伝えておく。
一応周りもウンウンと頷いているし、間違ってはいないだろう。
「…確かに、それは一理あるな。可決しよう」
「へ、陛下!?」
おおうウェスカーや、度胸あるなお前。
死ぬぞ?
「…ウェスカー、『黙っていろ』」
「!? し、失礼しました!」
今のは…命令分に強制力を持たせるスキルか?
少なくとも俺達に使わない事からして何かしらの条件があるのだろうけど、それでもヤバい代物だな。
恐らくその条件も配下に限定されるとかだろうし、仮称としては『王令』…いや、皇帝だし『勅令』とかが妥当かな?
『勅令』を使われたウェスカーはガクブル状態だ。
恐らくこの後の仕打ちを想像したのだろうか?
さて、これで残り3つの問題について話せるな。
「他に依存は無いな?」
「いえ、保証についてもよろしいでしょうか?」
そう言うと皇帝は露骨に嫌そうな顔をした。
そこは触れて欲しくなかったんだろうなぁとは思うが、ここでみすみすチャンスを逃すほどお人好しではない。
ここは話を長引かせずに早めに終わらせるのが吉だと思い、保証についての話は一度に済ませることにする。
「…まあいいとしよう。して、望みは?」
「保証の1についてですが、『この国は』の文言を『この城内に居る者』に変えて頂きたいです。2については衣食住に『下級貴族と同等程度』という但し書きを付け加えて頂きたいです。そして最後に、3つめの『下級貴族と同等程度の権力』の代わりに『私生活に置ける自由』を保証してください」
この国の下級貴族程度の権力なんて、皇帝にとっては全く気にならない障害だろう。
だからこそ、それを引き換えに自由を貰う。
もしここで否決すれば、言外に『そんな権力なんぞ自由などとは比べ物にならない』と言っているようなものだし、『私生活に置ける自由なぞはなからないわ!』と言っているようなものでもある。
権力に関して反応していた奴には悪いが、これは譲れない。
だからこそそれを察した皇帝は難しそうな顔をしている。
こちらを見る目に恨みがこもっている事は明らかだが、ここで威圧を使おうもんなら敵対行動と見なされ、最悪勇者のスキルで暴れらる事も考えているだろうか、威圧は使ってこない。
さて、皇帝はどう出るのかな?