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2話 召喚されて



 「ん…ここは…?」


 目を開けるとそこは、体育館程の大きさのあるホールの様な場所だった。

 石造りの壁や床、壁に設置された松明、王座に座る王様(仮)、俺を囲むように立っている金属の全身鎧を着た騎士等など、ファンタジー要素ばかりのように思える。

 いっその事出来すぎているし、やっぱりドッキリでした! と言われる方がしっくりくる気がするレベルだ。


 先程のアナウンスについても気になるが、取り敢えずは人数確認だ。

 目を覚ました奴は呆然として周りを見渡しているので騒ぎ立てる奴はいないようだ。

 気の弱い女子とかはすぐ泣き叫ぶ様な気がしていたが、実際驚きすぎると思考停止(フリーズ)するらしい。

 俺は何故か興奮しているのに冷静な思考が出来ている。スキルの影響かな?

 精神は興奮してるのに思考は冷静って、気持ち悪いな。

 たしか<叡智>とか言ってたが…まさか、賢者になるようなスキルじゃないだろうな。

 異世界来て早々に不能者とか最悪だぞ?


 人数だが…うん、ちゃんと全員居るようだ。

 一人でも欠けていたら、実は別の国も召喚をしていて…とかいう面倒なパターンになっていたので、正直安心だ。


 そして人数を数え終わるとほぼ同時に、先程確認した王様(仮)が喋り始めた。


 「勇者諸君よ、この度は異界より遥々来てもらったこと、感謝する。混乱しているだろうが是非落ち着いて話を聞いてもらいたい」


 『来てもらった』か。

 あくまでも喚んだのではなく、自発的に来たとしてときたいのかな?

 それに、異世界召喚なんて拉致とも取れる事をしておいて謝罪も無し、頭も下げない、挙句の果てに謝礼も『感謝する』の一言で済ますとは…

 今のマスコミが見たらボロクソに叩いた挙句、あることない事言い触らすレベルだぞ。

 と言っても、これは日本での話であり暫定中世ヨーロッパ程度の文化レベルでそんなに内政関係の情報が出回るとも思えないし、言い触らそうもんなら即刻打首だろうもんな。


 と言うか今まで何となく聞いてきたがなんでこの国の言葉が分かるんだ?

 やっぱりスキルとかが影響しているのかな?


 「まず初めに、我が名はクラウヴェル・フォン・ウェセター。この大陸の一の国力を持つ、云わば大陸の覇者である聖ウェセター帝国の現皇帝である」


 おお、やっぱり王だったのか。

 国名の『聖』やら『帝国』やらから相当な縦社会&教信国家であることが伺えるし、その中でもトップである事はよく分かる。

 けれどもどうしても様をつける気にはなれないな。

 どうもこの傲慢な態度が気に入らないし、不安だ。

 よくある王族が黒幕、とかいうパターンはごめんなんだけど…

 いや、皇帝だから皇族黒幕説か。


 「して、諸君らがこの国に来た理由だが──」


 ここからの話は一方的な聞いてもいない、自分語りならぬ自国語りが多分に混ざっていて話が長くなったので割愛する。


 そして、俺達が召喚されて理由だが──


 曰く、

 ・この世界の絶対悪である『魔王』と『邪神』を討って欲しい。

 ・『魔王』や『邪神』は一体では無く、複数いる。

 ・そしてその悪を討つべくして創造主である『アークフィリア様』により『勇者』が召喚された。

 ・『勇者』は一人一つずつ強力な【固有級(ユニーク)スキル】なるものを持っており、能力値も高い。

 ・そしてその『勇者』は俺達。

 ・元の世界への帰還方法は不明。恐らく『アークフィリア様』がしっている。

 との事だった。


 いつの間にか復活していたヲタ達は『勇者』という言葉に反応していた。

 具体的にはグッと拳を握ったりだとか謎の踊りを始めたりと言ったことだったが、正直周りに剣をもった騎士がいる状態でそんな危なっかしいことしないで欲しい。

 何より向こうにいた頃には無かった力を持っているんだ、何かの拍子に発動なんかしたら大惨事だ。

 いやまあ、謎の踊りをトリガーにして発動するスキルなんて残念すぎるもの無いとは思うけどね。

 因みに俺もヲタだがTPOは弁えるタイプだ。


 最後の帰還方法が不明との事についてだが、何名かの息を飲む声だとか、『やっぱりか…』と落胆する声だとかが聞こえてきた。

 幸い狂乱はしなかった。


 けど【固有級(ユニーク)スキル】か…

 俺のは<伝説級(レジェンダリー)スキル>とか言ってたか?

 だとしたら良いんだが悪いんだか。


 そして遂にスキル確認か? と思いきや、


 「──という事なのだ。そこで諸君らにはこの国の王である我と契約を結んで欲しい。何も難しい手段は必要ない、我のスキルを使えばすぐに済む。こちらの出す条件を了承すればいいだけだ」


 うわぁ、これまたなんとも傲慢な。

 『難しい手段は必要ない』んじゃなくて『しっかりとした手順を踏めない』の間違いじゃないか?

 これもう王族真っ黒ルート確定だろ。


 因みに俺と同じくこの状況を理解したヲタ達は皆顔を青くしている。

 まあそりゃ、ラノベ読んでればこの後の結末は分かるもんな。


 それ即ち、強制隷属。

 特殊な首輪やら魔法やらの不思議パワーで拘束され、戦奴隷として扱われる。

 そうならなくても最低でも国と敵対はする。

 一高校生がそんな簡単に決められることじゃないわな。

 そして予想どうり、捉えようによっては隷属となる条件を出てきた。


 「こちらのだす条件だが、

 1.我が国からの要請に従い、戦闘に参加すること

 2.権力濫用の禁止

 3.我が国の法律に従うこと

 この3つだ。その代わり、

 1.我が国は諸君らに対し危害を加えない

 2.この城内における衣食住の保証

 3.下級貴族程度の権限の授与

 の3つの要件を保証しよう。この条件に異存がなく契約を受理するならば、『契約を受理する』と言ってくれ」


 さて、問題は条件の1、保証の1と2だな。

 条件の1は言わずもがな、まんま隷属宣言だな。

 保証の1と2は分かりずらいかもしれないが、1の場合『我が国は』俺達に危害を加えないだけであって、国としての行動でなかった場合含まれないかもしれないからだ。

 2は衣食住の程度が示されていないため、最悪奴隷程度の保証しかされない可能性もある。

 あ、あとは私生活に置ける自由が保証されてないな。


 正直、このままだと相当やばい気がする。

 周りの奴らはまだ混乱していたり考えていたりで答えられないようだし、もし受理されたらたまったもんじゃない。


 ということで、一丁勇気を振り絞って発言してみますか。

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