目覚めるとそこは?
本編スタートです。
頬が痛い。
それが目覚めたばかりの俺がまず思った事である。
起き上がり、顔に食い込んだ小石を払い落とす。
パラパラと落ちる小石や砂は風に舞い、辺りに散らばる。
ふわりと吹き抜ける風は春の心地よさを感じさせ、思考をクリアにしてゆく。
---などと現実逃避をしてみたが状況は変わるわけもなく。
今を真摯に受け止め言葉を紡ぐ。
「此処は何処だ?」
放たれた言葉は無常にも緑茂る森の中に消えていった。
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状況を整理しよう。
まず、自分の身体を調べる。
先程の痛みはあるが身体の不調はコレといって無い。
服装は黒の長袖、グレーのジーンズ。
装飾物は無くとてもラフな格好だ。
手にはビニール袋、肩には黒い皮製の細長い袋を掛けている。
背負っていたらしいリュックは少し手前に落ちていた。
こんな深い森の中に来る様な格好ではない。
ちょっと買い物に出掛けた帰りと言われれば納得できる。
では何故こんな所に?
それを今、考えているのだ。
思考が堂々巡りしそうになったので一旦辺りを見渡す。
相変わらず木々は少々の隙間を見せるが青々と広がっている。
こんな所にじっとしていても只時間を浪費するだけだ。
いっそ山の中なら山頂を目指す事もできるがここは森、多少の起伏はあるが見渡すかぎり平地である。
どうしたものか?じっとして救助を待つ?
何故こうなったかも分からないのに期待はできない。
意を決して歩く事にする。
スニーカーでは歩き辛いが歩けない事は無い。
とにかく太陽に向かって歩こう。空を仰ぎ見て目標を探す。
木々に隠れ見え辛いがなんとかなりそうだ。
早く帰らないと失踪事件として地方版に載ってしまう。
そんな事を考えている内にひとつの事を思い出した。否、理解してしまった。
「そもそも俺は誰なんだ?」